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本音と建前
しおりを挟む「まったく、警察から連絡を受けた時は肝が冷えたぞ? ……一応、行方不明者の発見に協力した形になるから感謝されていたが、もし犯人がいたら危なかったんだぞ?」
「分かっていますって。まさか廃ビルに行方不明の人達が居るとは思わなかったもんで、びっくりしましたよー」
宣言通り職員室に呼び出された俺は、昨日のことを本庄先生の言葉に軽い調子で返事をする。すると、肘をついた腕で頬杖をつきながら俺に言う。
「……八塚を探しに行ったのか?」
「……いえ、そういうわけじゃ……」
とは言ったものの、俺の目は泳いでいたかもしれない。スメラギ先導で行ったのは八塚が居るかもという思惑からなので本庄先生が言うことは嘘という訳ではないからだ。すると目を細めて黙っていた本庄先生が静かに口を開く。
「八塚はまだ見つかっていないと父親から連絡があった。何か分かれば教えてくれ、と。しかし廃ビルには居なかったんだな?」
「ああ。あの中には居なかった。だけど、ただの誘拐じゃないのは間違いない、同じところに集められているし、もしかしたら別の場所に同じような人と一緒にいるんじゃないか? まだ見つかっていない人もいるみたいだし」
「……ま、そのあたりは警察に任せるしかないな。八塚は心配だが独自の調査班を投入したらしい。お前はもう動くなよ?」
「へーい……」
本庄先生から厳重注意をされた俺は一限目が始まるギリギリに教室へと戻る。そこで霧夜が俺の所へ来て声をかけてきた。
「本庄先生のおっぱいを堪能したか?」
「そっちかよ!? いや、昨日の件について言われただけだ。怒られはしなかったけど、やんわりと調査するなよって言われた」
「そうか……まあ、八塚は心配だけど昨日みたいに偶然見つけられるとも思えないし、木乃伊取りが木乃伊になる可能性もあるしな。っと、授業か、またな」
霧夜はため息を吐きながら席につき、一限目が始まる。
先生や霧夜にはああ言われたものの、俺は前世の記憶を取り戻し、魔法も使えるためそれとなく八塚を探しにいくつもりだ。
これは昨日ぶさ猫と話し合ったことだが、条件はスメラギがあたりをつけたところを調査するというもので、昼間は学校で動けない俺の代わりにスメラギが町を徘徊。で、放課後に合流して怪しい場所を調査するというものだ。
何故かというと、放課後は真理愛と霧夜の目を盗んで移動しなければならず、帰りが遅いと母ちゃんに殺されるためだ。実際それほどとれる時間は無いのでこれくらいが譲歩できるところ。
それでも大型連休に入れば町に出られるので、数日の間だけだけどな。
「……時間が経てば経つほど誘拐は不利だ。できれば今日明日で俺、もしくは誰かに発見されればいいけど……」
とにかく、鍵はスメラギだ。あいつの調査を待つしかないと、俺はあまり頭に入ってこない授業を受ける。そして昼休み、霧夜と重い表情の真理愛と弁当をつつく。
「大丈夫かなあ怜ちゃん……」
「行方不明になってから【まだ】と見るべきか【もう】と言うべきか……修、警察と他に何か話さなかったか?」
「ん? ……特に無いぞ、運転手が目を覚ましてくれればいいのになとは言っていたけどな」
「そうか……なあ修、俺達で探しに行かないか? もちろん陽が暮れるまでだけど、友達としてできることはしたいと思うんだ」
「あ! それいいね! 修ちゃんが昨日やったみたいに放課後探しに行こうよ!」
突然霧夜がそんなことを言い出し、真理愛もそれに賛同する。俺は片眉を吊り上げた後、弁当に入っている卵焼きを口にしながらふたりへ言う。
「やめとけって、警察もウロウロしているし集団下校もある。抜け出して探しに行ったら補導されるだけだぞ」
「でもでも! 修ちゃんは心配じゃないの? だから探しに――」
「そりゃ当然シンのパイだ。だけど、俺は昨日のことがあって目をつけられているから難しいよ。警察も動いているから待つしかないって」
「むう……」
納得のいかない感じの霧夜の顔を見てすまないと思いつつ弁当を食べ続ける。
ただの誘拐事件でも怖いのに、魔法が使える向こうの世界の人間が関わっているので、何が起こるか分からない。意識を失った人たちが目を覚まさないのも気になるし、ふたりが消える、もしくは意識不明の重体になるのは勘弁していただきたい。
結局、真理愛はむくれたまま昼食が終わり、下校時刻となる。今朝、先生が言っていた通り集団下校となり、さらに部活も無い。異常ともいえる人数がぞろぞろと学校を出る中、真理愛が口を尖らせる。
「これだけいたら抜け出せると思うんだけどなあ……修ちゃん冷たい!」
「はあ、まだ言ってるのか? とりあえず帰ろうぜ」
「はは、でも修の言う通り、何かあったら危ないのはそうかもな。おっと、俺はこっちだからまた明日」
霧夜はそう言って別れ、俺は真理愛と一緒に家へと向かう。
「……それじゃあまたね」
「おう。あまり考えるなよ」
八塚のことを心配して、落ち込む真理愛はいつもの元気はどこへやらと言った感じで弱々しく微笑みながら手を振る。玄関に入っていくところまで見送ったところで――
<帰ったか、行くぞ>
「ああ。元気のない真理愛とか見ていられねえからな。<屈折>」
庭から出てきたスメラギを肩に乗せると、俺は思い出した気配を消す魔法をかけて再び町へと向かった。
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