もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第634話 不穏の序章

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逃げるよう促したあと高峰からの電話はすぐに切れてしまった。
かけ直しても呼び出し音が鳴るだけで応答はない。

「どうした?」

眉をひそめ、怪訝そうな表情の千隼に絢世が事情を話す。

「そういえば絢世がミヤビを見送りに行ったとき、鉢合わせした高峰さんが気になることを言っていたな」

千隼に言われて思い出したのは高峰の言葉。

「事情はまたこんど話すから、今日はとりあえずクリスマスパーティーを楽しもうぜ。もしかしたらしばらくパーティーなんてどころじゃなくなるかもしれないからな」

これからを憂うような高峰の言葉とさっきの電話に思わず千隼が立ち上がって上着を掴む。

「千隼さん?」
「高峰さんの様子を見に行ってくる」

「待って。俺も行きます」
すぐに立ち上がって絢世も自分の上着に手を伸ばした。

「高峰さんは、絢世に逃げろって言ったんだな?」
「はい。高峰さんの声が消え入りそうだったこともあって心配です…」

マンションを出てカギをかけようとしたとき
「…どうして隣から千隼が…?」
絢世の隣、千隼のマンションから美咲が出てきて鉢合わせ。

「せっかく会いに来てあげたのに不在のうえ、男同士でペアネックレスまでつけて何やってるの?まさか2人でクリスマスでも祝ってた?」

美咲は恨みのこもった声で言うと絢世を睨んで
「やっぱりそういうことか。蓮から聞いたとおりね」
フッと嗤う。

そのまま2人のほうへ歩いてきた美咲はすれ違いざまに静かな声で言った。

「あんたら2人、絶対に許さないから」
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