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第一章“物語の始まり”
Chapter4.悲しみの先に待つもの
しおりを挟む「サクラ姫」
「何でもない、行こうシグレ。」
「あ、あぁ。」
この日、三六八〇年一二月六日。
テレストライアル王国は、亡国した。
***
「ねえ、シグレ私達どこに向かうの?」
「そうだな…取り敢えずコズミック皇国に向かうかな。」
「コズミック皇国?」
俺は山道を掻き分けながら答えた。
「ああ、そこに俺の友達がいる。そいつに理由を話すさ。」
「そう…」
妙にしおらしくなったな。仕方ないけれど調子狂う。
「ねえ」
「ん?」
「シグレの両親は今どうしてる?」
…
「俺の両親ね、死んだよ。三年前に。」
「え、ごめん。」
あー、もう。
「んな気ぃ遣うな。大体、俺実際の両親知らねえし。」
「え、何それ。」
んー、なんて言えばいいかなぁ。
「俺さ、養子なんだよ。その前の記憶は全くない。保護されたところをブレイズ家の養父に預かられた。」
「て、余計重い話になってる!」
あ、そう言われればそうだな。
空を見上げると真っ青だったそれは紅く、無惨に染められていた。そう、血の色に似た空だ。
今まで綺麗だと思っていた夕焼けは今になっては禍々しいものに見えてしまうのは何故だろう。
世界がたった一件でこんなにも変わって見えるなんて今日まで知らなかった。
***
「今日はここで野宿かな。」
「え、野宿!?なにそれ楽しそう。」
ニヤッ
いつまでそんなこと言っていられるかな?
「ねえ、この草何?」
「山菜。」
「へえ。」
たっく…
「植物使いならそれくらい知っとけ。」
「うん、そうだね。」
え、今…
「い、今なんて?」
「え?うん、そうだね?」
俺はあんぐりと口を開けてしまった。
だってあの姫さんが素直すぎる。
これは早めに手を打った方がいいな。
「じゃあ俺は見張りしてるからサクラ姫はそこで寝てな。」
「…」
ん?
「どうした、姫さん。」
「シグレは寝ないの?」
「……寝てるわけにもいかないだろ。ここは森の中だ。獣や山賊がいるかもしれない。」
「疲れない?」
サクラ姫、精神的に参ってるのかな。
「大丈夫さ、だからゆっくり休め。」
「…うん。」
***
「…シグレ?」
「あ、起きたか。」
そう言ったシグレの腕には血の滲んだ布が巻かれていた。
「何、その布!」
「ああ、ドジった?」
「なんで疑問系なの…」
ああ、詮索されたくないってことだ。
「ねえ、シグレ。」
「うん?」
「私初めてこの世界が、当たり前のように朝が来るこの世界が嫌だと思った。」
「…どうして?」
「大事な人を、場所を失って絶望の淵に立っている私をまるで嘲笑うかのように当たり前に朝が来るこの世界が嫌になった。」
「うん。」
「でも…本当は分かってる。世界は一人の人間を贔屓しちゃダメなんだ。ひとつの事に影響されちゃダメなんだ。けど!分かっているのに嫌になるのを止められない私に本当に腹が立つ。」
「うん。」
「こんな曖昧な存在でいたくない。私は憎しみや絶望を抱えて生きていくのは嫌。だから逆に利用してやるの。私はこの感情を糧にして生き抜いてみせる。絶対に死んだりしない。無理して笑うのはもうやめる。」
俺は黙って聞く。
「だから、こんな私でも今までと同じように一緒にいてくれる?」
《こんな私でも》か。
そんなサクラ姫だからこそ
「一緒に居るよ。」
でも、サクラ姫。憎しみや絶望を糧にして生きるなんて辛いんじゃないか?
この先の旅でそんなもの以外の生きる理由を見つけてくれ。
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