もう恋なんてしない

第112話 イライラする極上イケメン

「あんたさっきから『可愛い』『これも似合う』しか言ってないじゃねぇか…。俺は何を見せつけられてるんだ？！」

軽く数十分は経つというのにまったく着て帰る服が決まらない沙那と飛鷹に嫌気が差してきたシュウは煙草の煙を吐きながらブチブチと文句。

とくに飛鷹には呆れたという感情しかない。
ハンガーに掛かったどの服を沙那に当てても褒めることしか言わないから。

無表情のクセに口から吐き出すのは
「こっちは沙那のやさしいイメージにピッタリだし、こっちは沙那のあたたかい感じを引き立てて魅力的…。モデウが良すぎるから、どの服もよく見えて困る」
恥ずかしくなるくらいの言葉ばかり。

飛鷹の言葉に沙那も嬉しそうにデレデレ。

何なんだ？
この極上イケメンは…。

ウダウダと悩みまくる飛鷹に限界を感じたシュウは2人に言い放つ。

「もうそれ、ぜんぶ持って帰ってくれ。あんたらを見ているとイライラする。いま着る服を1着だけ選んでくれたら、あとはパーティーが終わったら持ち帰れるようきちんと手配しておくから」

けれど、いま着るその1着が決まらない。

「どれもよく似あっていて可愛いからなぁ…」

また悩みはじめる飛鷹にイライラしながら
「じゃあ、これにしろよ。さっき沙那ちゃんのイメージにピッタリだって言ってただろ！」
シュウが提案するも
「なぜ、お前が決めるんだ？」
即座に飛鷹により却下。

結局30分以上迷い続け
「…もうパーティー、終わっちゃうぞ？」
言ったシュウは
「それを早く言え！」
理不尽に怒られ、パーティー会場へと2人を連れて行った。