3 / 16
第一章【終わりの始まり】
第3話 宥子のステータスと久々の帰還
しおりを挟む「ただいまー」
間の抜けた宥子の声が玄関から響いた。
私は何気なく顔を出し――そして固まる。
「……は?」
全身、真っ赤。
頭からつま先まで、血糊をぶちまけたみたいな惨状で宥子が立っていた。
痛がる様子はない。つまり返り血だ。
ホラーである。
「お帰りぃー……って何その格好わっ!!」
第一声がそれになったのは仕方ないと思う。
洗濯の心配が先に来たのは、生活力の証だ。
血って落ちる?
酸素系漂白剤でいける?
あれオーダーメイドなんだけど?
私が高速で家計と染み抜き工程を計算していると、
「ボス戦してきた。」
とんでもない爆弾発言が投下された。
「……お前、レベル1じゃなかったのか?」
「何かロックオンされたべ。」
へらへら笑うな。
私は無言で宥子の頭を叩いた。
「そういう問題じゃないんだよ!! てかその服!!」
私は血塗れのシャツを指差す。
「二万二千八百三十二円!! 一点物!! 既製品じゃない!! 作者亡くなってて再注文不可!!」
叫ぶ私に、宥子は唇を尖らせる。
「ちょっとは私の心配してくれても良いじゃん。」
じと目。
私は即答した。
「殺しても死ななそうな宥子より、服の方が貴重。」
姉、撃沈《げきちん》。
「……ひど。」
「さっさと風呂入れ。」
しっしと追い払う。
しょんぼりと浴室へ向かう背中を見送り、私はため息をついた。
着替え持っていってないじゃん。
私はジャージとバスタオルを脱衣所へ置く。
――愛用の草臥れジャージ。
異世界で目立つだろうが、どうせ血塗れになるならそれでいい。
◇
私はキッチンに立つ。
本日の献立は、対宥子用制裁メニュー。
ナスとピーマンとカブの味噌炒め。
人参ピーマンツナサラダ。
豚しゃぶピーマン梅肉添え。
ピーマン三連撃。
苦味の暴力。
「心配料だ。」
風呂上がりの宥子がビール片手にリビングで寛いでいる。
「あー美味いわぁ。」
完全におっさんがログインしている。
半透明のステータスボードを操作中。
私は背後に回る。
「うおっ!? 背後に立つなよ!」
「塩と砂糖と胡椒、補充した?」
「RPG定番の金策か!」
財布を掴み、速攻で買い出しへ行く姉。
学習が早い。
◇
戻ってきた宥子は大量の砂糖や香辛料を瓶に詰め替え始めた。
料理中のキッチンでやるな。
「ご飯できたよー」
ウキウキ着席した姉は、テーブルを見て崩れ落ちた。
「酷い!! 私が食べられるの米だけじゃねーか!!」
「お残し厳禁。」
宣言すると、涙を浮かべながらピーマンを口へ運ぶ。
そこまで嫌か。
美味しいのに。
ちなみに宥子は料理禁止。
何故なら新鮮な食材でも食中毒を生み出す才能の持ち主だからだ。ある意味ギフト。
◇
「で、今のステータスどうなってんの?」
「ちょい待ち。ステータスオープン!」
無防備に公開する姉。
スキル横の数値が0。
「PTで取っても熟練度0なら意味なくない?」
「だよねぇ……。」
私は顎に手を当てる。
「熟練度もPTで上げられるんじゃない?」
ダメ元の裏技。
宥子が隠密をタップ。
0/100。
100PT投入。
隠密1へ変化。
「ほら。」
私、ドヤ顔。
「100PT消費とか糞ゲー!」
「通用しただけマシ。隠密、隠蔽、索敵優先。」
「魔法じゃなくて?」
「加護持ちは目立つ。偽装しろ。低レベルは背後一撃必殺。」
理詰めで説得。
姉、納得。
◇
食後、ステータス調整。
契約∞。
「∞って何。」
壊れ性能。
PTが尽きるまで振り分け、最終結果は――
---------STATUS---------
名前:ヒロコ(琴陵 宥子)
種族:人族/異世界人
レベル:30
職業:魔物使い
年齢:25歳
体力:73/125
魔力:200/200
筋力:85
防御:63
知能:108
速度:60
運 :600
■装備:ジャージ
■スキル:縁結び・契約∞・剣術2・索敵7・隠ぺい7・隠密7・魔力操作1・初級魔法1[全属性]・生活魔法1
■ギフト:全言語能力最適化・アイテムボックス・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:なし
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
■ボーナスポイント:70pt
--------------
「……微妙。」
ソロは厳しい。
「死なないと良いな……。」
「ほんとそれ。」
邪神製MMO世界。
上位互換スキルへの進化はあるはず。
だが姉がそこまで理解しているかは怪しい。
翌朝。
作り置きのご飯が全滅していた。
「……全部持ってったな。」
私は静かに殺意を覚える。
そして決意した。
「刀、いるな。」
私は上着を羽織り、骨董店へ向かった。
神に喧嘩を売るなら、こちらも本気だ。
双子の異世界攻略。
次の一手は、刃である。
0
あなたにおすすめの小説
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。
クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!
悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪
naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。
「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」
そして、目的地まで運ばれて着いてみると………
「はて?修道院がありませんわ?」
why!?
えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって?
どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!!
※ジャンルをファンタジーに変更しました。
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる