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2:年上上司の甘え方
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「御邪魔しまーす。あ。お久しぶりです!」
「あら、濱口君、久しぶりねぇ~」
濱口は久しぶりに芳樹の家の玄関にたっていた。すぐそばでは芳樹の母親がにこにこと変わらぬ笑顔を振りまいている。濱口はこの人の笑顔をみるとほっとする。幼いころからお世話になっていたからだ。
奥の部屋に入ると、マルコとクリスティーノがいた。そして、クリスティーノの第一秘書だというマリオを紹介される。奥には芳樹がいて、濱口、と声をかける。芳樹の隣にはオールバックで目つきの鋭い男がいた。
「あ。猛。最近会ってなかったかもしれないけど、羽間もいるんだ」
「濱口か。久しぶりだな」
「えっ? うわ、お久しぶりです!」
芳樹の指導役である。そしてフランス本社についている顧問でもあることを濱口は最近知った。つまり、奥村の上司だ。
過去の記憶を呼び起こすと、そのまま年をとった感じだった。久しく会っておらず、数年ぶりの彼は記憶の中よりも男前になっているように感じる。その芳樹の目の前には奥村がいた。奥村の私服姿をみるのは会社行事で一度みたかくらいだ。今日の彼は細身のパンツと、薄目のカットソーでよく似合っている。あまり派手でない色も彼らしかった。
(うわ、ほっそ……)
その細い腰をみて、少しどきどきする。彼はまた大貴の相手していた。以前の会食のことを思い出し、苦笑いがこぼれる。どうも彼は芳樹の父親には弱いらしい。
(また酔いつぶれフラグかも)
複雑な気持ちだったが、そこに巻き込まれ、またみんなで飲むことになった。しかし、濱口は実家まで車できているので、酒は断らなくちゃな、と思いながら、そこに座った。奥村がほっと笑う顔をみて、それだけで少し得した気持ちになる。
(かっわいい! 店でも思ったけど、酔ってくると、笑顔多くなるなぁ。あ。耳に髪の毛かけてる……珍し……っ)
「父さん! また奥村さんをこんなにお酒に付き合わせて……奥村さん、すみません」
「い、いえっ!!」
恐縮です、と酔って少し赤くなった頬をみて驚く。そういえば、こういう場で二人が一緒にいるところをみたことはなかった。
(うわっ、芳樹くんにはあんな風になるんだ?)
ちょっと複雑だが、奥村が緊張しつつも、幼馴染とにこにこと接しているのをみるとほっとする。かわいいな、とも思い、胸のうちが暖かくなった。
(そりゃ、社長だからってのも、元からすげえ尊敬してるのもわかるけど。オレも芳樹くん大好きだし。……でも、すっげえ……あんな顔見たことねえや。やっぱ芳樹くんはすげーんだなー……)
芳樹はあまり得意でない酒を少しだけ飲みながら、あ、ごめん、と濱口の飲み物に気づいた。
「猛も飲む? なにがいい?」
「いや、オレ、明日朝には車ださなきゃだからやめとくよ」
「そっか」
笑いあっていると、羽間が濱口に近づいてきた。
「よお、濱口」
「羽間さん?」
「でかくなったな、お前」
「いや、そうっすかね」
久しぶりに会話してみても、彼は相変わらずだった。そんな羽間は濱口を満足そうに眺めて、奥村に声をかける。
「おい、奥村」
「はい」
「濱口の面倒はちゃんと見てたんだろうな」
「ええ、一年間、みっちりとしごきあげておきました」
まあ、まだそこまでですけどね、といわれるが、濱口は奥村が自分の話をしてくれただけでうれしい。ぼんやりと、二人の会話をきいてるようなきいてないようなふりをしていた。
「奥村に直接指導するよう頼んだだけあるな。営業成績、随分と上げてるらしいじゃないか」
「えっ、あ、うん。そうですかね?」
ほとんど奥村部長からの引継成績だけど、と事実も告げると、羽間はその様にくすりと笑った。
「いいんだよ。ちゃんと仕事すんだぞ?」
「はい、頑張ります!」
にっこりと笑う濱口に、羽間はその細くて長い指で彼の腰に手をするりとやる。
「?」
「なあ、まだ野球やってんのか?」
「ん? まあ、ちょこちょこですけど」
「へえ、どーりで」
「羽間、猛が無反応だからってずっとセクハラすんのやめてよ……」
奥村さんが怒ってるじゃん、と芳樹がいうのに、濱口は驚く。そんなことを彼がいうなんて思いもしていなかったからだ。
(えっ!?)
「いえ、羽間さんにならいくらでも貸し出しますので。お好きなだけどうぞ」
「そうか、じゃあ、借りてくぞ」
「ええっ? ってか、オレ、セクハラされてたの?」
「……猛……」
危機感もってよぉ……、とあきれる芳樹。しかし、濱口はそれどころではなくて、奥村が本当に怒っていたのか、それに、どうしてそんなことを芳樹がいったのかが気になって仕方がなかった。今はにこにこしているのに。なんだろう、元部下という意味でなのだとは思うけれど。ちょっと、そんな機嫌のよくなさそうなところも見られればうれしいな、とも思ってしまうのが重傷だ。
「あ、そうだ!」
「?」
はい、笑って!と、濱口が思いだしたようにスマホを二人に向け写真をとった。奥村と芳樹のツーショットだ。
「あら、濱口君、久しぶりねぇ~」
濱口は久しぶりに芳樹の家の玄関にたっていた。すぐそばでは芳樹の母親がにこにこと変わらぬ笑顔を振りまいている。濱口はこの人の笑顔をみるとほっとする。幼いころからお世話になっていたからだ。
奥の部屋に入ると、マルコとクリスティーノがいた。そして、クリスティーノの第一秘書だというマリオを紹介される。奥には芳樹がいて、濱口、と声をかける。芳樹の隣にはオールバックで目つきの鋭い男がいた。
「あ。猛。最近会ってなかったかもしれないけど、羽間もいるんだ」
「濱口か。久しぶりだな」
「えっ? うわ、お久しぶりです!」
芳樹の指導役である。そしてフランス本社についている顧問でもあることを濱口は最近知った。つまり、奥村の上司だ。
過去の記憶を呼び起こすと、そのまま年をとった感じだった。久しく会っておらず、数年ぶりの彼は記憶の中よりも男前になっているように感じる。その芳樹の目の前には奥村がいた。奥村の私服姿をみるのは会社行事で一度みたかくらいだ。今日の彼は細身のパンツと、薄目のカットソーでよく似合っている。あまり派手でない色も彼らしかった。
(うわ、ほっそ……)
その細い腰をみて、少しどきどきする。彼はまた大貴の相手していた。以前の会食のことを思い出し、苦笑いがこぼれる。どうも彼は芳樹の父親には弱いらしい。
(また酔いつぶれフラグかも)
複雑な気持ちだったが、そこに巻き込まれ、またみんなで飲むことになった。しかし、濱口は実家まで車できているので、酒は断らなくちゃな、と思いながら、そこに座った。奥村がほっと笑う顔をみて、それだけで少し得した気持ちになる。
(かっわいい! 店でも思ったけど、酔ってくると、笑顔多くなるなぁ。あ。耳に髪の毛かけてる……珍し……っ)
「父さん! また奥村さんをこんなにお酒に付き合わせて……奥村さん、すみません」
「い、いえっ!!」
恐縮です、と酔って少し赤くなった頬をみて驚く。そういえば、こういう場で二人が一緒にいるところをみたことはなかった。
(うわっ、芳樹くんにはあんな風になるんだ?)
ちょっと複雑だが、奥村が緊張しつつも、幼馴染とにこにこと接しているのをみるとほっとする。かわいいな、とも思い、胸のうちが暖かくなった。
(そりゃ、社長だからってのも、元からすげえ尊敬してるのもわかるけど。オレも芳樹くん大好きだし。……でも、すっげえ……あんな顔見たことねえや。やっぱ芳樹くんはすげーんだなー……)
芳樹はあまり得意でない酒を少しだけ飲みながら、あ、ごめん、と濱口の飲み物に気づいた。
「猛も飲む? なにがいい?」
「いや、オレ、明日朝には車ださなきゃだからやめとくよ」
「そっか」
笑いあっていると、羽間が濱口に近づいてきた。
「よお、濱口」
「羽間さん?」
「でかくなったな、お前」
「いや、そうっすかね」
久しぶりに会話してみても、彼は相変わらずだった。そんな羽間は濱口を満足そうに眺めて、奥村に声をかける。
「おい、奥村」
「はい」
「濱口の面倒はちゃんと見てたんだろうな」
「ええ、一年間、みっちりとしごきあげておきました」
まあ、まだそこまでですけどね、といわれるが、濱口は奥村が自分の話をしてくれただけでうれしい。ぼんやりと、二人の会話をきいてるようなきいてないようなふりをしていた。
「奥村に直接指導するよう頼んだだけあるな。営業成績、随分と上げてるらしいじゃないか」
「えっ、あ、うん。そうですかね?」
ほとんど奥村部長からの引継成績だけど、と事実も告げると、羽間はその様にくすりと笑った。
「いいんだよ。ちゃんと仕事すんだぞ?」
「はい、頑張ります!」
にっこりと笑う濱口に、羽間はその細くて長い指で彼の腰に手をするりとやる。
「?」
「なあ、まだ野球やってんのか?」
「ん? まあ、ちょこちょこですけど」
「へえ、どーりで」
「羽間、猛が無反応だからってずっとセクハラすんのやめてよ……」
奥村さんが怒ってるじゃん、と芳樹がいうのに、濱口は驚く。そんなことを彼がいうなんて思いもしていなかったからだ。
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「いえ、羽間さんにならいくらでも貸し出しますので。お好きなだけどうぞ」
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「ええっ? ってか、オレ、セクハラされてたの?」
「……猛……」
危機感もってよぉ……、とあきれる芳樹。しかし、濱口はそれどころではなくて、奥村が本当に怒っていたのか、それに、どうしてそんなことを芳樹がいったのかが気になって仕方がなかった。今はにこにこしているのに。なんだろう、元部下という意味でなのだとは思うけれど。ちょっと、そんな機嫌のよくなさそうなところも見られればうれしいな、とも思ってしまうのが重傷だ。
「あ、そうだ!」
「?」
はい、笑って!と、濱口が思いだしたようにスマホを二人に向け写真をとった。奥村と芳樹のツーショットだ。
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