老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

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第288話 ライル、お兄ちゃんと遊びたい

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「ではまたな。ロザもガルフやトーニャに頼んで家に来るといい。ライルも待っているからのう」
「すぴー」
「ふふ、はい! このリコットさんぬいぐるみも可愛いですね。お二人のとセットでまたお願いします」
「ええ、作っておくわね♪」

 しばらくお茶をしていたが双子が起きてこないため、そろそろ帰ろうと言うことになった。ロザはディランの言葉に笑顔で頷く。
 赤ちゃんズのぬいぐるみを見せたところ、

「それじゃ、今度はサリエルド帝国へ行く時かもしれないわね」
「その内連絡するよ。その時は頼むぜ」
「あたしだけで移動するわけにもいかないからねえ。やっぱりパパとママが居ないと、気まずいし」
「それもそうね。そういえば私達は割とこっちへ来てすぐ知り合いになったけど、なんだかんだ言ってディランさん達は王様達の顔覚えがいいですし、恩恵を受けているわね……」

 トワイトは近い内にサリエルド帝国へ行く時に会うと口にしていた。
 ガルフは連絡をするといい、トーニャと屋敷のみんなだけで行くのは憚られると肩を竦めていた。
 レイカは初期に出会ってから色々としてもらったことを思い返し、お礼ができていないと首を振っていた。

「いいのよ♪ 私達やトーニャちゃんのお友達ですもの」
『またねーみんな!』
「わほぉん」
「うぉふ!」
「わん!」

 屋敷の庭は広いため、ディランがそのまま変身する。双子を抱っこしたトワイトやアッシュウルフやひよこ達を載せて高く飛び上がっていった。
 今後の指針が出来たと、そのままディラン達は自宅へと向かった。

「アー♪」
「きゅー♪」
「ただいまグラソン、フリンク♪」
「うぉふ♪」

 庭へ降り立つと池からグラソンとフリンクが顔を出して迎えてくれた。ヤクトが近づいてただいまと鳴く。
 そのままアッシュウルフ達はフリンクに挨拶をした後、自宅へと戻る。

「こけー」
「ん? お庭にいるの」
「こけ!」
「危なくないとは思うが、なにかあれば呼ぶのじゃぞ」

 ジェニファーは同じ鳥類としてグラソンとなにか話をしているようだった。
 フリンクは池から顔を出して二羽の様子を見ていた。口元が笑っているように見えるので微笑ましい。

「今日は二人とも起きないわね」
「たまにはええじゃろう。昼を回ったし、お腹が空いたら起きると思うぞい」
「そうですね。それじゃお昼をさっと食べてしまいましょう」

 夫婦は遊戯室にお布団を敷いた後、双子を寝かせて食堂へと向かった。
 あくびをするダルや双子を守るように位置するルミナスとヤクトが居るので虫一匹近寄れないだろう。
 寝息だけが聞こえる遊戯室だったが、そこでライルがパチッと目を開ける。

「あーう……」
「うぉふ?」
「あー……」

 ライルは目を覚ましたが、少し眉を顰めてもじもじしていた。ヤクトが身を起こして覗き込むとライルが手を伸ばす。

「うぉふ」

 そこでヤクトはディランかトワイトを呼んで来ようと立ち上がった。

「なあにヤクト?」
「どうしたのじゃ?」

 裾を引っ張って呼ぶヤクトについていくトワイト。そこでライルが目を覚ましていることに気づく。

「あーう」
「どうしたの? ああ、おしめね」
「なるほどのう」

 すぐにもじもじしているライルのことがわかり、おしめを変えてやった。
 また眠るだろうとお布団に寝かせるとリビングへと戻った。

「あーう」

 しかしライルは目が覚めてしまい、眠ることが出来なくなった。そのまま、起き上がりハイハイの状態になる。

「すぴー……」
「あーう♪」

 横に寝ているリヒトを見つけてライルが笑顔になる。そこでリヒトと遊ぼうと、手を伸ばしていた。

「うぉふ!?」
「あーう?」

 するとヤクトが慌ててライルに前足を伸ばして止めた。折角寝ているところを起こさないようにしたいらしい。

「わん」
「あう」

 ルミナスも首を振って『ダメ』と主張する。しかし、ライルは不満そうに声を出した。

「あーう……!」
「うぉふ……!」

 リヒトに突撃しようとしたところでヤクトがブロックに入った。ふかふかした毛に突っ込み、ライルは笑顔になる。

「あー♪」
「わん」
「ぴよー……?」
「あう……!」
「うぉふ……!」

 ヤクトに夢中になってくれるかと思った瞬間、リヒトの近くで寝ていたひよこ達が目を覚ました。
 その声に反応してリヒトと遊ぶことを思い出すライル。そのままヤクトを乗り越えてリヒトの下へ行こうとする。

「うぉふ!」
「あーう!?」

 その瞬間、ヤクトが体を動かし、ライルが後ろへ転がった。寝ているリヒトを起こすわけにはいかないと。

「あうー!」

 しかしリヒトと遊びたいライルは諦めず、ヤクトに近づいていく。そこでライルはつかまり立ちをして乗り越えようとし始めた。
 回り込めば近づきやすくなるが、あえてヤクトに掴まり立ちをしたのだ。

「あうー……!」
「うぉふ……!」

 乗り越えようとするライルを阻止するため体を動かすヤクト。この戦いをルミナスは息を呑んで見守り、ダルはあくびをしていた。

「ぴよー?」
「あーう♪」

 そこでトコトが逆サイドから飛び乗ってライルの目の前に出て来た。するとライルは首を傾げるトコトを見て笑顔になった。

「ぴよっ!」
「あーう!」

 さらにレイタとソオンも集まってきて、ライルの膝に乗るなどして気を引いていた。ライルはそちらに夢中になり、ヤクトはホッとした顔でまた寝そべる。

 すると――

「あーい?」
「うぉふ……!?」

 ――リヒトが騒ぎで目を覚ましたのだった。

「うぉふ……」

 結局いまのやり取りは何だったのかと脱力して舌を出す。
 そんな彼を見て、リヒトはなにかを感じたのか。

「あーい♪」
「うぉふ? ……うぉふ♪」

 そんなヤクトを撫でてあげるリヒトであった。

「あーう!」
「あーい!」
「わふ♪」

 そしてまた二人で遊び始めるのであった。ルミナスはやれやれといった感じで双子を見守るのだった。
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