現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

文字の大きさ
20 / 115

別世界の存在として

しおりを挟む

 飯、風呂、説教が終わり、俺はスメラギを連れて自室へと戻って来た。
 真理愛のやつが最後まで俺と一緒に寝るんだと踏ん張っていたが母親に連絡して強制送還となった。まあ、スメラギと寝たかっただけのようだが。

 そんな疲れた今日一日をさっさと寝てしまう……というのは問屋が卸さない。少なくも、カイザードラゴンと俺の記憶、この二点について確認する必要がある。

 「お前はあの時、俺と相打ちになったドラゴンで間違いないのか?」
 <うむ。正直、あれで殺られるとは思っていなかったがな。見事だった>
 「そりゃどうも……って、なんで猫になってるんだ?」
 <それは我にも分からん。記憶が戻ったのは確か二年くらい前か? 気づけば商店街とやらでゴミ箱を漁る野良猫としてこの世界に居た>
 「おお……母猫とかは居なかったのか?」
 
 気づけば野良猫とは壮絶な転生だ……元がドラゴンだけに不憫な扱いだ。スメラギは俺の問いにため息を吐きながら言う。

 <おらんかった。我を我だと認識した時にはどこぞの軒下のダンボールで丸まっておった。育児放棄か死んだかのどっちかだろう>
 「なるほどな。苦労したんだなあ……」
 <というか、お主あっさりしているな。我を恨んでおらんのか?>

 スメラギが前足を俺の膝に置きながら上を向いて俺と目を合わせる。少し考えた後、頭を振ってスメラギの抱きかかえて返す。

 「……今更だしな。あの時、実力不足だったにも関わらず突っ込んだ俺のミスだ。俺はお前を倒しに行った、お前は自分を守るために戦った。だから恨みはないよ。ただ、まあ、カリンやバリアス達には悪いことをしたけどな」

 ドラゴンだって生きている。こちらにも事情はあるけど、はいそうですかと殺されるわけにはいかないのは承知している。特に、向こうの世界は焼肉定食だから死んだやつが悪いのだ。

 <……弱肉強食だろうが>
 「な!? 貴様、俺の思考を……!? 柔らかい!?」

 俺が驚愕しているとスメラギの肉球が俺の頬にヒットし、俺は優しい気持ちになる。するとスメラギが布団の上で丸まり、話を続ける。

 <まったく、勇者とは思えんな。まあ、だからこそ勇者なのかもしれんが……それより、力は戻ったか? 魔法は使えていたようだが?>
 「……微妙だな、魔法は簡単なものしか使え無さそうだ。パワーとスピードは記憶が返ってくる前よりは上がっているけど、お前と戦った全盛期に比べたら全然だな。正直、あいつらが弱くて助かった」
 <そうか。それでも、その辺の学生に比べればマシと考えればいいな。我はこうやって喋ることはできるが、力は戻っておらん。お主を見た時『あ、勇者だ』と思い、何か手がかりがないか家に来たのだが>

 ――熱で苦しんでいた上に、さっきまで全然記憶が戻っていなかったことにがっかりしていたらしい。まあ、それはともかくこの状況について確認したい。

 「……フードをとったヤツの顔に見覚えがあった。あいつはティアレス帝国の兵士、イルギットだった。俺が知っている顔より大人びていたが間違いなくイルギットだ」
 
 イルギットはあの時点で十四歳かそこらだったはず。俺の二つ下で、旅立つまで俺と訓練に励んでいたのを覚えている。
 
 <なるほど、ということは封印は解かれたということか……しかし、この世界に扉を開くのは簡単ではない……>
 「どういうことだ? 封印? お前は何を知っている?」
 <……お前は我の下に来る前に、同胞を倒したな>
 「いきなりなんだ……? 確かに倒したぞ、全部で七体……お前で八体目だったな」

 俺が困惑しながら答えるとスメラギはゆっくり頷き口を開く。

 <記憶は確かなようだな。その通り、我を含め各地に封印を守る役目を持っていたドラゴンは全部で八体。それをすべて倒してしまい、封印が消えた>
 「封印……? 一体何を封印していたんだ? お前達は世界を支配しているって聞いたぞ?」
 <それは、帝国が吹聴した嘘だ。我らが守っていた封印、伝説ではそれを解くと別の世界への扉が開くとなっていた>

 それを聞いて俺の背筋が冷えるのを感じた。……嘘? 皇帝陛下が俺に……? そういえばこいつ、最後に――

 <恐らく、それを成し遂げたのだろう。他にもやることはあったはずだが、この数十年でそれを突き止めたようだな>
 「じゃ、じゃあ陛下の目的は……!?」
 <そう、別世界への邂逅……そして、侵攻だ>

 その瞬間、ドクンと俺の心臓が大きく動くのを感じた。一体どうして――
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...