琴陵姉妹の異世界日記

momo

文字の大きさ
6 / 16
第一章【終わりの始まり】

第6話 悪魔が金をむしり取れと囁いた

しおりを挟む
 宥子ひろこ異世界サイエスへ送り出してからというもの、私の生活は妙に充実していた。

 執筆。
 新装備の設計。
 サイエスでも違和感なく着られる衣装制作。

 そして——兵站強化。

「……ふふ。」

 机の上に並ぶ試作品を眺めながら、私は満足げに頷く。

 新装備は投擲型の爆裂道具。
 軽量・簡易・扱いやすさ重視。威力は調整済み。

(あくまで“保険”よ、保険)

 過剰戦力?
 違う。合理性だ。

 こうして私は、姉が帰るまでの時間を有効活用していた——はずなのだが。

 一週間。

 ……帰ってこない。

「おい。」

 二週間目突入。

 音沙汰なし。

 生死は心配していない。あいつはゴキブリ並みにしぶとい。

 だが。

(何かやらかしてるな、これ)

 食卓を見下ろし、私は深いため息をつく。

「同じ食事は飽きる……」

 二人分作っては、一人で食べる。

 翌日も同じメニュー。

 結果、私の胃袋が犠牲になる。

 腹立たしい。

 気分転換も兼ねて、私は外出を決意した。

 行き先は真珠専門店、御木本みきもと

 予算は百万円。

(サイエスに養殖技術はないはず)

 粒の揃った真珠は、希少性が高い可能性大。

 投資である。

 ◇

 タクシーで神戸本店へ。

 フォーマルドレス着用。戦闘服ではない。

 接客は“装備”で変わる。

「いらっしゃいませ。」

 完璧なお辞儀。

「予算百万円で、ネックレス・イヤリング・指輪のセットを。」

 店員は優雅に頷いた。

 案内されたソファは柔らかく、ハーブティまで出る。

(……悪くない)

 十分後、三セットが運ばれてきた。

 淡いベージュ。
 純白。
 そして黒真珠。

「どれも綺麗ね。」

 黒は賭け。
 無難は白。

「当店では白が人気です。」

 即決。

「では白で。」

 会計。

 98万3千216円。

(痛い)

 だが未来への布石だ。

 姉よ、稼げ。

 本気で稼げ。

 ◇

 帰宅すると、十二日目にしてようやく姉がいた。

「お帰りー」

「ただいま。てかこの馬鹿姉!!」

 アイアンクロー発動。

「痛い痛い痛い!!」

「何が一週間だ! 十二日だ!」

 作り置きが無駄になった恨みを込めて締める。

「事情があるんだって!」

 事情?
 信用ゼロ。

 とりあえず唐揚げを与える。

 十五時に夕飯は作らん。

 ◇

 そして事件は起きた。

 ショルダーバッグから顔を出す、もちもち桜色物体。

「ギャーーーーーー可愛い!!!」

 掌に乗せ、頬擦り。

 極上の弾力。

「……さっきの悲鳴は何?」

 血相を変えた宥子ひろこ登場。

「スライム? 超可愛い!」

「ヒールベビースライム。餌付けしたら契約テイムされた。」

 ……さすが運600。

「甘いの好き?」

 クッキー投入。

 ぷるぷる震えながら食べる姿。

(正義)

 可愛いは正義。

 姉の唐揚げ?
 後回し。

 ビール?
 発泡酒で我慢。

 節約は戦略だ。

 ◇

「サクラを契約テイムした時、感情流れ込んだ。でも蛇達からは何も感じない。」

 ケージを見る姉。

 二匹は無視。

「嫌われてるんじゃない?」

 私も数日無視されている。

 ざまあ。

 ◇

 翌朝。

 いつまでも寝ている姉の部屋へ突撃。

「何時まで寝てるんじゃボケーーーーー!!」

 腰へダイブ。

「グギャッ!!」

 起床成功。

「サクラ出しな。」

 無言でお手してきたので頭を鷲掴む。

 即提出。

 うむ、素直。

 ◇

 リビングで今後の戦略を練る。

 サイエスで安定収入を得るには専門技能が必要。

(化粧品……ありだな)

 理科実験好きだった過去を思い出す。

 化粧水、石鹸。

 スキル派生の可能性。

 ポイント振りも視野。

 だが。

 その前に——

「ステータス確認。」

 現状把握なくして戦略なし。

 姉がどこまで成長しているのか。

 運600は伊達か偶然か。

 自称神の盤面を崩すため。

 私達は今日も準備する。

 前線は姉。
 後方は私。

 兵站が崩れぬ限り、私達は負けない。

 さて——

 まずは、宥子ひろこのステータスオープンだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。 クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!

悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft
ファンタジー
シオン・アクエリアス公爵令嬢は転生者であった。そして、同じく転生者であるヒロインに負けて、北方にある辺境の国内で1番厳しいと呼ばれる修道院へ送られる事となった。 「きぃーーーー!!!!!私は負けておりませんわ!イベントの強制力に負けたのですわ!覚えてらっしゃいーーーー!!!!!」 そして、目的地まで運ばれて着いてみると……… 「はて?修道院がありませんわ?」 why!? えっ、領主が修道院や孤児院が無いのにあると言って、不正に補助金を着服しているって? どこの現代社会でもある不正をしてんのよーーーーー!!!!!! ※ジャンルをファンタジーに変更しました。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...