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第163話 俺はお前を傷つける
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「ゆ、柚吏、あのさ…、話したいことがあるんだけど、昼休みにちょっとだけ外、いいかな?」
勇気を出して声をかけ、昼休みに2人で屋上へ。
屋上へ到着するなり口を開いたのは柚吏だった。
「ごめん。本当なら俺のほうからアクション起こすべきなのに」
「ううん。そんなことよりね…」
思い切って気持ちを伝えようとした末明の言葉に
「もう、末明には近づかない」
柚吏の冷たい声が被ってビクっとなる。
「…え?」
「末明のおじいさんが言った通りだと思う。俺は扇と違ってゲノム編集を施されているから、きっと末明のことを傷つける。もう関わらないほうがいい」
静かに言った柚吏が
「ごめん」
そのまま末明の隣をすり抜けた。
「ちょっと待って…」
柚吏を呼び止めようと声は出してみたけれど、それはとても小さくて自分で聞き取るのも精一杯だったほど。
呼び止めてどうするのか…。
泣きそうになった末明をそっと抱きしめたのは爪子。
「爪ちゃん…」
「ごめんね。聞くつもりはなかったんだけどさ。護衛してたから、ごめん」
「…ううん」
末明は爪子の腕をギュッと握り
「ねぇ爪ちゃん、私にも訓練をつけてくれない?」
聞いた。
「…え?」
「歴史偉人の子孫や末裔だからって、自我を封じ込められたり好きになる人まで制限されたりするとか、おかしくない?」
「でもそれは…」
「だから私、そいつら全員ゆるさない!」
末明が言った途端、校庭の土が一気に舞い上がった。
その土は砂ぼこりのように周囲に吹き散らかしてあたりを包み、晴れていた空を暗く染めていく。
気づけば稲光がいくつも光っているその状況に悲鳴を上げる白鷺学園の生徒たちを見て
「白波末明…、これは忍術ではない…?」
爪子は息を呑んだ。
勇気を出して声をかけ、昼休みに2人で屋上へ。
屋上へ到着するなり口を開いたのは柚吏だった。
「ごめん。本当なら俺のほうからアクション起こすべきなのに」
「ううん。そんなことよりね…」
思い切って気持ちを伝えようとした末明の言葉に
「もう、末明には近づかない」
柚吏の冷たい声が被ってビクっとなる。
「…え?」
「末明のおじいさんが言った通りだと思う。俺は扇と違ってゲノム編集を施されているから、きっと末明のことを傷つける。もう関わらないほうがいい」
静かに言った柚吏が
「ごめん」
そのまま末明の隣をすり抜けた。
「ちょっと待って…」
柚吏を呼び止めようと声は出してみたけれど、それはとても小さくて自分で聞き取るのも精一杯だったほど。
呼び止めてどうするのか…。
泣きそうになった末明をそっと抱きしめたのは爪子。
「爪ちゃん…」
「ごめんね。聞くつもりはなかったんだけどさ。護衛してたから、ごめん」
「…ううん」
末明は爪子の腕をギュッと握り
「ねぇ爪ちゃん、私にも訓練をつけてくれない?」
聞いた。
「…え?」
「歴史偉人の子孫や末裔だからって、自我を封じ込められたり好きになる人まで制限されたりするとか、おかしくない?」
「でもそれは…」
「だから私、そいつら全員ゆるさない!」
末明が言った途端、校庭の土が一気に舞い上がった。
その土は砂ぼこりのように周囲に吹き散らかしてあたりを包み、晴れていた空を暗く染めていく。
気づけば稲光がいくつも光っているその状況に悲鳴を上げる白鷺学園の生徒たちを見て
「白波末明…、これは忍術ではない…?」
爪子は息を呑んだ。
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