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別世界の存在として
しおりを挟む飯、風呂、説教が終わり、俺はスメラギを連れて自室へと戻って来た。
真理愛のやつが最後まで俺と一緒に寝るんだと踏ん張っていたが母親に連絡して強制送還となった。まあ、スメラギと寝たかっただけのようだが。
そんな疲れた今日一日をさっさと寝てしまう……というのは問屋が卸さない。少なくも、カイザードラゴンと俺の記憶、この二点について確認する必要がある。
「お前はあの時、俺と相打ちになったドラゴンで間違いないのか?」
<うむ。正直、あれで殺られるとは思っていなかったがな。見事だった>
「そりゃどうも……って、なんで猫になってるんだ?」
<それは我にも分からん。記憶が戻ったのは確か二年くらい前か? 気づけば商店街とやらでゴミ箱を漁る野良猫としてこの世界に居た>
「おお……母猫とかは居なかったのか?」
気づけば野良猫とは壮絶な転生だ……元がドラゴンだけに不憫な扱いだ。スメラギは俺の問いにため息を吐きながら言う。
<おらんかった。我を我だと認識した時にはどこぞの軒下のダンボールで丸まっておった。育児放棄か死んだかのどっちかだろう>
「なるほどな。苦労したんだなあ……」
<というか、お主あっさりしているな。我を恨んでおらんのか?>
スメラギが前足を俺の膝に置きながら上を向いて俺と目を合わせる。少し考えた後、頭を振ってスメラギの抱きかかえて返す。
「……今更だしな。あの時、実力不足だったにも関わらず突っ込んだ俺のミスだ。俺はお前を倒しに行った、お前は自分を守るために戦った。だから恨みはないよ。ただ、まあ、カリンやバリアス達には悪いことをしたけどな」
ドラゴンだって生きている。こちらにも事情はあるけど、はいそうですかと殺されるわけにはいかないのは承知している。特に、向こうの世界は焼肉定食だから死んだやつが悪いのだ。
<……弱肉強食だろうが>
「な!? 貴様、俺の思考を……!? 柔らかい!?」
俺が驚愕しているとスメラギの肉球が俺の頬にヒットし、俺は優しい気持ちになる。するとスメラギが布団の上で丸まり、話を続ける。
<まったく、勇者とは思えんな。まあ、だからこそ勇者なのかもしれんが……それより、力は戻ったか? 魔法は使えていたようだが?>
「……微妙だな、魔法は簡単なものしか使え無さそうだ。パワーとスピードは記憶が返ってくる前よりは上がっているけど、お前と戦った全盛期に比べたら全然だな。正直、あいつらが弱くて助かった」
<そうか。それでも、その辺の学生に比べればマシと考えればいいな。我はこうやって喋ることはできるが、力は戻っておらん。お主を見た時『あ、勇者だ』と思い、何か手がかりがないか家に来たのだが>
――熱で苦しんでいた上に、さっきまで全然記憶が戻っていなかったことにがっかりしていたらしい。まあ、それはともかくこの状況について確認したい。
「……フードをとったヤツの顔に見覚えがあった。あいつはティアレス帝国の兵士、イルギットだった。俺が知っている顔より大人びていたが間違いなくイルギットだ」
イルギットはあの時点で十四歳かそこらだったはず。俺の二つ下で、旅立つまで俺と訓練に励んでいたのを覚えている。
<なるほど、ということは封印は解かれたということか……しかし、この世界に扉を開くのは簡単ではない……>
「どういうことだ? 封印? お前は何を知っている?」
<……お前は我の下に来る前に、同胞を倒したな>
「いきなりなんだ……? 確かに倒したぞ、全部で七体……お前で八体目だったな」
俺が困惑しながら答えるとスメラギはゆっくり頷き口を開く。
<記憶は確かなようだな。その通り、我を含め各地に封印を守る役目を持っていたドラゴンは全部で八体。それをすべて倒してしまい、封印が消えた>
「封印……? 一体何を封印していたんだ? お前達は世界を支配しているって聞いたぞ?」
<それは、帝国が吹聴した嘘だ。我らが守っていた封印、伝説ではそれを解くと別の世界への扉が開くとなっていた>
それを聞いて俺の背筋が冷えるのを感じた。……嘘? 皇帝陛下が俺に……? そういえばこいつ、最後に――
<恐らく、それを成し遂げたのだろう。他にもやることはあったはずだが、この数十年でそれを突き止めたようだな>
「じゃ、じゃあ陛下の目的は……!?」
<そう、別世界への邂逅……そして、侵攻だ>
その瞬間、ドクンと俺の心臓が大きく動くのを感じた。一体どうして――
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