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第一章“物語の始まり”
Chapter3.偽りとは何か
しおりを挟む「ほう、これは美しい。」
「…」
「テレストライアル王国にこんな美人な王女がまだ居たとは。その上声もよく、逸材だと聞く。」
イラァ…
「姫よ、私のために一曲歌ってはくれないか?」
このいけ好かない奴は隣国ウィルダーネス王国第一王子タイガ・ハイドラ。
このテレストライアル王国に来国し、サクラ姫を拝みに来たらしい。
つーかさっきからチャラチャラとなんだこいつ。
「姫、そう断らずに其方の魔法を見せてはくれぬか?」
あーあ、姫さんも定着しちまってる作り笑いを浮かべやがって。内心イラついてるくせに。
つかさっきからチラチラと俺の方見やがって、俺に何しろってんだよ。
仕方ねえ、助け舟出してやるか。
「サクラ姫様、そろそろレッスンの時間です。」
やれやれ、あからさまにホッとしやがって。
従者ってのも楽じゃねえなあ。
「そ、それではタイガ様、私はこれで──」
「私も共に行こう。」
は?
「そこに行けば其方の歌声が聞けるのであろう?」
うっわーうぜえこいつ。そしてめんどくせえ。
姫さんも顔が引きつってるし。
どうしたもんかなあ。
「タ、タイガ様あ!!」
何だ?
「早急にお耳にお入れしていただきたいことが!」
「言ってみろ」
そう言われた使いの者はタイガ王子の耳元に口を近づけ何かを話した。
「何!?そうか、分かった。サクラ姫よ、大変悲しいことだが私は早々に宿舎に戻らねばならなくなった。」
「そ、そうですか。ではまた次の機会に。」
お、彼奴帰るのか。
「お気をつけてお帰りください。」
タイガ王子は俺の横を通り過ぎる時こう言い放った。
「ふん、下劣な。」
なっ、こいつ…。
バタン
「はあ、やっと帰った。あの人めんどくさすぎ。」
全く同感だ。
あいつなんてもう呼び捨てで十分だ。
***
「え?」
困惑するサクラの眼の前には火の海になった城の風景が広がっていた。
「なんで城が焼けてるの?」
「おい、サクラ姫待て!」
俺は城に駆け寄ろうとしたサクラ姫を止めた。
「やだ!やだよ!お父様!お母様!姉様!!」
「姫さん…。」
サクラ姫は泣き出した。
「いやっ、うあぁっ、いやああぁああ!!」
「おやおや姫よ、何を嘆いておるのか?」
後ろで聞こえた声は
「タイガ…様?」
タイガのものだった。
「姫はこれからウィルダーネス王国に来るのだぞ?何を悲しむ必要がある。」
「え?」
「っ…タイガてめえ!これはてめえの仕業か!」
俺は怒りに任せて怒鳴った。
「口の利き方をわきまえろ従者。一国の王子に対して何だその態度は。」
「質問に答えろ。」
俺は一層低い声で言った。
「ふん、教えてやろう。これは私が行ったことではない。父上が行ったのだ。」
何?
「何のためにだ。」
「姫を我が国に迎えるためさ。」
「そんなことで…」
お前は…!
「お前は自分の父親が何をしたのか分かっているのか!?」
俺がそう言うとタイガは嘲笑しながら言った。
「ああ、分かっているさ、父上がすることはいつも正しい。」
!!
「お前はやり方を間違えたな…」
「何?」
俺は絶句しているサクラ姫を一瞥して怒声を響かせた。
「姫さんを、てめえなんぞがいる国に連れていかせるかよ!お前は、お前の親父は!サクラ姫を敵に回した!このことがどういうことかよく考えろ。」
「シグレ…」
くそっ!なんでこうなる前に気づかなかったんだ俺は!!
「…いで」
「姫?」
「もう、これ以上私の大切なものに手を出さないで!!」
『草木よ!この地を汚すやからを追い払え!!』
「ひっ姫!?うわあああっ!!」
「…サクラ姫」
サクラ姫は城に向き直った。
「っ!何をする気だ!!」
「黙ってて!」
『偽りを纏う炎よ
お願いもうやめて
私の大事なものをこれ以上
奪わないでよ
失った命はもう取り戻せないけれど
桜のように形は変わっても
それでもいいから
お願い、返してよ…
もとに
戻してよ………』
城を纏う炎は消えていき、焼け野原だけが残った。
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