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第一章 二千年後の世界
魔力供給
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「わかりました。ですが、その前に魔力を少し分けてほしいです」
「おう。いつもみたいに手を出してくれ」
「はい……これって手を繋がないとダメなんですかね? 少し恥ずかしいのですが」
ミラはそう言いつつもおずおずと両手を差し出してきたので、俺は有無を言わさずその手を自身の両手で包み込んだ。
そして、すかさず魔力を流し込んでいく。
「触れずに魔力を分けることもできるっちゃできるんだが、かなり効率が悪いから肌に触れる方が何倍もスピーディーだ」
血液と同じく、魔力も心臓を中心として体内を循環しているので、本来は胸元に手を当てて供給した方が早いのだが、さすがにその提案はできないのでミラには内緒だ。
「それはわかりますが、やっぱり相手が賢者様とはいえ男性ですから、少し照れちゃいます……」
「……よし終わり」
俺は少々顔を赤らめているミラには言葉を返さず、早々に魔力を流して作業を終えた。
異性だということを意識したら手元が狂ってしまう。あまり考えないようにしよう。
「ありがとうございます。では、私は荷物を持って物置に向かいますね」
ミラはぎこちないながらに魔力を上手く操作して、いくつかの荷物を宙に浮かせると、少々覚束ない足取りで一階フロアの奥に向かっていった。
今のミラなら三往復くらいすれば運び込めそうだな。
俺の方は森の中だと木々が多くて道も狭かったのでいっぺんに運べなかったが、この屋敷は廊下や階段の幅も広く、天井もかなり高い作りなので、上手く積み重ねてまとめて運べば、一回で済みそうだな。
「さて、こっちは五人ずつくらい同時に運んでいくか」
俺の魔力操作を駆使すれば、人や物に魔力を纏わせることで一千キログラム程度までなら簡単に持ち運びできるが、あくまでもそれは最大値に過ぎない。持ち運びできたとしても、乱雑な扱いになることは間違いないし、対象が人間の時は無理せず慎重かつ丁寧に行うのがセオリーだ。
三階は全部空き部屋だし、その中で寝かせるとしよう。生憎、未だに高級なベッドは用意できていないので、魔法で作った土のマットレスだが十分だろう。
少しばかり草と土の自然の香りは残るが、見た目は魔法で高級ベッド風にしておくから許してほしい。
往復は面倒だがとっとと運ぼう。
「おう。いつもみたいに手を出してくれ」
「はい……これって手を繋がないとダメなんですかね? 少し恥ずかしいのですが」
ミラはそう言いつつもおずおずと両手を差し出してきたので、俺は有無を言わさずその手を自身の両手で包み込んだ。
そして、すかさず魔力を流し込んでいく。
「触れずに魔力を分けることもできるっちゃできるんだが、かなり効率が悪いから肌に触れる方が何倍もスピーディーだ」
血液と同じく、魔力も心臓を中心として体内を循環しているので、本来は胸元に手を当てて供給した方が早いのだが、さすがにその提案はできないのでミラには内緒だ。
「それはわかりますが、やっぱり相手が賢者様とはいえ男性ですから、少し照れちゃいます……」
「……よし終わり」
俺は少々顔を赤らめているミラには言葉を返さず、早々に魔力を流して作業を終えた。
異性だということを意識したら手元が狂ってしまう。あまり考えないようにしよう。
「ありがとうございます。では、私は荷物を持って物置に向かいますね」
ミラはぎこちないながらに魔力を上手く操作して、いくつかの荷物を宙に浮かせると、少々覚束ない足取りで一階フロアの奥に向かっていった。
今のミラなら三往復くらいすれば運び込めそうだな。
俺の方は森の中だと木々が多くて道も狭かったのでいっぺんに運べなかったが、この屋敷は廊下や階段の幅も広く、天井もかなり高い作りなので、上手く積み重ねてまとめて運べば、一回で済みそうだな。
「さて、こっちは五人ずつくらい同時に運んでいくか」
俺の魔力操作を駆使すれば、人や物に魔力を纏わせることで一千キログラム程度までなら簡単に持ち運びできるが、あくまでもそれは最大値に過ぎない。持ち運びできたとしても、乱雑な扱いになることは間違いないし、対象が人間の時は無理せず慎重かつ丁寧に行うのがセオリーだ。
三階は全部空き部屋だし、その中で寝かせるとしよう。生憎、未だに高級なベッドは用意できていないので、魔法で作った土のマットレスだが十分だろう。
少しばかり草と土の自然の香りは残るが、見た目は魔法で高級ベッド風にしておくから許してほしい。
往復は面倒だがとっとと運ぼう。
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