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■【本編】■

level.003 僕たちの未来図に

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その特殊な部屋から出たレーネとオズは、苦笑いを浮かべているクロヴィスの前へとやってくる。


「あー、代金はヴィクトルから貰ってるから気にせんでいいから」

「え?そうなの?」

「おう!あと、一人だったよな?アンタなら、“変わった奴”でも大丈夫だろ」


クロヴィスは隣の部屋へと立ち去ると、少し経ってから一人の黒寄りの焦げ茶色の髪色に少しハネっ毛があり前髪の一部がパッツンのショートで、少しツリ目のパッチリ目をしたピンク色の瞳をした背の低い青年と共にやってくる。


「彼の名前は、ロイド」

「……よろしゅ~に」

「んで、彼女はレーネさんね?彼女の言う事は、ちゃんと守るように」

「…わかってるわ!……よろしく、レーネさん」


ロイドは無愛想に言うと、レーネはロイドの頬を摘まんでいてロイドは唖然とした表情をしていた。


「ちゃんと、笑ってくれない?それに、ちゃんと私を見て話してくれないと困るんだけどっ」

「っ~……離せやっ!」

「却下」

「おまっ……!」


ロイドはレーネの行動に呆れ、自分の抵抗に対して馬鹿馬鹿しく感じては諦める事にした。


「……わかった!わかったから、離せや!ちゃんと、アンタを見て話すから!」

「よし」

「よし、じゃないっての!たくっ……何なんだよ、アンタは」

「レーネだけど?」

「「いや、そうじゃない」」


レーネの答えにオズとロイドは同時にツッコミをすると、互いに見ては少し不機嫌になりながらもクロヴィスと話をしているレーネの方を見る。


「んじゃ、“主従契約”をして……」

「それは、しなくていいです」

「「「えっ?」」」


レーネがキッパリと答えると、クロヴィスを含めた三人は唖然とした表情をしていたが、クロヴィスは何処か焦った表情をしていた。


「あ、いやっ……レーネさん?“主従契約”をしないと、彼らが違反などをした時に制限とか出来なくてっ……!」

「わかってますよ?でも、私の勘では彼らは“違反者”にはならないって思っているんで!」

「レーネさん……っ」


クロヴィスはレーネの言葉に呆れながらも、あのヴィクトルが認めている人物なら大丈夫かもしれないと考えていた。


「わかりましたよ、わかったよ!もしも、何かあっても此方に頼ってくださいよ?一応、何かあれば対応しますんでっ!」

「あ、はいっ!」


レーネの言葉にオズとロイドは、何処か吹っ切れたような表情をしながらも互いを見ては軽く笑っていた。

今まで、軍人として生きてきた彼らにとっては信頼出来るような存在など居なかった。
だからこそ、レーネのように彼らに対して信頼を向けてくれるというのは彼らにとぅても、それは“信頼に値する”という事でもある。


「レーネちゃん、だっけ?」

「ん?」

「俺ら、レーネちゃんの為に働かさせてもうさかい!これから、よろしゅーな!」

「ロイドさん」

「それに、ボクらと生きてくれるんやろ?」

「オズさんっ」

「「俺達は、レーネを生涯何があっても裏切ったりしない」」


三人が笑っているのをクロヴィスは眺めていて、微かに微笑んでは頬を掻いてから書類を見ていた。


(ヴィクトルさんが言ってたのは、こういう事だったってか)


ーレーネならば、“彼ら”を受け入れて平等な立場で共に生きようなど言うだろうからな。ー







レーネはロイドとオズを連れて、あの廃墟となってしまった自宅へと帰ってきていた。


「レーネちゃん、この辺りを片付ければええのか?」

「あ、うん!器材とかは、そっちの箱に仕舞ってくれたら後で“修繕”しておくからお願い」

「おん、わかった!」

「レーネ、これは?」

「あ、それはそっちの箱に」

「おん、わかったでー」


レーネの指示通りに、ロイドとオズは器材関係を箱の方に仕舞っていく。
レーネは二人が片付けをしている間に、建物の“修繕”を行うために変わった羽根ペンで光の文字を書き始める。


「へぇ、“修繕”って……そうやってやるんやな!」

「“書き換え”って言ってね、壊れた文字を書き直していく事で……」


レーネが書き終わると、壊れていたはずの建物が修復され新品同様になって変わっていくのを二人は驚いていた。


「すげぇ……」

「凄いやん、レーネっ!」

「ははっ、“錬金術士”なら当たり前の技だよ~?ほら、さっさと片付けないと夕飯になっちゃうよ!?」

「お、おうっ!」


全ての片付けが終わると、リビングにてレーネが軽めの食事としてサンドイッチを乗せた皿をテーブルに置く。

ロイドもオズも用意されたサンドイッチを全部食べてから、別に用意されていた林檎のアップルパイも食べていた。


(凄い食欲……食費の稼ぎも考えないと、なぁ)

「別のお風呂とか用意してあるから、二人とも入って大丈夫だよ~」

「おん、ありがとー!」

「んじゃ、サッパリしてくるなー」


ロイドとオズが風呂場へと行けば、レーネは食器などを洗いながら色々と思い出していた。

それは、100年前の事である。
彼らと似たような場所で、ヴィクトルと出会っていた事を思い出していた。


(ヴィクトルさんも、闇市場のオークションに出されていて……)

(あの時は、無限回路へと出掛けるための護衛が欲しくて……でも、ヴィクトルさんの姿を見ていたら……なんとなく、ほっとけなくて)

(まだ、オズ達とは違って威嚇されていて中々……話も出来なくて)


レーネはヴィクトルとの日常を思い出しては、可笑しそうに笑ってから食器などをタオルで拭いてから食器棚に仕舞っていく。


「さて、明日はお店を開く準備をしないと!」


レーネが商品管理のファイルを取り出しては、其処に薬剤関係と値段も書いていると
二人とも戻ってくる。


「そういえば、レーネちゃんは“錬金術士”なんだよな?」

「うん、そうだけど?」

「って事は、“魔導付属の装備”とかって作れたりするん?」

「まー、材料さえあれば」

「なら、さ……俺らの武器も作ってくれないか?俺達は、レーネちゃんの役に立ちたいからさ!」

「うん、わかった」


レーネは二人の頼みで、二人の“魔導付属の装備”を作るために色々と準備をする事にした。


「“空間倉庫”に、いくか残っているはずあから……二人の分ぐらいなら直ぐに作れると思うよ!」

「よしっ!!」






ーーねくすと→
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