老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる

八神 凪

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第510話 双子、海へ行く

「とうちゃん、だっこ」
「だっこ」
「またワシか? お母さんやママはどうじゃ?」
「とうちゃん」
「とうちゃん」
「そうか」

 トラブルはあったがすぐに遊びまわっていたリヒトとライル。
 しかし通りではダル達が駆け回ることができないため飽きてしまった。
 そこで二人はディランに抱っこを要求する。
 だいたいお母さんと一緒がいいだろうにと提案を投げかけるが、二人は父ちゃんがいいと答えた。

『いいなあ』
「ぱぱ、あとで」
「あとでー」
『うんうん』

 ソルが羨ましいという感じで抱っこされた二人を撫でると、後でと返されてしまった。
 多分このあとライルはお昼寝になりそうだと苦笑していた。

「リヒト君たちはこの後、海か。いいなあ」
「あい♪」
「あーう♪」
「ふうむ……海沿いの町には興味があるな……ディランさん、もしよかったら私も連れて行ってもらえませんか?」

 そんな双子を見ていたザミールが海へ行きたいと口にする。
 販路としてコウと町の人が魚を持って売りにくることがあるが、自身では行ったことがないからだとのこと。

「別にいいですよね。ねえあなた」
「うむ。どうせ遊びにいくだけじゃし、帰る時に合流してくれれば構わんぞい」
「ソルとエレノアさんもいいかな?」
『もちろんいいに決まっている』
『ええ♪』
「ありがとう! では早速用意してくるよ」

 断る理由もないため全員が承諾する。
 するとザミールは目を輝かせて店へと戻って行った。

「旦那、お出かけですか?」
「ああ。少し海の町まで行ってくる」
「いいですねえ、お気を付けて。店は我々に任せてください」
「いつも助かるよ」

 店の中からそんな声が聞こえてきて、一家はいつも通りかと顔を見合わせて肩を竦めていた。
 程なくしてザミールの支度が整い、いつもの馬と荷台を連れて来た。

「あー♪」
「あーう!」
「わん!」
「お馬さんね♪」
「おーまさん!」
「おーまさん!」
「背中に乗せても暴れないですよ」

 たまに見かけるザミールの相棒である馬を見て、リヒトとライルのテンションがあがる。
 ディランが背中に乗せてあげると、馬はシャキッと立った。

「全部持って行くのか」
「売れるものがあるかもしれませんし、仕入れもと思いまして」
『最近一緒に行きますけど、ミルザは商魂たくましいですよ』
「ディランさんの背中だから持って行けるというのもありますけどね」
「まあそれはあるか。では町の外に出たら一旦うちへ戻るぞ。その後、海の町を目指す」
「あーい!」
「あーう!」

 そうして一家は買いそろえた道具を持って家へ。
 今度はグラソンとフリンクも連れて行く。フリンクは前にも使った大きな水槽に入れてディランが持って運ぶ。

『ガウ』
『わおん』
「あなた達はいかないの?」
『ガウ』
「ああ、ビーククロウの心配か。軒下にでも居れば大丈夫とは思うがのう」

 そしてロイシュとセレネはお留守番をすると立ち上がらなかった。
 ビーククロウの一家は傷が癒えて間もないため、見ておくというのだ。
 ロイシュ達の寝床なら大丈夫と伝えたが、残るらしい。

「わほぉん」
「うぉふ」
『ガウ』
「わん!」
『わおん♪』
「おいしゅは?」
「今日はお留守番だって」
「あー……あい。いってきあす」

 お留守番をしてくれる二頭へ息子たちが挨拶をし、リヒトも行ってきますをした。
 準備ができた一家は慌ただしくコウの居る町へと向かう。

「天気がいいから気持ちいいわね」
『風はシャットアウトされているから感じられないのが残念ですね』
「あーう……すぴー……」
「らーる? ねんね」
『リヒトも寝ておいたら? ついたら起こしてあげる』
「うー……」

 トワイトが空を見上げて微笑んでいた。
 風は魔力の壁でまったく届かないためエレノアは残念だと口にする。
 そんな中、ライルがお日様を浴びてあくびをした。
 すぐにヤクトを枕にして寝息を立てた。到着したら遊ぶだろうと思い、リヒトもお昼寝をしたらどうかと話す。

「悩んでいるわね」
「ぴよー」
「ぴよぴー」
「……あい!」
「わほぉん」

 するとひよこたちがルミナスのお腹に潜り込んでお昼寝を始めた。リヒトはピンときてダルを枕にした。

『遊ぶために寝るんだな』
「あーい……」
「ははは。やっぱり双子ですね。リヒト君も寝るのが早いや」
「ゆっくり飛ぶかのう」

 お昼寝をするならゆっくり飛ぶかとディランが速度を下げた。
 それでも一時間はかからずに海の見える町へと到着する。
 海岸に着陸しようとすると、浜辺に人が集まっていた。その中にはもちろんコウも居た。

「おおーい、ディラン!」
「コウか。出迎えてくれるとはありがたい」
「でかいドラゴンが降りてくるのが見えたらそりゃあくるじゃろ。どうしたんじゃ?」
「こんにちはコウさん。特に用事は無いんですが、そろそろ暑くなってきたからこの子達を海に連れて来たんです」
「アー」
「きゅー♪」
「すぴー」
「すー」
「双子は寝ておるようじゃな」

 グラソンとフリンク、それとライルは初めてなので連れて来たことを話す。
 ただ双子はまだ寝ているなとコウが頷く。

「あー、可愛い!」
「きゅー?」
「アー♪」

 そこで集まっていた子供の一人がグラソンとフリンクを指差して可愛いと言った。
 フリンクはくるりと水槽の中で回り、グラソンが喜んでいた。

「なんていうお魚かな?」
「アー」
「なんだ? こいつ?」
「なんか怖い顔だね……」
「アー!?」
「グラソンも可愛いわよ」
「こけー」

 可愛いと言われていたのはフリンクだけだったことに気付き、がっくりとするグラソン。トワイトが微笑みながらとさかを撫でて上げるのだった。
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