樹上の未来録(樹上都市 ~スーパー・プラントの冒険~改題)

Toshiaki・U

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23 突入、特殊部隊

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 普段は研究員が樹冠を観察するための全長四〇メートルの飛行船は、下部に突き出したゴンドラ内の照明を完全に消し、熱帯雲霧林の樹冠の連なりのすぐ上をゆったりと進み、闇の中に溶け込んでいる。シード・バンクの炎上が遠くに望まれるが、ここまで船体を照らし出すほどの明るさはない。樹冠の下からは、木々の葉に阻まれ、船体は容易には視認できない。
 暗視ゴーグルをかけたマイケル青年が左側の操縦席に座り、車椅子のように座席脇に取り付けられた舵(だ)輪(りん)を前後に回して高さを調整し、左右のペダルで向きを微妙に変えつつ、丸太ロッジの明かりを認めると、プロペラ・エンジンを停止した。
 マイケル青年の右側の席には特殊迷彩服に身を包んだ特殊部隊員が座っており、ひざの上に置いたノート・パソコンの画面上の仮想地図に見入っている。基地局を経由しない電子センサーの電気信号が直接ノート・パソコンに順調に届いており、飛行船の現在地、シード・バンクの所在地、丸太ロッジの場所、林道のルートとともに、異常なデータの発生個所が丸い点で仮想地図上にリアルタイムで描き出される。
 「状況は?」 マイケル青年が訊く。
 「はっ、シード・バンクに光点が一〇個ほど向かっています。おそらく俺たちの同僚の警官たちでしょう。一方、丸太ロッジに向かう光点が二つ、まもなく真下を通過します」
 特殊部隊員が画面を指差す。
 「二つ? 少ないな。でも、警官と鉢合わせしないためとはいえ、こんな道のない林の中を、ご苦労なこったね」
 「おそらく敵の先発部隊は、丸太ロッジのすぐ近くの藪(やぶ)の中で待機していると思われます。三、四人はいるんじゃないでしょうか。丸太ロッジの近くには電子センサーがないので、正確にはわかりません。この二人と合流後、突入でしょう」
 「いずれにせよ、行動開始だ」
 ノート・パソコンを見ていた特殊部隊員が右手を横に伸ばし、親指を下向きに突き出したあと、顔の横で人差指と中指を立てると、人差指で下を指し、次いで握りこぶしを顔の横で作って、そのこぶしをひじごと下げる。敵が二人、方向は真下、ただちに攻撃せよ、ということを、後部に乗り組んでいる特殊部隊員三人にハンド・シグナルで伝えたのだ。
 「あれを使うの? 優しいというか、悪趣味というか」とマイケル青年。
 「ええ、トルトゥゲーロ自然保護区でクロコダイルを捕獲するのに使う麻酔銃です。あなたのボスのご要望で、何やら『この神聖な研究施設を汚い血で汚すな』と。あの銃で肩か腰を狙うことになります」
 ゴンドラの左右の窓から、暗視ゴーグルを付けた特殊部隊員が一人ずつ身を乗り出し、真下に麻酔銃の狙いを定める。木々の枝葉の隙間から目標が見え隠れして、狙いづらい様子だ。と、風を切るような発射音が二つ。すぐに身を引く。しばらくして三人目の特殊部隊員が慎重に動いて、暗視用双眼鏡で真下を観察する。
 「ターゲット二つに命中!」
 特殊部隊員がひざに乗せているノート・パソコンにマイケル青年がのぞき込む。画面に映し出された光点の動きが徐々に遅くなり、ふらふらぐらついたかと思うと、完全に止まった。
 「次は、アーサの番だ。今の動き、ちゃんとパソコン画面で見てたか。室内照明が外に漏れっぱなしだと、こっちは目立って近づけないぞ。あっちも暗くないと、できない準備があるはずだ」
 マイケル青年が通常の双眼鏡で丸太ロッジを観察する。すぐに丸太ロッジの明かりが消えた。
 「じゃあ、船を前に出すぞ。突入時には、ビーズが連らなったストリング・カーテンに注意を。あと、強力なフラッシュ・ライトがあるので、暗視ゴーグルは外したほうがいい」
 マイケル青年の右に座る特殊部隊員がうなずく。マイケルはエンジンを始動すると、駆動音が大きく響かないように、ゆっくりと船体が進むよう、左右のペダルを慎重に踏み込む。

 丸太ロッジの前の林道を挟んだ熱帯雲霧林の木立の暗い茂みに、迷彩服を着た数人の人影が、姿勢を低くし、身を潜めている。
 「おいっ、後続の二人はどうした? 予定の集合時刻を過ぎてるぞ」 
 「爆破には、成功してます。が、こちらの無線の呼びかけに応じません。こっちへ向かってるはずですが、警官を撒くのに手間取ってるんじゃないですか、キャプテン」
 「キャプテン、相手はソフト・ターゲット、無防備な女が三人だけ。制圧に閃光(せんこう)手榴弾も、音響手榴弾も、催涙弾も要りゃしません。こちとら、完全武装の四人です。後続二人がいなくても、楽勝でしょう。突入して、『手を挙げろ』 これで、任務完了ですぜ」
 「…確かに、そうだが。今、窓の明かりが消えたな。妙に消灯が早くないか? 爆破の音が丸太の厚みで聞こえなかったとしても、もう寝るのか? 普段の動きとしておかしい」
 「どうせ、来場客との応対で疲れたとか、明日の予定が朝早いとか、『今日撮ったビデオを観る?』で部屋を暗くしたとか、そんなんじゃないですかい、キャプテン」
 キャプテンと呼ばれる隻眼(せきがん)の兵士は、左手の腕時計のボタンを押して蛍光させ、時刻を確認する。もたもたしていると、せっかくシード・バンクの施設に引き付けた警官たちがこちらにやって来る可能性が高まる。
 「窓は狭く、二重で、突破が厄介だ。正面ドアから突入する。階段のロープやチェーンを軍用ペンチで切断しながら、ドアを破って突入だ。昼間の下見では、障害物は何もないな?」
 「見学者を装って、コーヒー一杯もらいましたが、入り口のビーズを使ったストリング・カーテンが目障りな以外は、テーブルが四つあるだけで、ただのカナディアン風ロッジです。左側にキッチン、奥に簡易宿泊室、シャワー室があるようです。一カ所、裏口がありますが、草薮が近くて、接近すると、ガサゴソと音を聞かれる危険があります。突破するなら、正面ドアからですぜ」
 「了解だ。じゃ、予定通り、ここに来る前にセットした基準時刻、二分後から作戦を開始する。以後、ハンド・シグナル以外は、使うな」
 隻眼の兵士以外の三人が右手を肩ぐらいの高さに上げ、人差指と親指で輪を作ってみせる。皆、黒い目出し帽をかぶり、素早く暗視ゴーグルを装着した。
 銃身の長いライフルを袈裟(けさ)懸(が)けに担いだ一人の兵士が、林道を野生動物のような低い姿勢で鋭く突っ切り、正面ドアに続く階段に取り付く。左右の手すりに何本も渡されたチェーンやロープのそれぞれ右端を、右手に握った大型のペンチで順々に切断し、左手でチェーンやロープを階段の床に音を立てないように慎重に置いていく。時折、首をかしげる。チェーンよりロープの方が切断に時間がかかり、しかもペンチの刃がこぼれていくのを、いぶかっているようだ。階段の最上段に達し、正面ドア前のテラスに立ち、すぐに左に動いてライフルを右腕に構えると、ドア左脇の壁を背にして立ち、すぐに左手の動きで残り三人に合図を送る。
 狭い場所での近接戦で邪魔にならないよう銃身を半分に切ったショットガンを抱えた兵士が階段を用心深く登り、正面ドア右脇の壁を背にして立つ。
 隻眼の兵士はカービン銃を上向きに右腕で抱えたまま、階段を足音を立てずに上がり、ドア右脇でショットガンを持った兵士の右側に滑り込む。
 もう一人の兵士は、カービン銃を下向きに構えながら、階段の登り口の手すりの左側の影に隠れてしゃがむ。この兵士は、林道の左右を見張る役のようだ。
 隻眼の兵士が左手を大きく開いて挙げ、親指から指を一本ずつ折り曲げてカウントダウンを仲間の兵士に伝える。四、三、二、一。こぶしを握った左腕を、力強く下げる。
 ショットガンを構えた兵士がドアの斜め右からノブに射撃を放った。射撃音とともに、激しく火花が飛び散る。ドアを素早く引いて開ける。点灯させた小型フラッシュ・ライトを銃身に取り付けた銃器を抱えた二人の兵士が、暗闇での同士討ちを避けるため、銃身を平行に構えて、部屋の奥に向けて入り口を突き進む。
 二人とも、ビーズが連らなるストリング・カーテンを銃身の先で払おうとするや、いきなり両肩を押し戻される感覚を味わった。互いに暗視ゴーグル越しに目を見合わす。
 ストリング(縄)に銃を絡め取られたっ?!
 いくら銃身の先を振ろうと、体重をかけて下げようと試みても、ストリングから離れない。上下に振れば振るほど、何本ものストリングの先が銃身にへばり付く。瞬間接着剤? いや、何だ?! これは! 
 ストリングの先にある固形物を銃身から引きはがそうと、二人が左手を銃身の先に手を伸ばすが、びくともしない。ならばと、ショットガンの兵士が左手で軍用ペンチを使ってストリングをねじ切りにかかるが、さらに刃こぼれが進んでいく。昼のストリング・カーテンと材質が違う?
 と、強烈な閃光が真正面から襲い、脳天へと激痛が駆け抜けた。
 「うががっ!!」
 二人の兵士は、思わず銃器をストリングにぶら下げたまま、両手で暗視ゴーグルをもぎ取って床に投げ捨てる。数百メートル、さらに二キロ近く先まで届くような強力な光度を持つフラッシュ・ライトの照明を、テーブルや戸口の影に隠れた娘たちから同時に浴びせられたのだった。それが暗視ゴーグルによって何倍にも増幅された。二人の兵士は、両手で両目を押さえて、床の上に崩れ落ちた。
 フラッシュ・ライトは、数十秒で消えた。
 隻眼の兵士が仕方なく口を開いて、「どうした?!」と呼びかける。「目、目が見えない!」と悲痛な声が返って来た。
 右目にアイパッチを付けた隻眼の兵士は、暗視ゴーグルの位置を額にずらし、階段の左側の手すりの外に控えている兵士に左手で「着いて来い」という身振りを示すと、ストリング・カーテンに無様にぶら下がった二丁の銃器に頭をぶつけないよう姿勢を低くし、カービン銃を腰より下に構えて、入り口を進む。
 ストリング・カーテンをやり過ごして、室内を見るためカービン銃の銃身の先に装着した小型フラッシュ・ライトを点灯させ、水平に構えた瞬間、がちがちっと銃身に硬い固形物が吸い付いたのに気付いた。部屋を仕切るように逆V字型にしつらえられたストリング・カーテンが何枚も降ろされていて、その一枚に引っかかったのだ。
 「ちっ!」
 またも、昼間の日差しを超える強力なフラッシュ・ライトの閃光が襲った。隻眼の兵士は、用心していたので、直前に左目を閉じたので、直撃が避けられた。床の上の二人の兵士が、「もうよせ!」と言って、うずくまっている。
 部屋の奥をどたどたと数人が走り去っていく気配がする。娘たちが強力なフラッシュ・ライトを点灯させたままテーブルに置いて、そのまま裏口から逃げだすつもりだとすぐに知れた。
 隻眼の兵士が、宙づりのカービン銃を捨て置き、目を閉じたまま首を左右に振って、最も明るいフラッシュ・ライトが置かれていると思われるテーブルににじり寄り、テーブルごとひっくり返すと、上に乗った食器の割れる派手な音とともに、この照明は消えた。
 大きな音に驚いた娘たちの悲鳴が聞こえる。
 その悲鳴のする方向を頼りに、ストリング・カーテンを何枚かかき分けながら奥へ進むと、四つのテーブルが置かれた部屋から漏れ出る照明が、三人の娘が固まってたたずむ裏出口付近をいい具合に照らしている。隻眼の兵士は、身を躍らせて一気に間合いを詰める。
 最も若い東洋人の娘の手を引いて裏出口のドアから飛び出して行ったのは、暗がりの中の後ろ姿で顔が見えず、事前情報でも名前が伝わっていないが、この施設に詳しい者。そして今、長い黒髪をそよがせて、一瞬振り向いてこちらを見て、まさに裏出口に突っ込もうとする者……。
 外から、「ヒロコ、急いで!」という甲高い声が伝わる。
 ビンゴだ! 隻眼の兵士の脳内にアドレナリンが走る。
 「おい、待て!」 隻眼の兵士が吠える。
 ヒロコと呼ばれる東洋の女性が、命乞いをするように両手を前に突き出して、後ずさりする。窮地に追い込まれた女のとる典型的な動作だ。もらった!
 女性がやや左手を下げて半身になって、左肩をやや後ろに引いた。利き腕の右手を押さえにかかろうと、隻眼の兵士が右手でつかみに行く。と、その東洋人の女性が視界から消えた、ように隻眼の兵士には感じられた。
 くそっ、アイパッチを付けた右目の死角に入られたっ! 
 隻眼の兵士のすぐ右側に、高島裕子が左足に重心を置き、右足を後ろに引いた姿勢で立っている。兵士の伸ばした右手の甲の真ん中に裕子はすでに左手の親指を置き、がっしりと親指側から包み込むように男の右手をつかんでいる。案の定、男は踏み込んできた勢いで、前のめりになる。裕子が左手を素早く目線まで上げると、ねじりが生じ、男の右手首、ひじから肩にかけて痛みが走る。裕子は、つかんだ左手に自分の右手をしっかり添え、両手に腰から体重をかけ、左足を後ろに引いて、体全体を急速に左回転させる。
 「えいっ!」
 これで右手を差し出した男の力が、左回転のうねりに転換された。関節の痛みを避けたい本能で、男は一瞬、宙に身を躍らせ、右肩を軸に横転し、床に肩から倒れ込んで転げる。男が女の右手を取りにいってから、たった三秒。そよいだ裕子の長い髪が、ジャージを着た背中にゆっくりと舞い降りる。
 ここで裕子は中腰の姿勢に移るが、男の右手を離していない。転げてうつ伏せになった男の右手首をねじったまま両手でつかんでいて、床から右腕を垂直に立てさせ、中腰になって体全体の体重を徐々にかけながら、男の肩甲骨のほうに体を傾けて肩に圧迫を加えていく。隻眼の兵士のねじ上げられた右肩には、関節が外れんばかりの激痛が走っている。
 「いっ、痛たたっ! ど、どういうことだっ!」
 「私、高島裕子、こう見えて、合気道二段。今の技は、突きを入り身でかわしてからの小手返し。うまく決まったわ。毎日、特殊なピペットを左右の手で持ち替えて、分注作業を何百回もこなしてるから、握力は人一倍強いのよ」
 まもなく、「POLICIA」の白い文字が入った黒い防弾チョッキを身に付けた武装警官が二人、それぞれM―一六ライフルを構えて、正面の入り口ドアから室内に飛び込んできた。一人がすぐに隻眼の兵士の後頭部に銃口を押し当てる。もう片方の武装警官が裕子に目で合図を送りながら、隻眼の兵士のねじ上げられた右腕に手錠をかける。マイケル青年が操縦する飛行船からロープを降ろして懸垂降下して来たのだ。もう一人、外にいる警官は、ドアノブへの射撃が起きたとほぼ同時に、飛行船のゴンドラから麻酔銃で階段脇の兵士を仕留めていて、今、懸垂降下して駆け付け、うつらうつら眠りかけた兵士の両手に手錠をかけている。
 丸太ロッジの中にいる者たちに、外から大勢の男たちの怒号が聞こえてきた。炎上するシード・バンクから警官隊が戻って来たようだ。研究管理棟「生物学ステーション」の建つ方向から、そして東側の出入り口のほうからも、けたたましいサイレンの響きがいくつか重なって聞こえてくる。パトカーが何台か急行して来たようだ。南側の林道の先の出入り口の方角からは、何台もの消防車、救急車のサイレンが聞こえてくる。
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