時を裂く

彩葉 ちよ

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「まあ、あなたはまず「時空」の魔術の習得に励みなさい。それが最優先よ」
「そうですか」
 そうね、と校長は頷いた。
「魔術士は短命だものね。資料がほとんど残っていないのも事実だわ」
「確かに、少なかったです」
 どこかで水の匂いがした。誰かが豪流の魔術を練習しているのかもしれない。
「特に、「時空の」魔術については「時空」の魔術士にとって当たり前のことだから、なおさら資料が少ないのよ。本能みたいなものなのかしらね」
 独り合点したような校長から、凛は視線を外す。校長室の本棚に目を移してタイトルを黙読する。
「聞いてるの?」
「聞いています」
 校長の方を向き直す。本のタイトルの中になにやら物騒な名前があった。
「校長、ブラッディストとは? 怨霊とは違うんですか?」
『ブラッディストの歴史と脳力』。タイトルにはそう書かれていた。
「あら、凛は知らなかったかしら?」
「はい」
 校長は、いい機会だわ、となにか決意のようなものを目に宿す。
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