【奨励賞・受賞】彼氏がイケメンなのは絶対ヒミツ

竹柏凪紗

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第16話 許されないこと

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しかも意地悪な笑みを浮かべて
「まさか末明、ドキドキしてるとかないよな?」
とか聞いてくるから、本当に性格悪い。

「わざとやってるよね?」
「何を?」

平然とした顔で聞いてくる柚吏に、まさか
「ドキドキさせるために密着してきたり、手を重ねたりしてるよね?」
とは聞きづらい。

それを聞いたらドキドキしてるってこと、認めることになる。

「だから…」

そう言いかけて、
「何でもない」
とりあえず言葉を飲み込んだ。

「あと1回だな」

ご満悦の様子で、
「どうぞ」
UFOキャッチャーのほうに手を差し出す柚吏。

あ~っ、腹立つ。

どうして自分はまだ1回もやってないのに、そんな余裕な顔をしていられるのよ?
ムカつく、ムカつく、ムカつく!

…と思いながらの3回目も、結局はスカ。

さすがに3回目は密着っていうぐらい近くに寄ってくることも手を重ねてくることもなかったけど、
「今度は何されるんだろう?」
って無意識に想像してしまっている自分がいて…。

まったく集中できず、景品を取ることもできないまま柚吏と交代することになった。

「じゃ次、俺だな!」
自信ありげな上から目線で言っていた柚吏だったのに。

「何だ、これ…?ムズ…」
「…全然取れないじゃん…」
柚吏も結局、3回ともスカ。

「うわ~、イライラする。もう1回」
「は?」
「お金は出すから、お前もやれ」
そんなやり取りをしている間に私が昔の勘を取り戻して大きなクマのぬいぐるみをゲットした。

「末明、すげぇ!」
「へへんっ、すごいでしょ、へたっぴ柚吏」
「うわ、うぜぇ。絶対ゲットしてやろ」

そんなことをやっているうちに、学校を出てすぐは苦痛でしかなかった時間がすごく楽しいものに変わっていることに気づいて血の気が引いた。

こんなこと、許されることじゃない…。
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