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西乃真 るう

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3.昼休み①

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「弁当……持ってきてるワケないよな」

昼休み、藁家は大きな身体に似つかわしい大きなお弁当箱を手にしていた。
「食堂行くか?」
「一緒に行っていいの」
転校初日の第一関門である昼休みをこんなに簡単に乗り切れるなんて。
「ありがとう」
そう答えると気持ちも軽くなって、大きく伸びをした。

授業はまだそんなに進んでいなかったようで、何とかついて行けそうだ。
それよりも初めての教室で長時間座っているのに疲れた。
「永准、今日は食堂か?」
クラスメートが2人、同じようにお弁当を持っている。
「藁屋」じゃなく「永准」って呼ばれてるんだな。

「コイツが弁当も何もないみたいだからな」
藁屋が親指で俺を指さした。
「転校生の鈴木くんか、困ったことがあれば何でも聞いてくれたまえ」
メガネを人差し指で押し上げている。絶対に学級委員長だ。
「うぇ~い、行こう行こう」
メガネの委員長(風)とは真逆のウェイ族だ。「うぇ~い」なんて声をかけられたの初めてだ。
こんなに緊張してるのに「うぇ~い」は気分が上がるんだな。

 キョロキョロして食堂に向かっていると、突然目の前に人の顔が現れた。慌てて「すいません」と口にしそうになって、それが残像だとわかった。
遅刻でもしたのか、ここを走り抜けた誰かの残像だろう。このまま放っておいても問題はないけれど、見るたびに自分がびっくりする。必死で走っている誰かの左目の残像なんてホラーだ。

誰にも聞こえないように「らったった」と呟くと両手を叩いた。周りからは、転校先の初めての食堂に喜んでいるように見えるだろう。
左目だけのホラー残像はすっと消えた。
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