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シュウ
しおりを挟む「待て! 逃げられると思うな!
「しつこい! 何されるか分からないのに待つわけないだろうが!」
「ガキか? <火の息吹>!」
「うわっち!? さっきからなんだあれ?」
十階の踊り場に差し掛かったところで声が近くなり、背後から火が飛んでくるのが見えて慌てて回避する。ぼやきながら立ち上がると、階段下にもう一人の男がいつの間にか回り込んでいた。
「見られたからには生かしておけんな……!」
「剣!?」
片手にもっていた剣を構えて踊場へ来る男。さらに階段から駆け下りてくるやつもいる。挟まれたらアウトだ、どうする!?
「ぶみゃー!!」
「うおお!?」
「スメラギ! 今だ!」
スメラギが上から降って来て剣を持った男の顔に覆いかぶさり、派手に転倒する。スメラギを抱えてさらに階段を降りようとしたところ、上から氷の塊が落ちてきた。
「何をしている、早く殺せ!」
「くそ、階段が……!? あっちにあるか?」
すぐに廊下を走り出す俺。階段はここだけってことはないはずだと思っての行動だ。頼むぜ……!
<おい>
「なんだ!?」
<貴様、何故戦わん? あの程度の雑魚、貴様なら余裕で倒せるだろう>
「馬鹿言うな、俺は喧嘩もしない健全な男子高校生だぞ! ……って、だ、誰だ!?」
頭に直接声が響き、語り掛けてくるのが聞こえ俺は周囲を見渡す。すると抱えていたスメラギが俺を見上げていることに気づく。
<勇者シュウよ、何故戦わん?>
「お、お前が喋っているのか……?」
<正しくは念話だがな。お前と対峙した時もこれで話していたはずだが……まさか、思い出していないのか?>
「何をだよ!? き、来た!」
「待て!」
このオフィスは広いので、廊下を走るよりはと、俺は適当な部屋に入りやり過ごす。案の定、奥から別の部屋へ通じているようで、身を隠しながら移動するにはちょうどいい。
「暗いな……まあ、逆に見つかりにくいともいえるか……」
<おい、問いに答えろ。お前、記憶はどうした?>
「何だってんだ……お前が喋っているのでお腹いっぱいだよ……」
<なんと……思い出して居らんのか……我がお主と相打ちになったカイザードラゴンということが分からんのか?>
「いや、猫だろお前!? う……?」
そう突っ込んだ瞬間、俺は頭に鈍い痛みを覚える。カイザー……ドラゴン、だって……?
「それ、は……夢でみた……ような……」
<夢ではない、実際にあったお主の前世の記憶だ。なんの因果か、お前の聖剣で倒された我は、この通り猫として転生していた。そしてお前を見た時、あの時勇者だと一目で分かり、記憶を取り戻したのだ>
「う、ぐ……相打ち……聖剣……」
<そうだ、思い出せ。今追いかけてきているあの二人は『向こうの世界』の人間だ、我が死に封印が……む、避けろ!>
「<火の息吹>! くそ……見えん……」
追いついかれたようだけど、まだ見つかってはいないらしい。俺は痛む頭を抱えながら腰を低くして暗闇の中を進む。
「ぐ、うう……」
<むう、急に思い出させたのはまずかったか……? 魔法でも使えれば良かったのだろうが……仕方ない、今は逃げて警察とやらの下へ行くべきか>
「そ、そうだ、な……」
相手にするのも辛くなってきた……た、辿り着ける、いや、逃げ切れるのか……? 俺は目に入る汗を拭いながら扉に手をかけてる。その時だった。
「! そこか<災いの炎>よ!」
「う、おおお……!?」
<ぐぬ……!>
熱風に巻き込まれ、壁に叩きつけられる俺とスメラギ。ずるり、と背を下げ、しりもちをつく形になった俺に二人が近づいてくるのが見えた。
「手間を取らせてくれる」
「まあいい、早いところ始末するぞ」
<おい、しっかりしろ! ここで死んだらお嬢はどうするのだ!? それに真理愛が泣くぞ!>
近くに居るはずなのに、遠くからスメラギの声が聞こえる……気を失おうとしているのか? 真理愛、泣くか……泣くだろうな……八塚もどこかに居たんだろうか……? 助けられなかった、今回も――
俺がそう思った瞬間、頭の中に声が響く――
(今のは流石に無理だろバリアス!?)
(お前は諦めるのが早すぎるんだ、窮地こそ冷静に。死んだら何にもならないんだ、カリンを死なせたくないだろ? それに、お前が死んだら残されたカリンや俺達は物凄く悲しい)
(そうよ、逃げられるか戦って倒せるか。その判断を確実に、ね)
(でも逃げるのはカッコ悪いだろミモリ。俺は勇者なのに)
(かっこ悪くてもいいじゃない。いつか挽回すればいいのよ。だから冷静に、ね?)
――そうだったな……どんな時でも冷静に……
「観念したか。ありがたいことだ……! 好奇心でここへ立ち入ったことを後悔しながら……死ね!」
<シュウ!!>
剣が振り下ろされるのが、見えた。なんだ、全然遅いじゃないか。バリアスならもう死んでるぜ?
そんなに焦るなよスメラギ……
<な!?>
「に!? ごふ……っ! 小僧……!?」
俺は剣を半歩分、身体をずらして回避すると、腰を上げながら鳩尾に拳を叩きつける。弱い部分は分かる、人間相手なんて楽なもんだ。ドラゴンや魔族と戦うより、ずっとな……!!
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