もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第38話 お姫様だっこ

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翌朝ベッドで目を覚まそうとした瞬間から視界がぐにゃっと歪むような感覚と吐き気に襲われ、絢世はホスト人生初の二日酔いだということを自覚。

ズキズキする頭痛に耐えながら昨日のことを思い出そうとしても曖昧で、記憶に残っているのは怒った様子のミヤビがタクシーを呼んでくれたことぐらい。
ここしばらくお酒を飲んでいなかったとはいえ、まさかコップ一杯で二日酔いになるとか本当に恥ずかしい…。

…って、そんなこと、あるかな?
でも実際、ホスト仲間からよく聞く二日酔いの症状そのまんま。
目を開けると船酔いをしたときのような感覚に襲われて吐きそうになる。

我慢しながら千隼にメッセージを送ろうとしたけれど、周囲の景色と同じく手に持ったスマホもぐにゃりと歪んで見え、文字を打つなんて無理だった。
でも連絡をしないわけにはいかない。

酷くなっていく頭痛を我慢しながら千隼の電話番号を探す。

うわ…、こんな時間からほんと迷惑なヤツ…。
ごめんなさい、千隼さん。

謝りながら電話をかけるとすぐにつながって
「桐谷?」
千隼の声が聞こえる。

こっちから電話をかけたから当たり前なのになんだかホッとして
「めっちゃフラフラで…朝食ごめんなさい…明日でお願いします…」
気が抜けたような声にはなったけど、どうにか伝えきった。

「わかった」

千隼が承諾したのと同時に電話が切れ、連絡先を交換しておいてよかったと目を閉じたとき、
「とりあえずここ開けろ」
玄関のほうから怒ったような声がして焦る。

「…千隼さん…?」

嬉しいようなしんどいような、つらいような、それでもやっぱり嬉しいような…。
床を這うようにして玄関へ行き、ほとんど倒れかかるようにしてカギを開けた。

カギを開けたあとフラリとその場にへたり込んだ絢世の耳に
「桐谷、大丈夫か?!」
千隼の声が飛び込んできて嬉しくなり、思わずギュッ…?!

抱きついてしまった自分に驚いて、
「うわ…、すみません!」
かすれた声を出して慌てて離れようとした絢世は、千隼の中にふわっと抱きかかえられていることに気づいて言葉が出なくなった。

なにこれ…?
お姫様だっこ…?!
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