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第18話 目に見えるものだけが真実とは限らない
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王子は両手にバスケットを持っているのに、スタスタと歩く。
その後ろを追いかけながら「私の分は持ちますので!」と言ってはみたが、
「は?お前は王子をなめてんのか?このぐらい、持ってないのと変わらないから変に気を遣うな」
などと何故かブチ切れモード。
さらには、
「俺が王子ってバレたらクライヴに迷惑がかかるから、人前ではデクと呼べ。そして、敬語も使うな。わかったな?」
振り向きもせず、きつめの口調でそんなふうに言う。
「…あの…、王子…えっと…、デクって、どうしていつもそんなキレ口調なの?」
思わずそう聞いてしまったけど、返事は返ってこなかった。
厨房に戻ると料理長が、
「何だよデク、お前もちゃんと気が利くじゃねぇか」
ニヤニヤ。
何のことかわからずキョトンとしてしまう。
「お嬢ちゃん、デクは無口で愛想がねぇけどよ、そんな悪いヤツじゃないから可愛がってやってくれよ。いまだって、お嬢ちゃんに無理させねぇように倉庫にぶっ飛んで行ったんだ」
「え…?」
「こんなにも不愛想なヤツがそんなことしそうにないって驚くのも無理はねぇが、いまだって、お嬢ちゃんのバスケットまでちゃっかり持ってやがる。なかなか男気のあるやつだぜ!」
料理長は得意気に言ったが、王子は気に入らないようだ。
目が据わった状態で、不機嫌そうに倉庫から持ってきた食材を水洗い。
舌打ちをしているのをクライヴに気づかれ、
「デク、代わりますよ。倉庫のほうで少し休憩してきてください」
気遣いの言葉をかけられ倉庫へと消えて行った。
苦笑いのクライヴが気の毒になる。
きっと、相当気を遣ってるんだろうな…。
なんて考えていたら料理長が店の外にオープンの看板を出しに行ったので、クライヴについ、
「どうして同じお城に生まれたのに、ウィリアム王子だけあんな卑屈な感じになっちゃったんですかね?ルーカス王子はあんなにも紳士的でやさしいのに」
なんて聞いてしまっていた。
そんなことを聞くつもりはなかったのだけれど、やっぱり気になる。
ルーカスはあんなにもやさしいのに、ウィリアムは口調もきついし冷たいし、圧があって恐ろしい。
料理長はあんなこと言ってたけど、たまたまとしか思えない。
倉庫に来たのだって、きっと名前と敬語のことを忠告しに来ただけのように思う。
それに…。
それに、私のバスケットを持ってくれたのも…。
持ってくれたのも?
…あれ?
それは、どうしてだろう…?
しばらく無言だったクライヴは、
「どうだろう。でも僕がいま言えるのは、目に見えるものだけが真実とは限らないってことかな?」
なんて意味深なことを言う。
「それってどういう…?」
もっと深く聞こうとしたとき、
「もうオープンの準備は万端だぜ!」
料理長が店に戻ってきて、はりきった声でそう言った。
その後ろを追いかけながら「私の分は持ちますので!」と言ってはみたが、
「は?お前は王子をなめてんのか?このぐらい、持ってないのと変わらないから変に気を遣うな」
などと何故かブチ切れモード。
さらには、
「俺が王子ってバレたらクライヴに迷惑がかかるから、人前ではデクと呼べ。そして、敬語も使うな。わかったな?」
振り向きもせず、きつめの口調でそんなふうに言う。
「…あの…、王子…えっと…、デクって、どうしていつもそんなキレ口調なの?」
思わずそう聞いてしまったけど、返事は返ってこなかった。
厨房に戻ると料理長が、
「何だよデク、お前もちゃんと気が利くじゃねぇか」
ニヤニヤ。
何のことかわからずキョトンとしてしまう。
「お嬢ちゃん、デクは無口で愛想がねぇけどよ、そんな悪いヤツじゃないから可愛がってやってくれよ。いまだって、お嬢ちゃんに無理させねぇように倉庫にぶっ飛んで行ったんだ」
「え…?」
「こんなにも不愛想なヤツがそんなことしそうにないって驚くのも無理はねぇが、いまだって、お嬢ちゃんのバスケットまでちゃっかり持ってやがる。なかなか男気のあるやつだぜ!」
料理長は得意気に言ったが、王子は気に入らないようだ。
目が据わった状態で、不機嫌そうに倉庫から持ってきた食材を水洗い。
舌打ちをしているのをクライヴに気づかれ、
「デク、代わりますよ。倉庫のほうで少し休憩してきてください」
気遣いの言葉をかけられ倉庫へと消えて行った。
苦笑いのクライヴが気の毒になる。
きっと、相当気を遣ってるんだろうな…。
なんて考えていたら料理長が店の外にオープンの看板を出しに行ったので、クライヴについ、
「どうして同じお城に生まれたのに、ウィリアム王子だけあんな卑屈な感じになっちゃったんですかね?ルーカス王子はあんなにも紳士的でやさしいのに」
なんて聞いてしまっていた。
そんなことを聞くつもりはなかったのだけれど、やっぱり気になる。
ルーカスはあんなにもやさしいのに、ウィリアムは口調もきついし冷たいし、圧があって恐ろしい。
料理長はあんなこと言ってたけど、たまたまとしか思えない。
倉庫に来たのだって、きっと名前と敬語のことを忠告しに来ただけのように思う。
それに…。
それに、私のバスケットを持ってくれたのも…。
持ってくれたのも?
…あれ?
それは、どうしてだろう…?
しばらく無言だったクライヴは、
「どうだろう。でも僕がいま言えるのは、目に見えるものだけが真実とは限らないってことかな?」
なんて意味深なことを言う。
「それってどういう…?」
もっと深く聞こうとしたとき、
「もうオープンの準備は万端だぜ!」
料理長が店に戻ってきて、はりきった声でそう言った。
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