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14 なんで?
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転移魔法で自室に移動してから、図書館の個別学習室に張っていた結界を解いた。ベッドに腰を掛けゆっくりと息を吐く。集中力が切れたと言われ休憩を与えたため、予定外に数時間の暇ができてしまった。
最近やっと見つけた使役者……モナは、類い稀な魔力量の持ち主ではあるが、それでもまだ15歳の少女だ。自分の力のコントロールができていないし、あれでは持て余していると言ってもいい。
だからと言ってどうして俺が指導をつけてやらねばならないのか、という気分にも時折なるが、主人が強くなれば俺の力も更に増す。
元より契約を結んだ時点で、彼女の膨大な魔力が俺の中に流れ込み、更なる力が溢れている感覚がある。
一を手に入れれば貪欲に千を欲するのが魔族というもの。このまま一年も俺の指導を受けていれば、モナはこの学園でも屈指の召喚術師になれるだろう。アルトゥール・クラウスナーの再来といったところか。
これこそ互いにwin-winの関係というやつだろう。
先行きに満足してから立ち上がる。
何か手伝うことがないか、学園長のところへ聞きに行こうか。あの爺さんは孫の健気で素直な姿を見る度喜んでくれるから、すごく扱いやすい。
「お祖父様、アルトゥールです」
学園長室の扉を叩いて暫く待ったが、返事がない。
「……お祖父様?」
この時間に留守にするとは珍しい。何かあったのだろうか、中に入ってみよう。
「……ああ、アル」
扉に手を掛けたとき、廊下の先から声が聞こえた。
振り返ると学園長がそこにいた。なんだかいつもより小さく感じる。
「お祖父様?何かあったんですか。お疲れのように見えます」
「ああ、うん……。中へ入ろう。あまり大きな声では言えない話だ」
学園長の言葉を聞き、扉を開ける。彼が入ったのを見て後ろ手に扉を閉めると、疲れたしわがれ声で続けた。
「数日前に禁術の書が失くなった話をしただろう」
「はい。……見つかったのですか?」
「一応。……生徒の部屋にあった」
「……盗まれていた、と?」
禁術の書。
ノヴァーリスを創立したのは、戦争で武勲を挙げた大魔導師だった。彼は自らの強大な魔力と魔術をこれ以上利用されないように本として抑え込み、学園にあるという地下堂に封印したという。内容についての情報は知らないが、元より興味もない。
しかしあれを盗み出すとは、この学園の生徒も中々やるじゃないか。
内心で感心しつつも、それを外に出さないように、居た堪れないといった表情を作った。
「では、その学生は?」
「部屋で禁書を回収次第、取り押さえる。……もう拘束されているかもしれん」
言い終わるや否や、深い溜息を吐いた。
生徒が盗んだということで落ち込んでいるのだろうか。それだけには見えない落ち込みようだが。
「お祖父様、少し休まれた方が……。僕が紅茶でもお淹れしましょうか」
「……お前は優しい子だな」
学園長はしわだらけの目元を下げて弱く笑った。この老人は心配になるほど単純で、人がいい。魔族にはいささか毒だ。
「この間、わしが転学の可能性を伝えた生徒がいただろう。フェスタ―くんだ」
近しい名前が出てきて少々面食らうが、何事もなかったように頷く。
「はい。召喚術師クラスの一回生ですね」
「彼女の部屋にあったんだ。……ノヴァーリスの禁書が」
「……は?」
散々猫を被ってきたが、ここでは思わず素の声が出た。
つまり、モナが禁書を盗んだ犯人だと?
「授業でレオナードを召喚したらしい。……わしがプレッシャーをかけて追い詰めてしまったんだろうか。責任を感じざるを得ん……」
わざとらしくさえ感じる人の良さにうんざりしながら、一人考え込む。
既に生徒は拘束してると言っていたか?つまり今、彼女は捕まっていると?
一度話を聞きだせないだろうか。落ち込んでいる様子の学園長に向き合う。
「お祖父様、一度その生徒に僕が会うことは可能ですか?」
「……どうしてだ?」
「同じ学生の身分である僕の方が、話を聞き出すには適しているかもしれません。それに、……僕も、この学園の生徒代表として、責任を感じます」
「アル……」
「行かせてくれますね?」
半ば強引に話を進める。
さて、何が起こったのか調べてみなければ。
最近やっと見つけた使役者……モナは、類い稀な魔力量の持ち主ではあるが、それでもまだ15歳の少女だ。自分の力のコントロールができていないし、あれでは持て余していると言ってもいい。
だからと言ってどうして俺が指導をつけてやらねばならないのか、という気分にも時折なるが、主人が強くなれば俺の力も更に増す。
元より契約を結んだ時点で、彼女の膨大な魔力が俺の中に流れ込み、更なる力が溢れている感覚がある。
一を手に入れれば貪欲に千を欲するのが魔族というもの。このまま一年も俺の指導を受けていれば、モナはこの学園でも屈指の召喚術師になれるだろう。アルトゥール・クラウスナーの再来といったところか。
これこそ互いにwin-winの関係というやつだろう。
先行きに満足してから立ち上がる。
何か手伝うことがないか、学園長のところへ聞きに行こうか。あの爺さんは孫の健気で素直な姿を見る度喜んでくれるから、すごく扱いやすい。
「お祖父様、アルトゥールです」
学園長室の扉を叩いて暫く待ったが、返事がない。
「……お祖父様?」
この時間に留守にするとは珍しい。何かあったのだろうか、中に入ってみよう。
「……ああ、アル」
扉に手を掛けたとき、廊下の先から声が聞こえた。
振り返ると学園長がそこにいた。なんだかいつもより小さく感じる。
「お祖父様?何かあったんですか。お疲れのように見えます」
「ああ、うん……。中へ入ろう。あまり大きな声では言えない話だ」
学園長の言葉を聞き、扉を開ける。彼が入ったのを見て後ろ手に扉を閉めると、疲れたしわがれ声で続けた。
「数日前に禁術の書が失くなった話をしただろう」
「はい。……見つかったのですか?」
「一応。……生徒の部屋にあった」
「……盗まれていた、と?」
禁術の書。
ノヴァーリスを創立したのは、戦争で武勲を挙げた大魔導師だった。彼は自らの強大な魔力と魔術をこれ以上利用されないように本として抑え込み、学園にあるという地下堂に封印したという。内容についての情報は知らないが、元より興味もない。
しかしあれを盗み出すとは、この学園の生徒も中々やるじゃないか。
内心で感心しつつも、それを外に出さないように、居た堪れないといった表情を作った。
「では、その学生は?」
「部屋で禁書を回収次第、取り押さえる。……もう拘束されているかもしれん」
言い終わるや否や、深い溜息を吐いた。
生徒が盗んだということで落ち込んでいるのだろうか。それだけには見えない落ち込みようだが。
「お祖父様、少し休まれた方が……。僕が紅茶でもお淹れしましょうか」
「……お前は優しい子だな」
学園長はしわだらけの目元を下げて弱く笑った。この老人は心配になるほど単純で、人がいい。魔族にはいささか毒だ。
「この間、わしが転学の可能性を伝えた生徒がいただろう。フェスタ―くんだ」
近しい名前が出てきて少々面食らうが、何事もなかったように頷く。
「はい。召喚術師クラスの一回生ですね」
「彼女の部屋にあったんだ。……ノヴァーリスの禁書が」
「……は?」
散々猫を被ってきたが、ここでは思わず素の声が出た。
つまり、モナが禁書を盗んだ犯人だと?
「授業でレオナードを召喚したらしい。……わしがプレッシャーをかけて追い詰めてしまったんだろうか。責任を感じざるを得ん……」
わざとらしくさえ感じる人の良さにうんざりしながら、一人考え込む。
既に生徒は拘束してると言っていたか?つまり今、彼女は捕まっていると?
一度話を聞きだせないだろうか。落ち込んでいる様子の学園長に向き合う。
「お祖父様、一度その生徒に僕が会うことは可能ですか?」
「……どうしてだ?」
「同じ学生の身分である僕の方が、話を聞き出すには適しているかもしれません。それに、……僕も、この学園の生徒代表として、責任を感じます」
「アル……」
「行かせてくれますね?」
半ば強引に話を進める。
さて、何が起こったのか調べてみなければ。
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