もう恋なんてしない

第34話 広報部への異動

聞いたあとは沙那と飛鷹の顔を何度も交互に見てはニヤつく相師。

「…は？どうしてそうなった？」

顔色ひとつ変えていないように思える飛鷹から
「変な誤解をするな」
との焦り感じた沙那は、なんとなくそんな姿にほっこりしている自分に驚いた。

…え？
なに？この変な感情…。

沙那が戸惑っている間に由衣のことを話し終えた飛鷹に
「…ふぅん。なるほど。…で、香村さんとはいつから付き合ってんの？」
ニヤニヤしながら相師が聞く。

「相師…。ふざけるのも大概にしろよ。さっきも言ったように付き合っているとかそういうのはぜんぶ川崎由衣の誤解というか正当防衛による罪悪感の転換というか…」
すぐに冗談だとわかりそうなことにも真面目に答えている飛鷹が可愛い。

かわ…いい…？

上司に向かって可愛いとか私、何を考えているんだろ。
しかもさっき、あんな恐ろしいことがあったばかりなのに。
やっぱり私、変だ。

困惑する沙那に相師が声をかける。

「香村さんも大変だったね。まぁそこまで執着されるほど好かれるって、それはそれですごいとは思うけど。怖かったでしょ？」
「…すみません。お騒がせしちゃって」

つい謝った沙那に
「なぜ謝る？おかしなことをしたのは川崎由衣だろう？」
飛鷹が言う。

「そうだよ。会社内で同僚を襲うとか怖すぎでしょ。ひとまず香村さんは明日から広報部へ異動しておいで。手続きはしておくから」

「…で、でも。由衣をあんなふうにしちゃったのは私のせいかもしれないし私事だし…」

「私事？川崎さんがやったことは犯罪だからね。会社にとっても由々しき問題。何かあったらすぐ法的措置や解雇するつもりだから香村さんはなるべく接触しないよう同堂としてて」

真剣な表情で言い終えた相師はあらためて口を開いた。

「とりあえず今日は…」