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4章 論理と感情を合わせる方法 編
ハーレムキングは理論を打ち破る
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ヒロインが攫われた。
その事実だけで、王は動くには充分だった。
「潜伏場所はイデア南東部か。無名の墓地の近くときたか」
脳内構築魔法でヒロインの場所を割り出すことに成功した。王に小細工は通用せん!
変態? そうだ、王は変態的だ! ヒロインの場所を割り出すなど容易いこと!
「ふむ、三年前に閉鎖されたまま、表向きは崩落済みとされているのか」
オレは昼の街を駆けた。
目的はただ一つ。セレナ・アル=リュグナス。知の怪物を理性の檻から救い出すために。
到着した場所は、廃墟だった。
じめっとした空気が肌にまとわりつく。こんな場所にセレナを置いておくとは、なんと躾のなっていない悪党どもだ。
「むんっ!」
扉は魔力で封じられていたが、それも王の拳で容易く破壊。
内部は迷路のような構造だったが、誰かの痕跡を辿ることなど、王にとっては何ら苦ではない!
理論では説明不能。だが、王に不可能はない!
敵は現れたが、言葉にする必要もない。
王の一歩に震える床。王の一振りに散る影。
魔法障壁は砕け、魔法陣は灰と化し、黒ずくめの者たちを次々と叩き伏せていく。
そして、最奥。
その場には、鎖に縛られ、薄暗い魔導灯の下でなお毅然と立つ、青き髪の少女の姿があった。
「難攻不落のヒロインよ、久しいな! 王が迎えに来たぞ!」
「……あなた、王?」
目を見開いた彼女の声は思いのほか震えていなかった。
それが、彼女らしかった。
「君の居場所を特定するなど、容易だったぞ。王を誰だと思っている?」
黒ずくめたちはもういない。
彼女の身を拘束していた鎖も、オレが片手で粉砕した。
ゆっくりと立ち上がったセレナは淡々と口を開いた。
「……実験に着手したわたしの判断は、合理だった。あなたに救われたのは……誤算」
「ふははははっ! 誤算こそ、人生の味わいだ! 無論、王の決断に誤りはないがな!」
オレは朗らかに笑って見せた。
「変な人」
「そうだ、変な人だ! しかし、常識人であればこれほど早く救出することはできなかった! 変人であるからこそ、王は君を救い出すことに成功したのだ!」
「……どうしてここがわかったの?」
「王の脳内構築魔法だ!」
「ノウナイコウチクマホウ?」
「うむ! 頭の中でヒロインを想う時、ヒロインの居場所を容易に特定できる特殊な力だ! ハーレムキング・デイビッド、つまりはオレという王にしか使えんがな! ふはははははっ!」
オレが高笑いを響かせると、セレナは頬をひくつかせていた。ふむ、そういう顔もできるのだな。やはり、人は感情を持った方が美しい!
では、彼女に感情を持たせ、理性の檻から連れ出すために人肌脱ぐとしよう!
「ところで、禁呪について、君はどう考えている?」
オレは高笑いをやめて唐突に尋ねた。すると、セレナはわずかに沈黙し、そして言った。
「あなたには全てお見通しなんだ」
「詳細は聞かずともわかる。ヒロインの行動は全てオレに筒抜けなのだよ。しかし、君の気持ちについてはまだ理解に及んでいない。聞かせてもらえるか?」
「……あのとき、サラの“叫び”を聞いた。あれは、感情による否定。非論理的な拒絶反応。でも……その“ノイズ”が、なぜか……消えなかった。いつもなら頭にすら残らず、ものの数秒で忘れるものなのに……サラの声はいまだに残り続けてる」
「消えなかった?」
「あれは、サラの叫びは“正しくない”反応だった。非効率で、非合理的で、実験の成功に支障をきたす。なのに、記憶から消去できなかった。わたしが感情に干渉されたのは初めてのことだった」
彼女は少し呼吸を整えると、そのまま呟くようにして続けた。
「理論では割り切れなかった。それだけの話。サラがいなくなり、わたしは単独で実験を続けていた。でも、気づけば、攫われていた。どうやら以前からわたしの研究データがそこのよくわからない組織に狙われていたらしい」
「何も危害は加えられなかったのか?」
「うん。その前にあなたが来た」
オレは彼女の言葉に大きく頷いた。
「オレは来たのだ。感情という名の非合理を以って! 人を信じる力を信じるために!」
セレナの瞳が微かに揺れた。
「……あなたの行動は、理論では説明できない」
「だが、感情では納得できる」
「それは……受け入れてもいい、“矛盾”ということ?」
「ふははははっ! それは矛盾ではない。君の中に、初めて“揺らぎ”が生まれただけだ! 理論ではなく、感情という新たな閃きに出会っただけのこと! そしてそれは、セレナ、君のことをより美しい人間にしてくれる!」
「……そう」
セレナはそっと目を伏せた。理論を重要視する彼女が、言葉に詰まるとはな。感情という概念に触れて変わり始めている証拠だ。
「……あなたは、わたしにとって厄介な存在」
「承知している。だが、それでも言わせてもらおう。君がどれだけ非情でも、王のハーレム構成員であることに変わりはない! いや、今は候補か? 君が認めればすぐに構成員となる!」
「……っ」
唇が、わずかに動いた。
その端が、ほんのすこし、上がっていた。
「非合理を受け入れるのは、今が初めて。でも……不快ではなかった」
それは、彼女なりの“感謝”だったのかもしれない。
真っ直ぐな言葉ではなかったが、王には確かに伝わったぞ!
「さて、話も済んだことだし、行こうか、セレナ」
「どこに?」
「決まっている。仲間の待つ場所だ」
「……そんなもの、あった? わたしは友達も家族もいない」
「今、オレが君の手を引きそこへ連れていく! オレの仲間は君の仲間だ! ふはははははっ!」
「っ……」
セレナは何も言わなかったが、頬がほんのり赤く染まっていた。もう抵抗する様子はない。
そのまま、オレの背にそっとついてくる。
しかし、足元がおぼつかないらしい。
「ふぅ、セレナよ。もしも恐怖で足が震えているのであれば、王の背中に乗るのも一つの手だぞ?」
「……」
セレナは素直にオレの背中に乗っかった。
軽い、そして柔らかい! 良い香りだ!
さらりとした髪が頬をくすぐる! だが、それも至福の一つ! オレは幸せ者だ!
「ありがとう、キング」
背中から吐息と共に声が漏れ出た。
「キング……いい呼び名だ! これからもそう呼ぶといい!」
このとき、王の物語はまた一歩、進んだ。
難攻不落のヒロインに、初めての“揺らぎ”を生じさせる、それが王の愛であり、力であり、選択である!
その事実だけで、王は動くには充分だった。
「潜伏場所はイデア南東部か。無名の墓地の近くときたか」
脳内構築魔法でヒロインの場所を割り出すことに成功した。王に小細工は通用せん!
変態? そうだ、王は変態的だ! ヒロインの場所を割り出すなど容易いこと!
「ふむ、三年前に閉鎖されたまま、表向きは崩落済みとされているのか」
オレは昼の街を駆けた。
目的はただ一つ。セレナ・アル=リュグナス。知の怪物を理性の檻から救い出すために。
到着した場所は、廃墟だった。
じめっとした空気が肌にまとわりつく。こんな場所にセレナを置いておくとは、なんと躾のなっていない悪党どもだ。
「むんっ!」
扉は魔力で封じられていたが、それも王の拳で容易く破壊。
内部は迷路のような構造だったが、誰かの痕跡を辿ることなど、王にとっては何ら苦ではない!
理論では説明不能。だが、王に不可能はない!
敵は現れたが、言葉にする必要もない。
王の一歩に震える床。王の一振りに散る影。
魔法障壁は砕け、魔法陣は灰と化し、黒ずくめの者たちを次々と叩き伏せていく。
そして、最奥。
その場には、鎖に縛られ、薄暗い魔導灯の下でなお毅然と立つ、青き髪の少女の姿があった。
「難攻不落のヒロインよ、久しいな! 王が迎えに来たぞ!」
「……あなた、王?」
目を見開いた彼女の声は思いのほか震えていなかった。
それが、彼女らしかった。
「君の居場所を特定するなど、容易だったぞ。王を誰だと思っている?」
黒ずくめたちはもういない。
彼女の身を拘束していた鎖も、オレが片手で粉砕した。
ゆっくりと立ち上がったセレナは淡々と口を開いた。
「……実験に着手したわたしの判断は、合理だった。あなたに救われたのは……誤算」
「ふははははっ! 誤算こそ、人生の味わいだ! 無論、王の決断に誤りはないがな!」
オレは朗らかに笑って見せた。
「変な人」
「そうだ、変な人だ! しかし、常識人であればこれほど早く救出することはできなかった! 変人であるからこそ、王は君を救い出すことに成功したのだ!」
「……どうしてここがわかったの?」
「王の脳内構築魔法だ!」
「ノウナイコウチクマホウ?」
「うむ! 頭の中でヒロインを想う時、ヒロインの居場所を容易に特定できる特殊な力だ! ハーレムキング・デイビッド、つまりはオレという王にしか使えんがな! ふはははははっ!」
オレが高笑いを響かせると、セレナは頬をひくつかせていた。ふむ、そういう顔もできるのだな。やはり、人は感情を持った方が美しい!
では、彼女に感情を持たせ、理性の檻から連れ出すために人肌脱ぐとしよう!
「ところで、禁呪について、君はどう考えている?」
オレは高笑いをやめて唐突に尋ねた。すると、セレナはわずかに沈黙し、そして言った。
「あなたには全てお見通しなんだ」
「詳細は聞かずともわかる。ヒロインの行動は全てオレに筒抜けなのだよ。しかし、君の気持ちについてはまだ理解に及んでいない。聞かせてもらえるか?」
「……あのとき、サラの“叫び”を聞いた。あれは、感情による否定。非論理的な拒絶反応。でも……その“ノイズ”が、なぜか……消えなかった。いつもなら頭にすら残らず、ものの数秒で忘れるものなのに……サラの声はいまだに残り続けてる」
「消えなかった?」
「あれは、サラの叫びは“正しくない”反応だった。非効率で、非合理的で、実験の成功に支障をきたす。なのに、記憶から消去できなかった。わたしが感情に干渉されたのは初めてのことだった」
彼女は少し呼吸を整えると、そのまま呟くようにして続けた。
「理論では割り切れなかった。それだけの話。サラがいなくなり、わたしは単独で実験を続けていた。でも、気づけば、攫われていた。どうやら以前からわたしの研究データがそこのよくわからない組織に狙われていたらしい」
「何も危害は加えられなかったのか?」
「うん。その前にあなたが来た」
オレは彼女の言葉に大きく頷いた。
「オレは来たのだ。感情という名の非合理を以って! 人を信じる力を信じるために!」
セレナの瞳が微かに揺れた。
「……あなたの行動は、理論では説明できない」
「だが、感情では納得できる」
「それは……受け入れてもいい、“矛盾”ということ?」
「ふははははっ! それは矛盾ではない。君の中に、初めて“揺らぎ”が生まれただけだ! 理論ではなく、感情という新たな閃きに出会っただけのこと! そしてそれは、セレナ、君のことをより美しい人間にしてくれる!」
「……そう」
セレナはそっと目を伏せた。理論を重要視する彼女が、言葉に詰まるとはな。感情という概念に触れて変わり始めている証拠だ。
「……あなたは、わたしにとって厄介な存在」
「承知している。だが、それでも言わせてもらおう。君がどれだけ非情でも、王のハーレム構成員であることに変わりはない! いや、今は候補か? 君が認めればすぐに構成員となる!」
「……っ」
唇が、わずかに動いた。
その端が、ほんのすこし、上がっていた。
「非合理を受け入れるのは、今が初めて。でも……不快ではなかった」
それは、彼女なりの“感謝”だったのかもしれない。
真っ直ぐな言葉ではなかったが、王には確かに伝わったぞ!
「さて、話も済んだことだし、行こうか、セレナ」
「どこに?」
「決まっている。仲間の待つ場所だ」
「……そんなもの、あった? わたしは友達も家族もいない」
「今、オレが君の手を引きそこへ連れていく! オレの仲間は君の仲間だ! ふはははははっ!」
「っ……」
セレナは何も言わなかったが、頬がほんのり赤く染まっていた。もう抵抗する様子はない。
そのまま、オレの背にそっとついてくる。
しかし、足元がおぼつかないらしい。
「ふぅ、セレナよ。もしも恐怖で足が震えているのであれば、王の背中に乗るのも一つの手だぞ?」
「……」
セレナは素直にオレの背中に乗っかった。
軽い、そして柔らかい! 良い香りだ!
さらりとした髪が頬をくすぐる! だが、それも至福の一つ! オレは幸せ者だ!
「ありがとう、キング」
背中から吐息と共に声が漏れ出た。
「キング……いい呼び名だ! これからもそう呼ぶといい!」
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