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第2話 竜、移住する
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「ううむ、久しぶりに里から出たが人間も随分増えたのう」
「減ったり増えたりを繰り返しているみたいですよ? 戦争などもあるようですし」
「同種族同士で争うなど愚かなことじゃわい。……まあ、こうやって追放されるのも似たようなものかもしれんが」
ふろしきを首に巻き、大きな荷物ボックスを抱えたディランとトワイトは、バッサバッサと翼をはためかせて適当な土地を目指す。
「地上に出たことはあまり無かったが、人間とは話したことがある。そういえば都に居ると言っていたのう。その近くにするか」
「それはいつなんですか?」
「百五十年くらい前じゃったかのう」
「もう亡くなっていますよ。人間は寿命が短いじゃないですか」
トワイトに苦笑されてディランは目を丸くしていた。その後、すぐに頭を下げてから口を開く。
「そういえばそうじゃったなあ……いい奴だったのだがのう」
「まあまあ、他にも人間がいますし、子孫が知っているかもしれませんよ」
「うーん……いや、やっぱり山にするのじゃ」
口をあんぐりと開けて後ろ向きなことを言う。でも多分言うだろうと思っていたトワイトは困った顔で笑っていた。
やがて人間の都である王都が見える山へと降り立つドラゴン夫婦。
「この辺りは良さそうじゃ。魔物も適度におるし、果物も生っておるのう」
「川も近いですわね。それじゃ、さっとおうちを建てましょうか」
「うむ」
ディランとトワイトは洞窟と川が近く、開けた場所へ着地して荷物を置く。
身体が大きいので結構大きく開けた場所でないと着地すら困難である。
着地してから人の姿に変化すると、トワイトは川へ水源を掘りに、ディランは山へ家屋の素材を取りにそれぞれ移動した。
「このあたりの木で良いか。久しぶりに振るうのう」
人型になったディランが腰に下げた剣に手をかけて一人呟く。そして次の瞬間、ディランはサッと剣を振る。
「ふぬ!」
すると足元にキレイな丸太が数本、出来上がった。ドラゴンの姿で木を狩ろうとするとボロボロになってしまうため、このように剣で一本ずつ切り出していくのだ。
「すまんな。ワシらの住処を作らねばならんのだ」
そう言ってディランは丸太を軽々と抱えて荷物を置いている場所へ持って行く。その行動を何度か繰り返すと今度はその丸太を板状に仕立てた。
「ふふん~ふ~ん」
「あら、ご機嫌ですね、あなた」
「そ、そんなことは無いわい! ……う、むう……息子のハバラが出来た時に家を増築工事をしたなと思っただけじゃ」
「ふふ。張り切っていましたものねえ」
最初は否定していたが、トワイトが微笑みながら首を傾げたところ、あっさりと心情を吐露した。
照れながらディランはトワイトへ質問を投げかける。
「そ、それよりそっちはどうじゃ?」
「もう少しでここまで掘り終わりますよ。後は池を作って完了ね」
「さすがじゃな」
右腕をドラゴンの腕にして微笑むトワイトに、ディランは満足気に頷く。
ちなみに二人はドラゴンの中では年寄りだが、人の姿だと40代くらいの夫婦にしか見えなかったりする。
アークドラゴンのディランは少しくすんだ金髪をした屈強の男性で、ストームドラゴンのトワイトはエメラルドグリーンのような髪色のおっとりとした女性だ。
「家は広く無くてもいいかのう……」
「子供はもう作れませんからね。人間の言う『さんえるでーけー』でいいんじゃないかしら? 財宝は洞窟にいれるのでしょう?」
「そうするつもりじゃ。うむ、さんえるでーけーにしよう」
妻の言葉に間違いはないと再び作業を続けていく。
土台を作り、板を繋げて壁を作り、岩を削ってレンガにし、さらに壁を強化していく。
「……ふう、まずは外観ができたわい。婆さん、こんな感じでええかのう!」
「はいはい、聞こえていますよ。あら、いいですね」
立派な平屋建ての家屋を見てトワイトは賞賛の声を上げた。
「私の方はもう少しかかりそうなの。先にお昼をいただきましょうか?」
「お、それは名案じゃて。飯にするか」
荷物の中から出がけにトワイトが作ったお弁当を取り出し、庭となるであろう場所へ広げた。
「うむ、やはりこういう時は握り飯に限るわい」
「お隣のモンドさんが分けてくれたお米よ。少し、生米ももらっているからしばらくは食べられるわ」
「ありがたいのう。いずれなにか土産でも持って行ってやろう。む、これはフウライ鳥のから揚げか。相変わらず美味いのう」
そんなほのぼのとした昼下がりを堪能した後、二人は再び作業に没頭する。
途中、トワイトが池を作り、家屋作成の手伝いへ合流した。
そして陽が落ちて月が昇り始めたころ、念願の家が完成。
「ふう……歳は取りたくないもんじゃのう」
「まあまあ。十分速いですよ。それじゃ荷物をいれましょうか」
二人は荷物を持って家の中へと入っていく。
家屋を作りながら内装もやっていて、棚やテーブル、ベッドといった家具も一通りそろえていたりする。
「夜はお魚でいい?」
「任せるわい……ふあ、久しぶりに身体を動かすと疲れるのう。残念じゃが風呂は明日にするか……飯を食ったら寝ようかのう」
「そうですねえ。あ、キッチンも使いやすい感じでいいわね」
リビングの椅子に腰かけて身体を伸ばすディランに苦笑しながら、トワイトは夕飯の準備を進めていく。
まあ、静かな土地も悪くない。そう思いながらディランは明日の予定を考える。
しかし翌日――
「減ったり増えたりを繰り返しているみたいですよ? 戦争などもあるようですし」
「同種族同士で争うなど愚かなことじゃわい。……まあ、こうやって追放されるのも似たようなものかもしれんが」
ふろしきを首に巻き、大きな荷物ボックスを抱えたディランとトワイトは、バッサバッサと翼をはためかせて適当な土地を目指す。
「地上に出たことはあまり無かったが、人間とは話したことがある。そういえば都に居ると言っていたのう。その近くにするか」
「それはいつなんですか?」
「百五十年くらい前じゃったかのう」
「もう亡くなっていますよ。人間は寿命が短いじゃないですか」
トワイトに苦笑されてディランは目を丸くしていた。その後、すぐに頭を下げてから口を開く。
「そういえばそうじゃったなあ……いい奴だったのだがのう」
「まあまあ、他にも人間がいますし、子孫が知っているかもしれませんよ」
「うーん……いや、やっぱり山にするのじゃ」
口をあんぐりと開けて後ろ向きなことを言う。でも多分言うだろうと思っていたトワイトは困った顔で笑っていた。
やがて人間の都である王都が見える山へと降り立つドラゴン夫婦。
「この辺りは良さそうじゃ。魔物も適度におるし、果物も生っておるのう」
「川も近いですわね。それじゃ、さっとおうちを建てましょうか」
「うむ」
ディランとトワイトは洞窟と川が近く、開けた場所へ着地して荷物を置く。
身体が大きいので結構大きく開けた場所でないと着地すら困難である。
着地してから人の姿に変化すると、トワイトは川へ水源を掘りに、ディランは山へ家屋の素材を取りにそれぞれ移動した。
「このあたりの木で良いか。久しぶりに振るうのう」
人型になったディランが腰に下げた剣に手をかけて一人呟く。そして次の瞬間、ディランはサッと剣を振る。
「ふぬ!」
すると足元にキレイな丸太が数本、出来上がった。ドラゴンの姿で木を狩ろうとするとボロボロになってしまうため、このように剣で一本ずつ切り出していくのだ。
「すまんな。ワシらの住処を作らねばならんのだ」
そう言ってディランは丸太を軽々と抱えて荷物を置いている場所へ持って行く。その行動を何度か繰り返すと今度はその丸太を板状に仕立てた。
「ふふん~ふ~ん」
「あら、ご機嫌ですね、あなた」
「そ、そんなことは無いわい! ……う、むう……息子のハバラが出来た時に家を増築工事をしたなと思っただけじゃ」
「ふふ。張り切っていましたものねえ」
最初は否定していたが、トワイトが微笑みながら首を傾げたところ、あっさりと心情を吐露した。
照れながらディランはトワイトへ質問を投げかける。
「そ、それよりそっちはどうじゃ?」
「もう少しでここまで掘り終わりますよ。後は池を作って完了ね」
「さすがじゃな」
右腕をドラゴンの腕にして微笑むトワイトに、ディランは満足気に頷く。
ちなみに二人はドラゴンの中では年寄りだが、人の姿だと40代くらいの夫婦にしか見えなかったりする。
アークドラゴンのディランは少しくすんだ金髪をした屈強の男性で、ストームドラゴンのトワイトはエメラルドグリーンのような髪色のおっとりとした女性だ。
「家は広く無くてもいいかのう……」
「子供はもう作れませんからね。人間の言う『さんえるでーけー』でいいんじゃないかしら? 財宝は洞窟にいれるのでしょう?」
「そうするつもりじゃ。うむ、さんえるでーけーにしよう」
妻の言葉に間違いはないと再び作業を続けていく。
土台を作り、板を繋げて壁を作り、岩を削ってレンガにし、さらに壁を強化していく。
「……ふう、まずは外観ができたわい。婆さん、こんな感じでええかのう!」
「はいはい、聞こえていますよ。あら、いいですね」
立派な平屋建ての家屋を見てトワイトは賞賛の声を上げた。
「私の方はもう少しかかりそうなの。先にお昼をいただきましょうか?」
「お、それは名案じゃて。飯にするか」
荷物の中から出がけにトワイトが作ったお弁当を取り出し、庭となるであろう場所へ広げた。
「うむ、やはりこういう時は握り飯に限るわい」
「お隣のモンドさんが分けてくれたお米よ。少し、生米ももらっているからしばらくは食べられるわ」
「ありがたいのう。いずれなにか土産でも持って行ってやろう。む、これはフウライ鳥のから揚げか。相変わらず美味いのう」
そんなほのぼのとした昼下がりを堪能した後、二人は再び作業に没頭する。
途中、トワイトが池を作り、家屋作成の手伝いへ合流した。
そして陽が落ちて月が昇り始めたころ、念願の家が完成。
「ふう……歳は取りたくないもんじゃのう」
「まあまあ。十分速いですよ。それじゃ荷物をいれましょうか」
二人は荷物を持って家の中へと入っていく。
家屋を作りながら内装もやっていて、棚やテーブル、ベッドといった家具も一通りそろえていたりする。
「夜はお魚でいい?」
「任せるわい……ふあ、久しぶりに身体を動かすと疲れるのう。残念じゃが風呂は明日にするか……飯を食ったら寝ようかのう」
「そうですねえ。あ、キッチンも使いやすい感じでいいわね」
リビングの椅子に腰かけて身体を伸ばすディランに苦笑しながら、トワイトは夕飯の準備を進めていく。
まあ、静かな土地も悪くない。そう思いながらディランは明日の予定を考える。
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