【奨励賞・受賞】彼氏がイケメンなのは絶対ヒミツ

第109話 必要なかった約束

皇帝の胸倉を掴み、
「自我が目覚めた歴代のイケメンたちにシルバーアクセを渡してたってことは、最初から柚吏にも渡すつもりだったんだな？！」
前後左右に激しく揺さぶりながら問い詰める。

「あがががが…！」
苦しそうな声を上げる皇帝。

「最初っから柚吏の自我を封じ込めるつもりもなく、シルバーアクセみたいなアイテム渡してくれるってわかってたら、1日デート権なんて提案しなかったのによぉっ！」
扇は相当お怒りの様子で皇帝を振り回す。

「ちょ…、ちょっと待ちなさい…！」
「あ？」

「よ…、よく思い出してみなさい…！アタクシから条件を提示したわけじゃないわ。ケホケホ…。蘇我輪扇、アナタから提案してきたんじゃない。しかも勝手に」

皇帝にそう言われ、
「あ、そうだったわ」
パッと手を放す扇。

けれどまた皇帝の胸倉を掴み、
「俺はなぁ、お前とデートした日、まじで地獄だったわ」
ブチ切れた。

「はぁっ？1日という約束を平日の、しかも3時間だけにしてあげたじゃない」

「教室の床を1時間も雑巾がけさせられたあとに、バスも電車も通ってないような個人店のハンバーガーを片道30分もかけて買いに行かされたよなぁ？！しかもそのあと、お前を抱っこして星空を見せてやったよなぁ？！あぁっ？！全部、必要なかったじゃねぇか！」

「きっつ～」

同情した柚吏にも火の粉が飛ぶ。

「は？“きっつ～”だ？！そもそも俺が皇帝とデートする羽目になったのは、お前を庇うためだろうが！」

…と、そこまで話が進んだとき、
「どういうこと？」
紗里がポカンとした顔をして聞いた。

やばい。
これはもう、全部言わなきゃいけないパターン…。