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第113話 竜、疑われる
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「む、散開した……? こちらに気付いたか」
ウェリス達がそれぞれ別の方向へ移動したのを見て、斥候をしている騎士がすぐにお互いを認識していることに気付く。
さて、誰を追うべきかと考えつつ、次のプランを頭に思い描いていた。
「あのリーダー格の男でいいか。女の子を追いかけたらなにを言われるかわからないしな」
騎士の男はそう決めてウェリスを追うことにした。
飄々とした感じがするなと、昨日から観察した感想を胸中で呟く。剣の腕は間違いなく屈指だと狩りの様子を思い出していた。
「……」
「……」
歩いているのは騎士とウェリスだけではない。
露店をのぞき込んだり、周囲に目を向けながら自然に『同じ方向に用がある』と思わせる動きでウェリスを追う。
「……」
「っと」
そこでウェリスがスッと路地裏に入るのを見かけてどうするか逡巡する。ここで追いかければ後をつけていることが知られてしまう。
「まー、向こうも解っているだろうし、これ以上はやめておくか」
「見つけた。おい、戻るぞ」
「ん? おお、なんだお前か」
斥候は今日はここまでにして明日以降はまた別の人間に任せようと踵を返す。
一人でこの任務をしているわけではないため『気づかれた』と言えば人員を変えるだけでいい。
しかし、そこで男が気さくに声をかけてきた。普段着だが彼もまた騎士である。
「『もういいってよ』」
「……なるほどね。そんじゃ帰るか! 酒でも飲んで行こうぜ」
「おう」
後から来た騎士はもういいと口にし、斥候は肩を組んで酒場へと向かう。
もちろんいきなり城へ帰るのは危険だからである。
そして後をつけられていたウェリスはというと――
「……ついてこないな。どれ」
――路地裏に入ってすぐのところにあるタルの裏にしゃがんで隠れていた。
そこで撒くか質問するか考えていたがしばらく待っても来なかったのでそっと通りに顔を出す。
「なんだ? 連れとどっか行くのか?」
斥候が誰かと合流し歩いていくのを見つけた。
自分達をつけていたわけではなかった……とは考えにくいので今度は逆に追う。
するとそのまま酒場へと繰り出していた。
「……なんだったんだ? だけどヤツがつけてきていたのは間違いない」
ウェリスはそのまま踵を返して宿へと向かう。
「別に俺達はただの冒険者なんだがなあ。そりゃ知っているヤツからすりゃ有名だが……」
それにしても解せないと首を捻って歩いていく。そこでふと立ち止まって振り返った。
「ドラゴン、か?」
もしかしたら自分の口にしたアレが警戒されているかもしれないという思考にいきついた。
「なにかあるのかねえ。もっと調査した方がいいかもな?」
◆ ◇ ◆
「なるほど、ディラン殿の言うことももっともか」
「ええ。少し気を急がせすぎましたかな」
「こちらとしても騒ぎを起こす前に対処したいと考えていたから仕方ない。だが、平常の生活を送るべきというのは理解できる。監視役の斥候に引き上げるように通達を」
「すぐにでも」
斥候を呼び戻す少し前、ディランのところから戻った騎士がモルゲンロートへ報告していた。
内容を聞いたモルゲンロートは下手に勘繰られても困るかと納得し、撤退の命令を下す。
すぐに手配すると騎士が下がり、モルゲンロートは玉座に背を預けて一息ついた。
「ふう……私もまだまだだな。焦っていたようだ」
「それは仕方ありませんよ。後はトーニャ嬢をキリマール山へ連れて行けば王都での問題は無くなるかと」
「そうだな」
「父上、今よろしいでしょうか?」
「……! あ、ああ、いいぞ」
バーリオとこれで大丈夫かという会話をしているとヴァールが国王の執務室へとやってきた。
少しドキッとしながら入るよう伝えると、ヴァールとコレルが入って来た。
「どうした?」
「いえ、一部の騎士や父上がなんだか慌ただしい様子だったのでなにかあったのかとお伺いに来ました」
「今も騎士が出て行ったようですが……」
「問題ない。今、ある程度解決したからな。コレル、仕事は慣れたかな?」
「え、ええ。まだ他の貴族とは会っていませんが、風土はわかったと思います」
「まあ、慌てずにな。親目線で申し訳ないがヴァールは優秀だ。お互い学ぶところもあるだろうし、精進してくれ」
「わかりました、父上。行こうか、コレル」
「……はい」
出て行くヴァールを見送った後、安堵のため息を吐いてからバーリオへ小声で言う。
「勘のいい子だ」
「陛下のご子息ですからな。とはいえもう済んだことになりそうですし、大ごとにはなりますまい」
「そうだな」
二人は頷きあってからもう一度ヴァールの出て行った扉を見るのだった。
◆ ◇ ◆
「なにを探っているのだ?」
「あ、やっぱり分かるかい? いや、父上は何か隠しているなと思ってね。実際、騎士達が慌ただしく町へ出入りしている」
「巡回ではないのか?」
部屋を出た後、コレルは違和感を覚えてヴァールに尋ねる。するとモルゲンロートはなにかを隠している気がすると答えた。
騎士達が慌ただしい感じでウロウロしていることにコレルは気づいていたが、町の巡回命令ではと返す。
「にしては、一部の騎士だけが慌ただしいんだよね。具体的には少し前にキリマール山へ行った者達がさ」
「?」
「ああ、君は居なかったから知らないと思うけど、父上と数人の騎士、それも歳がそれなりにいっている者がキリマール山というところへ行ったんだ。その時の騎士達が最近、特に父上の身辺に居ることが多い」
「ふむ……そもそもなにをしに行ったんだ?」
コレルは山へ行った目的を気にしていた。それはヴァールも同じで頷いていた。
「行った後は故郷を追われたというディランさん達一家を見つけて、山の管理者にする、という措置を取ったんだ」
「ディラン……あの男か」
「そう。ロイヤード国では私も一緒だったね。……実はあの一家、なにか秘密があるんじゃないかと思っている」
「なにか……」
ヴァールがそう口にし、確かにあの男はどこか異質だったと思い返す。
「今回も関わっているのか分からないけど、キリマール山へ行った騎士と父上とディランさんの関係と今回の件は重なっている気がするんだ」
「……だとしたらどうするのだ?」
「さっき出て行った騎士を追いかけよう。なにか掴めるかもしれない――」
ウェリス達がそれぞれ別の方向へ移動したのを見て、斥候をしている騎士がすぐにお互いを認識していることに気付く。
さて、誰を追うべきかと考えつつ、次のプランを頭に思い描いていた。
「あのリーダー格の男でいいか。女の子を追いかけたらなにを言われるかわからないしな」
騎士の男はそう決めてウェリスを追うことにした。
飄々とした感じがするなと、昨日から観察した感想を胸中で呟く。剣の腕は間違いなく屈指だと狩りの様子を思い出していた。
「……」
「……」
歩いているのは騎士とウェリスだけではない。
露店をのぞき込んだり、周囲に目を向けながら自然に『同じ方向に用がある』と思わせる動きでウェリスを追う。
「……」
「っと」
そこでウェリスがスッと路地裏に入るのを見かけてどうするか逡巡する。ここで追いかければ後をつけていることが知られてしまう。
「まー、向こうも解っているだろうし、これ以上はやめておくか」
「見つけた。おい、戻るぞ」
「ん? おお、なんだお前か」
斥候は今日はここまでにして明日以降はまた別の人間に任せようと踵を返す。
一人でこの任務をしているわけではないため『気づかれた』と言えば人員を変えるだけでいい。
しかし、そこで男が気さくに声をかけてきた。普段着だが彼もまた騎士である。
「『もういいってよ』」
「……なるほどね。そんじゃ帰るか! 酒でも飲んで行こうぜ」
「おう」
後から来た騎士はもういいと口にし、斥候は肩を組んで酒場へと向かう。
もちろんいきなり城へ帰るのは危険だからである。
そして後をつけられていたウェリスはというと――
「……ついてこないな。どれ」
――路地裏に入ってすぐのところにあるタルの裏にしゃがんで隠れていた。
そこで撒くか質問するか考えていたがしばらく待っても来なかったのでそっと通りに顔を出す。
「なんだ? 連れとどっか行くのか?」
斥候が誰かと合流し歩いていくのを見つけた。
自分達をつけていたわけではなかった……とは考えにくいので今度は逆に追う。
するとそのまま酒場へと繰り出していた。
「……なんだったんだ? だけどヤツがつけてきていたのは間違いない」
ウェリスはそのまま踵を返して宿へと向かう。
「別に俺達はただの冒険者なんだがなあ。そりゃ知っているヤツからすりゃ有名だが……」
それにしても解せないと首を捻って歩いていく。そこでふと立ち止まって振り返った。
「ドラゴン、か?」
もしかしたら自分の口にしたアレが警戒されているかもしれないという思考にいきついた。
「なにかあるのかねえ。もっと調査した方がいいかもな?」
◆ ◇ ◆
「なるほど、ディラン殿の言うことももっともか」
「ええ。少し気を急がせすぎましたかな」
「こちらとしても騒ぎを起こす前に対処したいと考えていたから仕方ない。だが、平常の生活を送るべきというのは理解できる。監視役の斥候に引き上げるように通達を」
「すぐにでも」
斥候を呼び戻す少し前、ディランのところから戻った騎士がモルゲンロートへ報告していた。
内容を聞いたモルゲンロートは下手に勘繰られても困るかと納得し、撤退の命令を下す。
すぐに手配すると騎士が下がり、モルゲンロートは玉座に背を預けて一息ついた。
「ふう……私もまだまだだな。焦っていたようだ」
「それは仕方ありませんよ。後はトーニャ嬢をキリマール山へ連れて行けば王都での問題は無くなるかと」
「そうだな」
「父上、今よろしいでしょうか?」
「……! あ、ああ、いいぞ」
バーリオとこれで大丈夫かという会話をしているとヴァールが国王の執務室へとやってきた。
少しドキッとしながら入るよう伝えると、ヴァールとコレルが入って来た。
「どうした?」
「いえ、一部の騎士や父上がなんだか慌ただしい様子だったのでなにかあったのかとお伺いに来ました」
「今も騎士が出て行ったようですが……」
「問題ない。今、ある程度解決したからな。コレル、仕事は慣れたかな?」
「え、ええ。まだ他の貴族とは会っていませんが、風土はわかったと思います」
「まあ、慌てずにな。親目線で申し訳ないがヴァールは優秀だ。お互い学ぶところもあるだろうし、精進してくれ」
「わかりました、父上。行こうか、コレル」
「……はい」
出て行くヴァールを見送った後、安堵のため息を吐いてからバーリオへ小声で言う。
「勘のいい子だ」
「陛下のご子息ですからな。とはいえもう済んだことになりそうですし、大ごとにはなりますまい」
「そうだな」
二人は頷きあってからもう一度ヴァールの出て行った扉を見るのだった。
◆ ◇ ◆
「なにを探っているのだ?」
「あ、やっぱり分かるかい? いや、父上は何か隠しているなと思ってね。実際、騎士達が慌ただしく町へ出入りしている」
「巡回ではないのか?」
部屋を出た後、コレルは違和感を覚えてヴァールに尋ねる。するとモルゲンロートはなにかを隠している気がすると答えた。
騎士達が慌ただしい感じでウロウロしていることにコレルは気づいていたが、町の巡回命令ではと返す。
「にしては、一部の騎士だけが慌ただしいんだよね。具体的には少し前にキリマール山へ行った者達がさ」
「?」
「ああ、君は居なかったから知らないと思うけど、父上と数人の騎士、それも歳がそれなりにいっている者がキリマール山というところへ行ったんだ。その時の騎士達が最近、特に父上の身辺に居ることが多い」
「ふむ……そもそもなにをしに行ったんだ?」
コレルは山へ行った目的を気にしていた。それはヴァールも同じで頷いていた。
「行った後は故郷を追われたというディランさん達一家を見つけて、山の管理者にする、という措置を取ったんだ」
「ディラン……あの男か」
「そう。ロイヤード国では私も一緒だったね。……実はあの一家、なにか秘密があるんじゃないかと思っている」
「なにか……」
ヴァールがそう口にし、確かにあの男はどこか異質だったと思い返す。
「今回も関わっているのか分からないけど、キリマール山へ行った騎士と父上とディランさんの関係と今回の件は重なっている気がするんだ」
「……だとしたらどうするのだ?」
「さっき出て行った騎士を追いかけよう。なにか掴めるかもしれない――」
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