俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風

文字の大きさ
89 / 184

105.とある朝の日常であり……

しおりを挟む






 翌日。
 削られた睡眠時間と魔法の使いすぎで、異常に眠いままいつもの時間に起床。ビキニ美女の添い寝レベルっつーくらい強烈な睡魔の誘惑を振り切って筋トレに励み、ようやく目が覚めてきた。
 でも、目は覚めたが、ちょっと昼寝的なことをした方がよさそうだ。ただ眠いだけではなく、疲労が残っている気がする。MPが回復しきっていないせいだと思う。
 時間の感覚が適当だからわからんが、昨日の夜遊び・・・は意外と時間が経っていたのかもしれない。

 ――よし、風呂行くか。

「おはようございます。お風呂の支度ができています」

 初日で学習したようで、キーナはもうノックもせず、ドアの向こうで呼びかけるだけだ。そして俺も風呂場に移動すると。……いくら早朝の屋敷内でも、下着姿でうろうろできない。一応バスローブ的なものを羽織っておく。

「おはようございます、お嬢様」

 部屋を出れば、一糸乱れぬ完璧なメイド姿のキーナがいた。

「おはよう。しっかり寝た?」
「はい、大丈夫です」

 そうか……俺はやっぱ眠いわ。

「ダリアに声を掛けておいて。今日も出るわ」
「え?」

 キーナは、明らかに戸惑った。

「……お嬢様、私は詳しい事情はわからないままですが、察するに、お嬢様はダリアに……その、騙されたというか……」

 うん。その通りだね! キーナの疑問も戸惑いももっともだと思うね!

「一日待つって言ったじゃない。それまではこれまで通りよ」

 これからどうするかを決めるのは、俺じゃなくてダリアベリーだからな。
 昨日の男たちに脅迫されているなら、俺たちはフロントフロン家の使用人を守るための行動を起こす必要がある。もし自発的な行動なら、それこそダリアベリーは仲間と相談して決めるだろう。
 
 どうにも腑に落ちないって感じのキーナを置いて、俺は風呂へ向かった。

 ――昨日の連中の印象も加味しての対応だからな。実際会っていないキーナには説明しても伝わらないだろうし、正直知らなくてもいいだろうと思うし。
 特にあの女……ジェスの反応がなぁ。あいつの挙動がどうも忘れられない。

 だってあいつ、本当にただの「患者の心配で潰されそうな女の子」だろ。どういう関係でどういう背景があって結局みんな何者なのか、なんて……ちょっと二の次なんだよな。
 そこに苦しんでる人がいて、俺はそれを助けられる。本当にそれだけでいい気がするんだよなぁ。

 ……我ながらすげー甘いとも思うけどな。でも普通の日本人なんてほんとこんなもんだと思うぞ。俺が特別ってわけでもないだろうぜ。




 風呂で汗を流し、少し休憩してから朝食だ。
 いつも通りの豪華な朝食、アクロママの体調を確認を確認し……今日はちょっといつもと違った。

「今日は客が来る。外出は控えなさい」

 と、アクロパパから通達があった。

「お父様、わたし買い物に行きたいのだけれど。午前中だけでいいわ」

 買い物があるのは本当だぞ。使った「魔力水」の補充をしたいのだ。……まあそのついでに病人のいる家の前を偶然通ったりなんかするかもしれないが。

「控えなさい。どうしても必要なら使用人に頼みなさい」

 おっと。どうやら今日は本当に外出できないようだ。パパ怖いから俺は逆らわないぞ。決して調子に乗らず慎ましくやっていくから。

「誰が来るのですか?」

 弟の問いに、パパは席を立ちつつ答えた。

「王家の視察だ。昼前に到着される。昼食を一緒に取るので準備しておきなさい」

 え、王家の視察?
 ……まあそれ自体は珍しくないはずだが。

「急ね」

 アクロママは俺と同じことを思ったようだ。そう、そういうのって遅くても数日前にはパパから説明があるものっぽいからな。

「フロントフロン一家が全員揃っている時がいいと打診があった。アクロは来週だが、クレイオルは今週末には学校に戻る予定だからな。ならば早い方がいいだろうと急遽決定した」

 あ、弟は俺とは別の学校の寮で生活してるんだよな。そうか、今週帰っちゃうのか。

「今日は自室にいる」

 と言い残し、パパは行ってしまった。忙しい人だな。

「お姉様、大好きな外出ができなくて残念でしたね」

 おう弟! 姉にイヤミとはいい度胸だな!

「そうね。恥ずかしい弟の顔を見るより楽しいから残念だわ」

 ピタ。弟の動きが止まり、俺を睨んでくる。

「…………」

 あ? 何見てんだ? やんのか弟。いつでもやってやんぞ。

「……フン」

 弟は鼻を鳴らして行ってしまった。……あいつ学校でもあんなんなのか? いろんな意味で心配だわ。弱いし……

「仲がいいわね」

 ママ……あの人は結構大物だと思う。




 パパのお達しにより、今日は外出ができなくなった。
 なので、ママの身体のチェックと『天龍の息吹エンジェルブレス』を使っておいた。少しだけ熟練度が上がった今なら、違う何かを感じられると期待して。

 うん……先天的なものだと病気のイメージの見え方が違うみたいだ。昨晩のじいさんはひどかったが、ママも全身に黒い霧が掛かっているが、身体の中央付近がより濃くなっている。つま先や指先なんかは薄いけどな。
 でも不思議なもんだな。
 濃度は全然違うのに、やっぱりママの病は重い。完治させるには、昨日のじいさんより強力な『天龍の息吹エンジェルブレス』が必要みたいだ。あるいは回数な。
 
 こんなことなら体調云々に関わらず、毎日でも掛けとくべきだったな。まあ重ねがけの理屈も熟練度が上がったからわかるようになったことだけどよ。

「アクロ」
「はい」
「わたくしの身体なんて、あなたが気にすることではないわ。わたくしはあなたやクレイオルが元気であるならそれでいいの」

 ……親の心か。それは本当の娘に言ってやってほしいわ。

「ご心配なく。時間は掛かりそうですが、気にするまでもなく治せそうなので」
「あら。本当?」

 それは嬉しいわね、とママは笑った。軽い口調からして信じてねえな。ま、それくらいの反応で充分だわ。

 ママの治療を終え自室に引っ込む。
 やはり疲れが癒えていないので、少し寝ることにした。




 ――そして目を覚ました時には、王都からの視察が来ていた。







しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

処理中です...