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西乃真 るう

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2.転校初日②

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「ところで、なんで転校してきたんだ?」

休み時間になるとすぐに藁家永准は身体を後ろに向けた。
「先生が言ったとおりだよ、親の転勤の都合。お父さんが海外から帰ってきて一緒に住むはずだったんだ」
「住むはずだった?」
「うん、結局仕事が片付かないからって、まだ帰ってきてないんだ。だからマンションには僕一人だけ」
「一人? ほかの家族は?」
「ずっとお父さんと2人だったから……」

一真は小さいころから父親と2人で暮らしていた。
数年前に父の海外赴任が決まったとき、父は一真を祖母に預けて1人で行ってしまった。祖母は優しくて、父の不在を寂しく思う以外は不自由なく過ごした。

高校に入学してすぐに父の帰国が決まった。
その報告を祖母と2人で喜びあった次の日に亡くなってしまった。
「またお父さんと一緒にいられる」といつもより楽しい夕飯時を過ごし、その後「美味しいね」と桜餅を食べた。
その翌朝、いつもの時間になっても起きてこない祖母を見に行くと、布団の中で冷たくなっていた。
寝る前に「おやすみ」と言ったのが最後だった。

祖母は苦しんだ様子もなく、布団に入ったときのままの姿勢だった。
大往生というのだろう。
ずっと一真を支えてくれた祖母の急逝はたまらなく悲しかったが、最期に苦しまずに逝ったことに安堵した。

「悲しくないわけじゃないよ、寂しくて仕方ないんだけどさ。ばあちゃん身体も弱ってて、もう長く生きられないのはわかってたから」
ずっと黙って聞いていた藁家が「そんな話きいて、悪かった」とぼそっと呟いた。
「こっちこそこんな重い話しちゃってごめん」
出会ったばかりでする話じゃなかった。

父親の帰国後の勤務地は祖母の家から通える場所ではなかったから、すぐに転校の手続きを始めた。
「入学してすぐにそんな感じでバタバタしてたから、前の学校のことはほとんど覚えてなくて」
結局、父親はまだ帰国できていないのだから転校をする必要はなかったが、そこに残る理由もなかった。既に始めていた手続きの流れに乗って、転校が決まった。

「じゃあこれからは楽しむしかないな」
藁家が微笑んだ。
「うん」
一真も笑顔で返した。
藁屋がいっしょならきっと楽しい高校生活になると、一真は思った。
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