5 / 115
お嬢様
しおりを挟む「ふあ……」
「ありゃ、眠いの修ちゃん?」
「んあ? だなあ、昨日あれだけ寝たのに疲れが取れてない感じする」
「今日も休んだら良かったのに。あたし、看病します!」
「なんで敬語で敬礼するんだ……」
翌日、すっかり元気になった俺は真理愛と共に登校していた。だけど、疲れが取れた感じはなく、気だるい状態が続いていたので眠気は消えていない。それでも頭痛があるわけでもないしと学校へ行くことにした。
「それじゃあお昼ねー」
「おう、またな」
俺は教室前で真理愛と別れて中へ入ると、霧夜が声をかけてきた。
「よ、もう大丈夫なのか?」
「サンキュー、昨日は酷かった……まあ一昨日の夜からなんだけど、あの頭痛は死ぬかと思った」
「マジか、今まで大病をしなかったお前らしくないな。らしくない、と言えば事件があったぞ」
霧夜が珍しいと心配してくれる気持ちが嬉しい。それと同時に事件とやらにも興味があるなと俺はカバンを机の横に下げ、椅子に座りながら続ける。
「事件? 下界はともかく、おおよそ平和な学校に何が……?」
「商店街を下界と呼ぶな。まあ、確かにあそこまで物騒な事件ではないけど、八塚も昨日休んでいたんだ」
「マジか」
お嬢様の八塚 怜は先日早退をしているが、あの時以外で見たことも聞いたことないし、まして丸一日休んだことなど無い。そう言われれば規模は大したことないが、俺達の学年で考えれば事件と言えるだろう。
「ああ。彼女のクラスはお通夜だったみたいだぞ」
「それは理解が及ばないから要らない情報だ。ま、八塚ってお嬢様だろ? 最近事件も多いし、家から出さなかったとかそんなところだろ? でもこの前早退していたから病気だった可能性もあるけど、元気そうだったしな」
「そう言われれば確かに。しかし、早退をしていたのか?」
「一昨日グラウンドで見たぞ」
「はいはーい、ホームルーム始めるわよ! あら、神緒君、体調は大丈夫なの?」
霧夜と話していると、担任の先生が入って来て俺を見て微笑みなが声をかけてきた。
「正直死ぬかと思いましたけど、今日はすっきりしてますよ本庄先生……ふあ……」
「はっはっは、なんだ大あくびじゃないか! まあ、元気そうで何よりだ。お母さんの電話は結構焦っていたからなあ。それじゃ、今日の連絡事項だが――」
と、担任であり国語教師である本庄 栞先生が連絡事項を告げ、一日が始まる。
世間では凶悪事件があったり、人が消えたりと物騒だが学校内は平和そのもの……だと思ったんだが、この日はいつもと違っていた。
何故なら――
「今日はBクラスと合同体育だ、クラス対抗でサッカーをやるぞ!」
「「おおお!!」」
「やほー、修ちゃん」
「お前んとこと合同か、ほえ面をかくなよ?」
「ふーん、そんなこと言うんだ? ならウチが勝ったら今度修ちゃんに度商店街で服を買ってもらおうっとー♪」
「絶対に負けられなくなったな」
「勝つぞおらぁ!」
「じーっ……」
「ん? 何か視線が……?」
「どしたの修ちゃん?」
「いや……」
他にも――
「修ちゃんー、霧夜君、お昼食べよう♪」
「ああ、体育の後でも相変わらず興津は元気だな」
「真理愛はそれだけが取り柄だからな」
「修ちゃんはそれすらもこの前無くなったもんね……」
「おい、こら、深刻そうな顔で何言ってんだ! ……!?」
「じーっ……」
「なんだ……?」
「どうした修? 早く飯を食おう」
「あ、ああ……」
――といった感じで、今日は度々視線だか気配を感じる日だったのだ。そしてそれは一日中続き、その結末は放課後に訪れた。
「神緒 修君、ちょっといいかしら?」
「んあ?」
艶やかな黒髪ロングのストレートヘアを携えた女の子があくびをする俺に声をかけてきた。瞬間、クラスが騒然となる。
「お、おい、あれ八塚じゃないか」
「なんで神緒に声をかけているんだ……?」
「冴えないのに……」
最後のは余計なお世話だ。そんなことは俺が一番よく知っているし、きっと大きくなったら結婚しようと言ってくれた真理愛以外に告白されることもないであろう。まして目の前に居るお嬢様から告白されるなどといったことは絶対に無い……
「校舎裏まで来て欲しいの。行きましょう」
「う、うぉっほん! い、いいでございますですよ!」
「……?」
……とは言い切れないかもしれない!? 俺は首を傾げる八塚から霧夜に目を向け、お願いをする。
「すまん霧夜。俺は一足先に行かせてもらうよ……真理愛には適当に言っておいてくれ」
「お前が考えているようなことは恐らくないと思うが、興津に見つからないよう早く行った方がいいんじゃないか?」
「おっと、そうだな。八塚、行こうじゃないか!」
「え、ええ……こっちへ」
今まで高嶺の花だと興味が無かったけど、改めて見るときょとんとした顔がとても可愛い。接点とか全然無かったけど、校舎裏にふたりきり……これはもうアレしかないよな?
そんな期待を胸に秘めて俺は八塚の後を追い、程なくして校舎裏に到着すると八塚は俺に背を向けたまま立ち止まり、振り向かない。
「どうした……?」
「いえ、ちょっと気を落ち着かせているだけよ。ふう、それで神緒君にここまで来てもらったのは聞きたいことがあったからよ」
来たか、と俺は口元を緩ませて言う。
「彼女は居ない! だから何も問題なしだ!」
「昨日、あなたの所にウチの猫が行っていたって執事の村田が言ってたけど知らないかしら?」
俺が言葉を発すると同時に八塚も口を開く。
「ん?」
「は?」
その瞬間、俺達の間に気まずい空気が流れた――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる