もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第93話 そもそも俺のことは好きなのか?

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千隼さんのはじめて。
それを俺が…。

純粋なファーストキスとは違うにしても、千隼さんが男とするはじめてのキスが俺というのは大きい。
俺もはじめてだし。

うわうわ、嬉しすぎてやばい。
社会人同士なのに“はじめて”がこんな嬉しくてドキドキするとか、小学生みたいだ…。

…ん?
突然のことでキスしてしまったし、その先についても「むしろしたい」なんて言ってしまったけど…。

そもそも千隼さん、俺のことは好きなのか?
俺だってまだ気持ち、伝えられてない。

それに確かさっき千隼さん、
「かなり傷ついたし、なんだかもう馬鹿らしくなってな。好きとか恋とかそういうのは二度と考えないようにしようと思ったんだ」
そう言っていたはず。

ってことは、何?
俺が千隼さんを抱きしめたりしたから、ただのお返しってこと?

男とは初めてでも女の人とは経験あるだろうし、俺もあるし。
大人同士の、カラダだけの、みたいな…?

絢世が考えを巡らせていると
「桐谷となら2人で暮らすとかも楽しそうだ」
千隼がとんでもないことを言いはじめる。

いやいやいや、待って、待って。
どうしてそうなった?!

嬉しいしそうしたいけど、まだそこまで話が進んでない。
まだお互いの気持ちも確認できてないっていうか…。

ええっ…?!

でも千隼さん、
「人といると気を遣うから、ひとりのほうがラク。仕事以外ではなるべく人と関わりたくない。面倒臭いし」
って言ってなかったっけ?

そりゃあ
「こんなふうに楽しいのは桐谷がはじめてかもしれない」
とか言ってくれたこともあったけど…。

…えっと。
これって…、千隼さんも俺のこと…。
そう思ってもいいのかな?

多分きっとそう。
でも違う可能性が1ミリでもあるなら…そう考えると聞くのが怖い。

聞けないまま絢世は
「じゃあこれからは毎日ここに戻ってきてください」
爆発しそうな心臓と格闘しながらそう言った。
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