もう恋なんてしない

第102話 イラつきが止まらない

「シュウさんが『食い尽くすじゃなくて、食い潰すってとこがやばい部分だからよく覚えておきな』って言ってました」

「ふぅん…」
相槌を打ちながらもこの際、食い尽くすと食い潰すの違いなど、どうでもいいとさえ思う。

シュウの唇は沙那の耳に触れる寸前くらいの距離だった。

まだ触れたことのない可愛くて小さくてきれいな形をした沙那の耳。
そんな耳にいとも簡単に近づくとは…。

ニヤついていたシュウの顔を思い出すとイライラがおさまらない。

これまでは元カノたちが誰とどんなふうに接していても何も感じなかったのに、些細だと思えるこんなことでイラついてしまう自分に驚く。

いつの間に沙那のことをこんなにも好きになってしまったのか。
よくはわからないけれど、とにかく苛立つ。

そんなタイミングでなぜかシュウが
「そこのイケメンさん、少し話したいことがあるんだけど、いいかな？」
飛鷹に声をかけてワインの入ったグラスをそっと渡す。

シュウさんが飛鷹さんに話…？
違和感しかない。

ただ、シュウは成金に金魚のフン状態。
そう考えるとパーティーに関することなのかもしれない。

目が合った飛鷹も同じことを考えている様子。

シュウからワインを受け取った飛鷹が
「少し待っていてくれ」
そう言い残してパーティー会場から出て行ってすぐ、沙那は声をかけられた。

「さっきはよくも私に恥をかかせてくれたわね」