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第260話 竜、妙な貴族と出会う
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「む、なんだ貴様。見たところ平民のようだが、私をクルメノス当主、ダニー・クルメノスと知っているのか?」
「知らん。だが、ウチの娘が泣いているところを見過ごすわけにはいかん」
「う、こいつ……父上、お気をつけください」
ハバラが駆けつけてリコットを抱っこしあやしながら初老の男性を睨みつける。
その迫力に隣にいた息子らしき男が冷や汗を流す。
「……ふん、いきなり我々の前に現れて足を止めてきたから怒鳴っただけだ。これから皇帝陛下に謁見というところで邪魔をしおってからに」
「怒鳴ることか……!」
「誰に向かって口を聞いておるか!」
「うあああああん!」
「あーい!」
「あうー……ふああああん……」
初老の男性とハバラが言い争いを始めようとしたその時、再びリコットが大泣きをした。リヒトは太鼓を鳴らして気を引くが怒りの気配にかき消されていた。
やがてメイドの抱いている赤ちゃん、ライルも泣き出した。
「キーラ様、お止めいただけないでしょうか? ライル様が……」
「それどころじゃない。生意気なこいつをどうにかするのが先だ!」
「はいはい、そこまでだよ君たち」
メイドがダニーの息子であるキーラに声をかけるが、こちらも激昂して取り付く島も無かった。
さらに続くかと思われたが、駆け付けて来たアトレオンが手を叩いて場を沈めた。
「アトレオン様……! 申し訳ございません。この者が我々に激昂するもので……」
「そうです。処罰をお願いしたい」
「ふむ、彼は僕や父上の客人だ。遠くから見ていたけど、リヒト君とリコットちゃんがその子を遊ぼうとしただけじゃないかな? それを怒鳴りつけるなんて大人げない」
「うんうん」
「ぐ……」
ダニーとキーラの言葉にアトレオンは手を広げて首を振る。ダルを抱っこしたユリが隣で頷く。
「ワシはディランという。息子がすまなかったな」
「なんだ? このでかいやつの父親か?」
「このハバラと狼に乗っておる子がそうじゃ。リヒト、急に行くと皆が驚くからいかんぞ。リコットが泣いてしまったじゃろう」
「あい」
「ハバラもいきなり怒りのみで対応してはならんぞ」
「すみません父さん」
「ふん、分かればいい」
そこへディランがやってきてダニー達へ謝罪し、二人を窘めた。さらにアベニールもこの場へ来て話し出す。
「とはいえ、ダニー侯爵。この方たちはこの国へ来る予定であるドラゴンさんです。クリニヒト王国からの客人でもある。ディラン殿の言葉ではないが、いきなり頭ごなしに激昂するのは良くありませんよ」
「アベニール王子……承知しました。悪かったな坊主」
「あーう」
「きゃーう♪」
「あー♪」
流石に王子二人に窘められては分が悪いと思ったか、キーラは仏頂面のまま頭を下げた。リヒトはまだ泣いていたリコットとライルへ太鼓を鳴らし気を引いた。
「あら、泣き止みましたね。凄いわ……」
「ちゃんと世話をしろ、ロゼ。幸運を呼ぶ子だぞ、こちらの方が凄い」
「……はい」
そこでロゼと呼ばれたメイドがリヒトに感嘆の声を上げる。しかしキーラはライルを幸運の子と言い、しっかり面倒見て泣かせるなと不機嫌に言う。
「幸運の子とはいいですね! あ、ドラゴンの一人でトワイトと言います」
「これはお美しい。そう、このライルは我がクルメノス家に幸運をもたらす子、そこらの赤ん坊とは違うのだ」
「いいですね。ウチのリヒトは忌み子とされて、山に捨てられていたんですよ。酷い話です。でもこうやって私達が拾って元気に育っているから私達としてはこの子が幸運の子ですよ♪」
「あーい♪」
「あー」
トワイトはリヒトの頭を撫でてから微笑む。リヒトは満面の笑みで手を上げると、ライルがリヒトに手を伸ばしているのが見えた。
「……!? さ、左様か。素性はわからない子を育てている、と」
「両親も分からないのですかな?」
「うむ。大雨の日に見つけたのじゃ。手紙はあったが、名も無いし素性も不明。死なすには忍びないからうちの子にしたのじゃよ。そういえばメイドさんに抱っこさせたままじゃがいいのか」
「そうですか……ウチではきちんとあやしていますよ。おっと、我々は謁見に来ていたのでした。それではこれで……」
「うー」
「あーい」
ディランがそう口にすると、ダニーとキーラはそそくさとこの場を去って行った。
ライルはリヒトと遊びたそうだったが、すぐにキーラがロザの手を引いて城の中へと消えて行った。
「すみません我が国の貴族が。あれでも侯爵家で財力と口を出す権限が強いので、我々が見ていないところで威圧的な態度をとっているようです」
「ああ、大丈夫です。こちらもリコットが泣いて焦ってしまいました」
「でも、横柄な人達でしたね! ライル君でしたっけ? あの子ちゃんと育つかしら」
「わほぉん」
アベニールがハバラ達へ謝罪するが、落ち着いた彼も悪かったととりなしていた。
だが、ユリはリヒトが遊ぼうとしただけなのに怒られたのが納得がいかないらしく、口を尖らせていた。
「僕達みたいな平民だとそういう風に一蹴されるのは分かっているだろユリ」
「うーん、ヒューシの言うことも分かるけど、それはそれじゃない?」
「はは、まあケチがついて悪かったね。お詫びにケーキでも用意しよう。庭でお茶会と行こうじゃないか」
ユリが憤慨する中、兄のヒューシが苦笑していた。アトレオンはユリに賛同してお詫びをすると言う。
「謁見には行かないのか?」
「兄上だけで頼むよ。僕は客人の世話で手いっぱいだからねえ」
「我が弟ながらちゃっかりしているな……」
アベニールはそう言ってダニー達の後を追うのだった。
◇ ◆ ◇
「……あれは、あの子はまさか捨てたライルの兄では……?」
「言うなキーラ。ライルに兄弟は居ない。産んだ娘は消息不明。お前の兄である父親のキルシュは病死している。双子だということは私達しか知らんことだ」
「そう、ですね。誰も口を割らなければ」
「……」
キーラはロザを見ながらそう呟く――
「知らん。だが、ウチの娘が泣いているところを見過ごすわけにはいかん」
「う、こいつ……父上、お気をつけください」
ハバラが駆けつけてリコットを抱っこしあやしながら初老の男性を睨みつける。
その迫力に隣にいた息子らしき男が冷や汗を流す。
「……ふん、いきなり我々の前に現れて足を止めてきたから怒鳴っただけだ。これから皇帝陛下に謁見というところで邪魔をしおってからに」
「怒鳴ることか……!」
「誰に向かって口を聞いておるか!」
「うあああああん!」
「あーい!」
「あうー……ふああああん……」
初老の男性とハバラが言い争いを始めようとしたその時、再びリコットが大泣きをした。リヒトは太鼓を鳴らして気を引くが怒りの気配にかき消されていた。
やがてメイドの抱いている赤ちゃん、ライルも泣き出した。
「キーラ様、お止めいただけないでしょうか? ライル様が……」
「それどころじゃない。生意気なこいつをどうにかするのが先だ!」
「はいはい、そこまでだよ君たち」
メイドがダニーの息子であるキーラに声をかけるが、こちらも激昂して取り付く島も無かった。
さらに続くかと思われたが、駆け付けて来たアトレオンが手を叩いて場を沈めた。
「アトレオン様……! 申し訳ございません。この者が我々に激昂するもので……」
「そうです。処罰をお願いしたい」
「ふむ、彼は僕や父上の客人だ。遠くから見ていたけど、リヒト君とリコットちゃんがその子を遊ぼうとしただけじゃないかな? それを怒鳴りつけるなんて大人げない」
「うんうん」
「ぐ……」
ダニーとキーラの言葉にアトレオンは手を広げて首を振る。ダルを抱っこしたユリが隣で頷く。
「ワシはディランという。息子がすまなかったな」
「なんだ? このでかいやつの父親か?」
「このハバラと狼に乗っておる子がそうじゃ。リヒト、急に行くと皆が驚くからいかんぞ。リコットが泣いてしまったじゃろう」
「あい」
「ハバラもいきなり怒りのみで対応してはならんぞ」
「すみません父さん」
「ふん、分かればいい」
そこへディランがやってきてダニー達へ謝罪し、二人を窘めた。さらにアベニールもこの場へ来て話し出す。
「とはいえ、ダニー侯爵。この方たちはこの国へ来る予定であるドラゴンさんです。クリニヒト王国からの客人でもある。ディラン殿の言葉ではないが、いきなり頭ごなしに激昂するのは良くありませんよ」
「アベニール王子……承知しました。悪かったな坊主」
「あーう」
「きゃーう♪」
「あー♪」
流石に王子二人に窘められては分が悪いと思ったか、キーラは仏頂面のまま頭を下げた。リヒトはまだ泣いていたリコットとライルへ太鼓を鳴らし気を引いた。
「あら、泣き止みましたね。凄いわ……」
「ちゃんと世話をしろ、ロゼ。幸運を呼ぶ子だぞ、こちらの方が凄い」
「……はい」
そこでロゼと呼ばれたメイドがリヒトに感嘆の声を上げる。しかしキーラはライルを幸運の子と言い、しっかり面倒見て泣かせるなと不機嫌に言う。
「幸運の子とはいいですね! あ、ドラゴンの一人でトワイトと言います」
「これはお美しい。そう、このライルは我がクルメノス家に幸運をもたらす子、そこらの赤ん坊とは違うのだ」
「いいですね。ウチのリヒトは忌み子とされて、山に捨てられていたんですよ。酷い話です。でもこうやって私達が拾って元気に育っているから私達としてはこの子が幸運の子ですよ♪」
「あーい♪」
「あー」
トワイトはリヒトの頭を撫でてから微笑む。リヒトは満面の笑みで手を上げると、ライルがリヒトに手を伸ばしているのが見えた。
「……!? さ、左様か。素性はわからない子を育てている、と」
「両親も分からないのですかな?」
「うむ。大雨の日に見つけたのじゃ。手紙はあったが、名も無いし素性も不明。死なすには忍びないからうちの子にしたのじゃよ。そういえばメイドさんに抱っこさせたままじゃがいいのか」
「そうですか……ウチではきちんとあやしていますよ。おっと、我々は謁見に来ていたのでした。それではこれで……」
「うー」
「あーい」
ディランがそう口にすると、ダニーとキーラはそそくさとこの場を去って行った。
ライルはリヒトと遊びたそうだったが、すぐにキーラがロザの手を引いて城の中へと消えて行った。
「すみません我が国の貴族が。あれでも侯爵家で財力と口を出す権限が強いので、我々が見ていないところで威圧的な態度をとっているようです」
「ああ、大丈夫です。こちらもリコットが泣いて焦ってしまいました」
「でも、横柄な人達でしたね! ライル君でしたっけ? あの子ちゃんと育つかしら」
「わほぉん」
アベニールがハバラ達へ謝罪するが、落ち着いた彼も悪かったととりなしていた。
だが、ユリはリヒトが遊ぼうとしただけなのに怒られたのが納得がいかないらしく、口を尖らせていた。
「僕達みたいな平民だとそういう風に一蹴されるのは分かっているだろユリ」
「うーん、ヒューシの言うことも分かるけど、それはそれじゃない?」
「はは、まあケチがついて悪かったね。お詫びにケーキでも用意しよう。庭でお茶会と行こうじゃないか」
ユリが憤慨する中、兄のヒューシが苦笑していた。アトレオンはユリに賛同してお詫びをすると言う。
「謁見には行かないのか?」
「兄上だけで頼むよ。僕は客人の世話で手いっぱいだからねえ」
「我が弟ながらちゃっかりしているな……」
アベニールはそう言ってダニー達の後を追うのだった。
◇ ◆ ◇
「……あれは、あの子はまさか捨てたライルの兄では……?」
「言うなキーラ。ライルに兄弟は居ない。産んだ娘は消息不明。お前の兄である父親のキルシュは病死している。双子だということは私達しか知らんことだ」
「そう、ですね。誰も口を割らなければ」
「……」
キーラはロザを見ながらそう呟く――
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