【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗

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第60話 同じにおい

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「やっと渡せてよかった」
トウマが微笑む。

「もしかして、これを渡すためにわざわざ何度も堤防に?」
「え…あ…」
「ごめんなさい、気を遣わせちゃった…」

「あ、べ、別に大丈夫だから」
「でも…」

「ここは、俺にとってちょっとした思い出の場所だし。だからまぁ、その…。ちょっと昔に浸るっていうか…、あるじゃん。ま、そんな気を遣うことじゃないから。これ、はい。受け取って」
トウマはそう言うと、あらためて勢いよくクラフトバッグを突き出してきた。

その瞬間、ふわっと…。
微かに嗅いだことのあるにおいがした。

…このにおいって…。

「じゃ、じゃあ…」
そう言って立ち去ろうとしたトウマの腕を掴んでいたのは、碧衣。

「…え?」
トウマも驚いていたけれど、いちばん驚いたのは碧衣だった。

腕を掴んだのは、無意識。

慌てて手を放すべきだったけど、
「あの…、」
思わず声をかけていた。

「は、ハンドタオルのお礼に、ジュースおごります」
「…へ?」

「もらうだけじゃ申し訳なくて」
自分でもなんでこんなことを言っているのか、わけがわからない。

でも、その手を離したら二度と会えない気がした。
トウマにも、そして、同じにおいがする人にも…。

「す、スグチカクニコンビニガアルンデス…」
気づいたらまるでロボットみたいに片言になっていて、トウマが笑いを堪えているのがわかった。

「…な、ナンデワラウンデスカ…?」

緊張でますますロボットみたいな変なしゃべり方になっている碧衣をチラリと見て、
「あ~、もう、可愛くて」
トウマはお腹を抱えて大爆笑。

でもすぐに何度か咳払いをして呼吸を整えると、
「ジュース、ありがとう。ご馳走してもらおうかな?」
にっこりと微笑んだ。
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