これだから三次元なんて!

星咲ユキノ

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初めて ※

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心臓の音が煩い。
全力疾走した後みたいに鼓動が主張してくるので、目を閉じて静かに息を吐いた。

「緊張してる?」

耳元で囁かれるとぞくりと体が震える。
耳障りのいい少し高めのその声も、自分を見つめる優しい瞳も何もかもが愛しくてたまらない。

「…少し」

嘘だ。本当はめちゃくちゃ緊張している。
だって、キスしながらベッドに寝かされるのも、優しい手つきで体を撫でられるのも、全てが初めてなのだから。

意地を張ったのがわかったのだろう。
日浦は小さく笑みを零すと、舞の頭を優しく撫でてくれた。

「…大丈夫。嫌がることはしないから。安心して」

その声があまりに優しくて、きゅうっと心臓が締め付けられる。

(ああ、もうどうしようもなく、好き)

吸い寄せられるように彼の頬に両手を当てて、自分から唇を重ねた。

「んっ…ぁ…」

自分でも初めて聞く甘い声に驚く余裕もなく、ただ本能のまま彼の唇に吸い付く。

ちゅ…ちゅ…ちゅ…

もっと深く触れ合いたくて、唇を開くと、するりと舌が侵入してきたので、自分の舌も絡める。
彼の舌が歯の羅列をなぞり、くちゅくちゅと唾液が絡み合う音がした。

(気持ちいい。キスってこんなに気持ちいいの?)

唇が離れてぽーっとしている間に服を脱がされて、あっという間に上下お揃いの水色ブラジャーとショーツだけになる。
恥ずかしくて思わずシーツで隠そうとしたが、すぐに彼に奪われた。

「えっ、あっ…やだっ」
「ダメ。見せて。…ああ、夢にまで見た舞ちゃんの下着姿だ…可愛い…」

うっとりした視線を向けられると、なんだか居心地が悪い。
明るい部屋の中で異性に下着姿を見られるなんて、初めてのことだから緊張してしまう。

「電気、消してよ…」
「やだ。脳内にスクショするから」
「は?」

(この人、何言ってんの?)

「…だめだ、容量が全然足りない。スマホで写真を撮ってもいい?」
「ダメに決まってるでしょ!馬鹿!」
「あー、この返しすら可愛い。まじ天使。夢じゃないかな?舞ちゃん、ちょっと俺を殴ってみて…って、いてっ!ほんとに殴る?」
「恥ずかしいんだから、ふざけるなら服を着るからね!」

ムードも何もあったもんじゃない。
やはり、友人期間が長いと色っぽい空気にはならないものなのか、と思った瞬間に耳をかぷりと甘噛みされた。
くすぐったいような気持ちいいような初めての感覚に、思わず変な声が出る。

「ひゃあっ」
「あは。可愛い声。耳弱いね。いい事知った」
「ちょっと、日浦君!」

さすがにふざけ過ぎだと、注意しようと思った時だった。

「…あのね、舞ちゃん。無理しなくていいからね」
「え?」

急に真剣な口調で言われて、瞬きをする。

「舞ちゃんのその気持ちだけで嬉しいから。怖かったら、今日は無理に最後までしなくていいよ。キスして一緒に寝るだけでも、俺はすごく幸せだから。ね?」
「っ」

(この人は、もう)

じわりと涙が滲む。
おそらく彼は、舞が「処女を貰って欲しい」と言い出した理由に気付いているのだろう。
気付いた上で、ガチガチに緊張している舞のために、さっきまでのふざけた態度をとっていたのだと思う。

日浦と莉愛の過去の事を気にしていないと言ったら嘘になる。
舞だって莉愛に会うまでは、ゆっくり時間をかけてそういう関係になればいいと思っていた。
だけど今日、元カノしか知らない彼の姿を聞かされて、嫉妬してしまった。
日浦を好きだと気付いてから、その瞳に映るのが自分だけならいいのに、という独占欲も芽生えた。
嫉妬に独占欲、初めて感じるどす黒い感情がこの行為のきっかけだったことは確かだ。だけど。

「…違う。無理なんかじゃない。私がしたいの。好きだから。日浦君が、私にとって特別な人だから繋がりたいの。だから、お願い」

焦りや嫉妬だけで望んだことじゃない。
日浦が舞にとって特別な存在だから繋がりたいんだ。

その言葉に、彼は少し困ったように笑った後、優しく舞の頭を撫でた。

「ん、わかった。辛かったら言ってね。途中でも頑張ってやめるから」
「…んっ…」

再びベッドに寝かされて、彼の唇が頬から首筋、肩、腕とだんだん降りていく。

「はぁっ…んん…」

色気を帯びた吐息が自分の口から出るのを聞いて、不思議な気持ちになる。

「日浦君」
「滉大って呼んで。舞ちゃんに、名前で呼んでほしいんだ」

嬉しい。ずっと名前で呼びたかった。でも…。

「…嫌」
「え?」
「他の人と同じ呼び方なんて嫌。…だから私は…『こうくん』って呼ぶ」
「っ!?」

言った瞬間、何故か彼は鼻を抑えて顔を背けた。

「だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃない!可愛すぎて鼻血が出るところだった!どうしてくれんの!」
「知らないよ!そんなの!」

何故、怒られているのだろう。

「違う呼び方がよかった?」
「いや。『こうくん』がいい。『こうくん』でお願いします」
「…じゃ、じゃあそれで。…ひゃあっ」

背中に手を回されたと思ったら、プチンと音がしてブラジャーのホックが外された。
驚くべき早業でブラジャーが引き抜かれたので、露になった胸をとっさに手で隠す。

「ちょっと!日浦君!」
「あれ?こうくんって呼んでくれるんじゃなかったの?」

何でこんなに楽しそうなの?この人!

「こうくん…」
「嬉しい。もう一回呼んで」
「こうく…あっ…」

胸を隠していた舞の手が彼によってやんわりと外されて、大きな手がふにゅりと裸の乳房を揉んだ。
以前、車で偶然手が当たった時とは違う。
明らかに意図的に動かされる両手の動きに、感覚が集中してしまう。

(日浦君の手、熱い。それに、さっきから動きが…)

掌が胸の先端にわざと擦れるような動きに、吐息が零れる。

「…んっ…あ…」
「はー。やわらかい。ずっと揉んでいたい…」

それは勘弁してほしい。

「おっぱい、すごく綺麗だね。ここもピンク色だし、…あ、乳輪にホクロがある。エロいな」

下乳を両手で掬ったり、角度を変えて揉みながら、じっくりと胸を観察されて恥ずかしくなる。

「っ…いちいち言わないで…ああっ!」

悪態をついた途端、予告もなくちゅぷっと右乳首に吸い付かれて、脳天が痺れる。
そのまま左乳首は指の先でカリカリ擦られて、口から甘い声が漏れた。

「んっ…あっ…」

(なにこれ…すごく気持ちいい)

舞だって自慰の経験くらいはあるが、その時とは全然違う。
大好きな人の手で触れられることが、こんなに気持ちがいいなんて知らなかった。
ふわふわした感覚にされるがままになっていると、動きを止めた彼が嬉しそうに言った。

「乳首、気持ちいい?すごく可愛い」
「…も…やだぁ…」

見透かされたような笑顔に、羞恥と快感で涙が出てくる。

口では嫌だと言いつつ、本当は嫌ではない感情があることを、舞はこの時に初めて知った。
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