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105.とある朝の日常であり……
しおりを挟む翌日。
削られた睡眠時間と魔法の使いすぎで、異常に眠いままいつもの時間に起床。ビキニ美女の添い寝レベルっつーくらい強烈な睡魔の誘惑を振り切って筋トレに励み、ようやく目が覚めてきた。
でも、目は覚めたが、ちょっと昼寝的なことをした方がよさそうだ。ただ眠いだけではなく、疲労が残っている気がする。MPが回復しきっていないせいだと思う。
時間の感覚が適当だからわからんが、昨日の夜遊びは意外と時間が経っていたのかもしれない。
――よし、風呂行くか。
「おはようございます。お風呂の支度ができています」
初日で学習したようで、キーナはもうノックもせず、ドアの向こうで呼びかけるだけだ。そして俺も風呂場に移動すると。……いくら早朝の屋敷内でも、下着姿でうろうろできない。一応バスローブ的なものを羽織っておく。
「おはようございます、お嬢様」
部屋を出れば、一糸乱れぬ完璧なメイド姿のキーナがいた。
「おはよう。しっかり寝た?」
「はい、大丈夫です」
そうか……俺はやっぱ眠いわ。
「ダリアに声を掛けておいて。今日も出るわ」
「え?」
キーナは、明らかに戸惑った。
「……お嬢様、私は詳しい事情はわからないままですが、察するに、お嬢様はダリアに……その、騙されたというか……」
うん。その通りだね! キーナの疑問も戸惑いももっともだと思うね!
「一日待つって言ったじゃない。それまではこれまで通りよ」
これからどうするかを決めるのは、俺じゃなくてダリアベリーだからな。
昨日の男たちに脅迫されているなら、俺たちはフロントフロン家の使用人を守るための行動を起こす必要がある。もし自発的な行動なら、それこそダリアベリーは仲間と相談して決めるだろう。
どうにも腑に落ちないって感じのキーナを置いて、俺は風呂へ向かった。
――昨日の連中の印象も加味しての対応だからな。実際会っていないキーナには説明しても伝わらないだろうし、正直知らなくてもいいだろうと思うし。
特にあの女……ジェスの反応がなぁ。あいつの挙動がどうも忘れられない。
だってあいつ、本当にただの「患者の心配で潰されそうな女の子」だろ。どういう関係でどういう背景があって結局みんな何者なのか、なんて……ちょっと二の次なんだよな。
そこに苦しんでる人がいて、俺はそれを助けられる。本当にそれだけでいい気がするんだよなぁ。
……我ながらすげー甘いとも思うけどな。でも普通の日本人なんてほんとこんなもんだと思うぞ。俺が特別ってわけでもないだろうぜ。
風呂で汗を流し、少し休憩してから朝食だ。
いつも通りの豪華な朝食、アクロママの体調を確認を確認し……今日はちょっといつもと違った。
「今日は客が来る。外出は控えなさい」
と、アクロパパから通達があった。
「お父様、わたし買い物に行きたいのだけれど。午前中だけでいいわ」
買い物があるのは本当だぞ。使った「魔力水」の補充をしたいのだ。……まあそのついでに病人のいる家の前を偶然通ったりなんかするかもしれないが。
「控えなさい。どうしても必要なら使用人に頼みなさい」
おっと。どうやら今日は本当に外出できないようだ。パパ怖いから俺は逆らわないぞ。決して調子に乗らず慎ましくやっていくから。
「誰が来るのですか?」
弟の問いに、パパは席を立ちつつ答えた。
「王家の視察だ。昼前に到着される。昼食を一緒に取るので準備しておきなさい」
え、王家の視察?
……まあそれ自体は珍しくないはずだが。
「急ね」
アクロママは俺と同じことを思ったようだ。そう、そういうのって遅くても数日前にはパパから説明があるものっぽいからな。
「フロントフロン一家が全員揃っている時がいいと打診があった。アクロは来週だが、クレイオルは今週末には学校に戻る予定だからな。ならば早い方がいいだろうと急遽決定した」
あ、弟は俺とは別の学校の寮で生活してるんだよな。そうか、今週帰っちゃうのか。
「今日は自室にいる」
と言い残し、パパは行ってしまった。忙しい人だな。
「お姉様、大好きな外出ができなくて残念でしたね」
おう弟! 姉にイヤミとはいい度胸だな!
「そうね。恥ずかしい弟の顔を見るより楽しいから残念だわ」
ピタ。弟の動きが止まり、俺を睨んでくる。
「…………」
あ? 何見てんだ? やんのか弟。いつでもやってやんぞ。
「……フン」
弟は鼻を鳴らして行ってしまった。……あいつ学校でもあんなんなのか? いろんな意味で心配だわ。弱いし……
「仲がいいわね」
ママ……あの人は結構大物だと思う。
パパのお達しにより、今日は外出ができなくなった。
なので、ママの身体のチェックと『天龍の息吹』を使っておいた。少しだけ熟練度が上がった今なら、違う何かを感じられると期待して。
うん……先天的なものだと病気のイメージの見え方が違うみたいだ。昨晩のじいさんはひどかったが、ママも全身に黒い霧が掛かっているが、身体の中央付近がより濃くなっている。つま先や指先なんかは薄いけどな。
でも不思議なもんだな。
濃度は全然違うのに、やっぱりママの病は重い。完治させるには、昨日のじいさんより強力な『天龍の息吹』が必要みたいだ。あるいは回数な。
こんなことなら体調云々に関わらず、毎日でも掛けとくべきだったな。まあ重ねがけの理屈も熟練度が上がったからわかるようになったことだけどよ。
「アクロ」
「はい」
「わたくしの身体なんて、あなたが気にすることではないわ。わたくしはあなたやクレイオルが元気であるならそれでいいの」
……親の心か。それは本当の娘に言ってやってほしいわ。
「ご心配なく。時間は掛かりそうですが、気にするまでもなく治せそうなので」
「あら。本当?」
それは嬉しいわね、とママは笑った。軽い口調からして信じてねえな。ま、それくらいの反応で充分だわ。
ママの治療を終え自室に引っ込む。
やはり疲れが癒えていないので、少し寝ることにした。
――そして目を覚ました時には、王都からの視察が来ていた。
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