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建国~黎明~編
151 隠しキャラ
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「ロイ…」
呆然と呟く私に、彼は薄く嗤った。
「『ロザリー』ですよ。お忘れですか?」
「ッ!サイラス!それはロイじゃない。ロイの『皮』を被った何か、だ!」
こちらに駆けてくるアルに、ロイは無表情に片手を突き出した。
「《迷闇》」
「なっ?!」
アルが真っ暗な靄に囚われた。それを見た司祭様が即座に立ちあがる。手には年季の入った聖杖がある。
「貴様、悪魔の眷属か!《聖なる光》!」
キラキラと降り注ぐ光の雫は神秘的だ。どこぞの王妃様の粘っこい光魔法より、よほど穏やか…
「ふぎゃあっ?!」
私、光魔法ダメだったぁ!喰らってからじゃ遅いけど!
「おいっ!ざけんなよテメェ!《炎撃獣》!」
セヴランがすかさず強力な炎熱の塊を放つが。
「アッツッ!!」
ロイにヒョイッと拾われ盾にされた。…何コレ。デジャヴ…
「おお、怖い怖い」
対するロイは余裕の笑みを浮かべ、光魔法と炎熱魔法のコンボ(※とばっちり)でぐんにょりした私を小脇に抱えた。
「それではごきげんよう。《蝕》」
「!」
まるで執事のように恭しく腰を折りロイが詠唱すると、黒くてドロリとしたものが天幕に飛散し、シュウシュウと煙をあげ天幕の骨組みを溶かし始めた!目を見開く面々を尻目に、腐食した骨組みを蹴ってロイは跳躍した。
「ま、待て!」
ようやく黒い靄から抜け出したアルが声をあげるも。ミシミシと音を立てて天幕が彼らの上に崩れ落ちた。
◆◆◆
一方。『続編』攻略対象に顔面膝蹴りをぶちこまれた『本編』ヒロインもとい王妃はというと…
「……。」
無言でよろよろと立ちあがったところだった。お忍び用のピンクのヒロインドレスは、蹴られて地面をスライディングしたことで全面的にドロドロ。宝石をあしらった飾り靴は、片方がなくなっていた。
「……。」
本当はいろいろ罵りたくて堪らなかったが、それ以上にアルフレッドの膝がめり込んだ顔が痛くて喋れなかったのである。
(クソゲーが…ラスボスの癖に、なんで、攻略対象が…!)
心中で怨嗟の台詞を吐いた王妃。そこへ…
スタッ
むぎゅ
「ぐっふぉ?!」
背中に突如として大人二人分のGがかかり、王妃はくぐもった呻き声をあげて、顔から地面に突っ込んだ。
「おや、失礼。レディ?」
自分を踏んづけてくれたクソ野郎が、心なんか微塵もこもっていない謝罪を口にした。…どっかで聞いたことのある声だ。誰だっけ。
…まあ、その前に。
「〇×※△□~…㊙▼÷~!!(私のお尻から降りなさいよ~!!)」
「おやおやこれは失礼。萎びて垂れ下がったレディのお尻に、果たして靴跡はつくものかと思いまして」
「×㊙∵〒*〓~!!(放送禁止用語)!!」
クソ野郎はさり気なく一歩ずつ体重を乗せ踏みつけて、王妃の尻から降りた。ズボッ!と王妃は地面にめり込んだ顔をあげ、即死級の無礼を働いたクソ野郎を睨み…
「あ…」
驚きのあまり目を見開いて固まった。
黒いフードを目深に被った男。顔は陰になって半分ほどしかわからないが、陰に浮かび上がる紫水晶の鋭い瞳は…
「魔王ルシアン…?」
ゲームでライオネルルートのハピエン直後に現れる謎の選択肢。王妃の気分がパッと明るくなった。顔と尻の痛みはどこへやら。ガバッと元気よく立ちあがった。
「ルシアン!ルシアンなのね!さあ私のお願いを叶えてちょうだい!」
「魔王ルシアン様…?いい」
「《時戻し》!ゲームを『本編』開始までリセットするのよ!」
泥塗れのキラキラと輝く笑顔で、明後日なお願いをする王妃の鼻からタラリと鼻血が垂れた。
「私はしがない悪」
「ルシアン!やるのよっ!」
…ダメだコイツ。聞いてねぇ。悪魔『ロザリー』は眉を下げた。面倒くさい女にちょっかいをかけてしまったものだ。
「ほら!言いなさいよ!私は邪竜を斃した『面白い女』よっ!」
…ある意味『面白い女』かもしれない。顔もドレスも泥塗れ。鼻血が垂れてて、満面の笑みの前歯は一本欠けている。ついでにドレスのお尻に、くっきりと黒い靴跡がついている。これで超ポジティブなのだから、まあ…
「…そうかもしれませんね」
つい、素直に肯定してしまった。自称『面白い女』がめっちゃ嬉しそうに胸を張る。腰が地味にボキボキ鳴った。
「……。」
何コレ。『ロザリー』は遠い目をした。
……。
……。
仕切りなおしましょう。イカレ女に負けるなんて悪魔の名折れ。悪魔は人間に絶望を与えてこそ悪魔なのだ。
「改めてご挨拶申し上げます、レディ。私は悪魔『ロザリー』「ルシアンでしょ!」」
イカレ女がすかさず被せてきた。強敵ですね、この女。
「いいえ。私はしがない悪魔『ロザリー』でございます。ルシアン様はおいでではございません」
…よし。ちゃんと最後まで話を聞いて下さいね。
「冗談キッツイわよぉ。その紫水晶の瞳が何よりの証拠じゃない!」
「…悪魔族は皆、紫水晶の瞳ですが?」
「…へ?」
「常識だと思いますが?」
目をパチパチさせる女。人間なら子供でも知っていることだ。悪魔の瞳が紫水晶だということくらい。
「……。」
「……。」
膠着状態になった。せめてここは「嘘よォ!」とか喚くところだと思いますが…。
十分経過。
膠着状態は続いている。女は停止してしまった。
もう…いいでしょうか。魔王様。
この女、頭が悪すぎて絶望できないようなのです。フリーズしてしまいました。
チラと小脇に抱えたサイラスを見やる。この女の分は、この少女に上乗せしてお支払いしますので、それでよろしいでしょうか。
嗚呼…この世は実に世知辛い。
下っ端悪魔の『ロザリー』は天を仰いだ。
呆然と呟く私に、彼は薄く嗤った。
「『ロザリー』ですよ。お忘れですか?」
「ッ!サイラス!それはロイじゃない。ロイの『皮』を被った何か、だ!」
こちらに駆けてくるアルに、ロイは無表情に片手を突き出した。
「《迷闇》」
「なっ?!」
アルが真っ暗な靄に囚われた。それを見た司祭様が即座に立ちあがる。手には年季の入った聖杖がある。
「貴様、悪魔の眷属か!《聖なる光》!」
キラキラと降り注ぐ光の雫は神秘的だ。どこぞの王妃様の粘っこい光魔法より、よほど穏やか…
「ふぎゃあっ?!」
私、光魔法ダメだったぁ!喰らってからじゃ遅いけど!
「おいっ!ざけんなよテメェ!《炎撃獣》!」
セヴランがすかさず強力な炎熱の塊を放つが。
「アッツッ!!」
ロイにヒョイッと拾われ盾にされた。…何コレ。デジャヴ…
「おお、怖い怖い」
対するロイは余裕の笑みを浮かべ、光魔法と炎熱魔法のコンボ(※とばっちり)でぐんにょりした私を小脇に抱えた。
「それではごきげんよう。《蝕》」
「!」
まるで執事のように恭しく腰を折りロイが詠唱すると、黒くてドロリとしたものが天幕に飛散し、シュウシュウと煙をあげ天幕の骨組みを溶かし始めた!目を見開く面々を尻目に、腐食した骨組みを蹴ってロイは跳躍した。
「ま、待て!」
ようやく黒い靄から抜け出したアルが声をあげるも。ミシミシと音を立てて天幕が彼らの上に崩れ落ちた。
◆◆◆
一方。『続編』攻略対象に顔面膝蹴りをぶちこまれた『本編』ヒロインもとい王妃はというと…
「……。」
無言でよろよろと立ちあがったところだった。お忍び用のピンクのヒロインドレスは、蹴られて地面をスライディングしたことで全面的にドロドロ。宝石をあしらった飾り靴は、片方がなくなっていた。
「……。」
本当はいろいろ罵りたくて堪らなかったが、それ以上にアルフレッドの膝がめり込んだ顔が痛くて喋れなかったのである。
(クソゲーが…ラスボスの癖に、なんで、攻略対象が…!)
心中で怨嗟の台詞を吐いた王妃。そこへ…
スタッ
むぎゅ
「ぐっふぉ?!」
背中に突如として大人二人分のGがかかり、王妃はくぐもった呻き声をあげて、顔から地面に突っ込んだ。
「おや、失礼。レディ?」
自分を踏んづけてくれたクソ野郎が、心なんか微塵もこもっていない謝罪を口にした。…どっかで聞いたことのある声だ。誰だっけ。
…まあ、その前に。
「〇×※△□~…㊙▼÷~!!(私のお尻から降りなさいよ~!!)」
「おやおやこれは失礼。萎びて垂れ下がったレディのお尻に、果たして靴跡はつくものかと思いまして」
「×㊙∵〒*〓~!!(放送禁止用語)!!」
クソ野郎はさり気なく一歩ずつ体重を乗せ踏みつけて、王妃の尻から降りた。ズボッ!と王妃は地面にめり込んだ顔をあげ、即死級の無礼を働いたクソ野郎を睨み…
「あ…」
驚きのあまり目を見開いて固まった。
黒いフードを目深に被った男。顔は陰になって半分ほどしかわからないが、陰に浮かび上がる紫水晶の鋭い瞳は…
「魔王ルシアン…?」
ゲームでライオネルルートのハピエン直後に現れる謎の選択肢。王妃の気分がパッと明るくなった。顔と尻の痛みはどこへやら。ガバッと元気よく立ちあがった。
「ルシアン!ルシアンなのね!さあ私のお願いを叶えてちょうだい!」
「魔王ルシアン様…?いい」
「《時戻し》!ゲームを『本編』開始までリセットするのよ!」
泥塗れのキラキラと輝く笑顔で、明後日なお願いをする王妃の鼻からタラリと鼻血が垂れた。
「私はしがない悪」
「ルシアン!やるのよっ!」
…ダメだコイツ。聞いてねぇ。悪魔『ロザリー』は眉を下げた。面倒くさい女にちょっかいをかけてしまったものだ。
「ほら!言いなさいよ!私は邪竜を斃した『面白い女』よっ!」
…ある意味『面白い女』かもしれない。顔もドレスも泥塗れ。鼻血が垂れてて、満面の笑みの前歯は一本欠けている。ついでにドレスのお尻に、くっきりと黒い靴跡がついている。これで超ポジティブなのだから、まあ…
「…そうかもしれませんね」
つい、素直に肯定してしまった。自称『面白い女』がめっちゃ嬉しそうに胸を張る。腰が地味にボキボキ鳴った。
「……。」
何コレ。『ロザリー』は遠い目をした。
……。
……。
仕切りなおしましょう。イカレ女に負けるなんて悪魔の名折れ。悪魔は人間に絶望を与えてこそ悪魔なのだ。
「改めてご挨拶申し上げます、レディ。私は悪魔『ロザリー』「ルシアンでしょ!」」
イカレ女がすかさず被せてきた。強敵ですね、この女。
「いいえ。私はしがない悪魔『ロザリー』でございます。ルシアン様はおいでではございません」
…よし。ちゃんと最後まで話を聞いて下さいね。
「冗談キッツイわよぉ。その紫水晶の瞳が何よりの証拠じゃない!」
「…悪魔族は皆、紫水晶の瞳ですが?」
「…へ?」
「常識だと思いますが?」
目をパチパチさせる女。人間なら子供でも知っていることだ。悪魔の瞳が紫水晶だということくらい。
「……。」
「……。」
膠着状態になった。せめてここは「嘘よォ!」とか喚くところだと思いますが…。
十分経過。
膠着状態は続いている。女は停止してしまった。
もう…いいでしょうか。魔王様。
この女、頭が悪すぎて絶望できないようなのです。フリーズしてしまいました。
チラと小脇に抱えたサイラスを見やる。この女の分は、この少女に上乗せしてお支払いしますので、それでよろしいでしょうか。
嗚呼…この世は実に世知辛い。
下っ端悪魔の『ロザリー』は天を仰いだ。
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