もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第81話 好きになってもいいですか?

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歩く振動で沙那の手が大きく揺れたときには表情を確認してくれたりギュッと手を握ってくれたり、飛鷹はやさしい。

拓斗には
「手をつないでいるところを見られたら照れ臭いから」
と外では1回も手をつないでもらえなかった。

元カレとはハードルが高かった手つなぎ。

それをいま、彼氏でもない飛鷹とはこんなにも自然にすんなりと、しかもこんなに長い時間ずっと手をつないでいるなんて変な気分。

しかもつないでくれている手があたたかすぎて。

「どうかしたか?怖いなら戻るという手も…」

やさしく聞いてくれる飛鷹に
「大丈夫です」
返しながら心の中で問いかける。

好きになってもいいですか?

飛鷹さんの人とはちょっとズレているとこ、天然なとこ、そんな部分にちょっとだけあやかってみたくなる。

沙那が飛鷹への気持ちを自覚したとき
「佐原友己…。多分ここだな。ドリーム不動産の社長、佐原友己の病室は」
飛鷹が病室の前で立ち止まった。

「特別室かぁ。さすがは会社の社長って感じですね」

「確かに。でもこの病室だとグレードもそれほど高くない。企業の代表なら見舞客もそれなりに来るだろうし、これくらいの個室なら贅沢というわけでもないかもな」

言いながらスマホに何かをチェック。
その瞬間に手が離れて寂しく思っていたのだけれど。

「次は山井ミヤビだな」
そんな言葉とともに再び自然と手をつないでくれたことにドキっとして嬉しくなった。

やばい。
ドキドキの音が飛鷹さんに聞こえちゃうかも!
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