現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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思い当たることひとつ

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 「それじゃ、なるべく家から出ないように過ごすんだぞ? 今ならゲーム三昧を許してやる。今はいいよなあ……先生の時代は対人戦と言えばゲーセン――」
 「きりーつ、礼!」
 「あ、木塚! 今いいところなのに! くそ、連休は教員が見回りをしているから補導されるんじゃないぞ!」

 ――結局、次の日の放課後も収穫はなく大型連休に入ってしまう。
 八塚が行方不明になってから三日が経過し、八塚の親父さんも度々学校に来て情報が無いか確認しているらしい。俺としても焦るところだ。警察も捜索をしているみたいだけど、廃墟や廃屋、ビルは思ったより多いので難航しているようだ。……向こうの世界の人間も気づいて移動を繰り返している可能性が高いしな。
 
 そして唯一手がかりを掴めそうなぶさ猫スメラギは八塚の家には帰らず、ウチに入り浸っていたりする。
 そうそう髭の振動で居場所がわかるという話だが、どうも微量の魔力を感知しているということが分かった。先日の病院や廃墟で髭が震えていたけど、それはイコール向こうの人間が関わっていたという証拠にもなるというわけだ。

 <うむ、美味い、美味いぞ……!! 母君は料理の天才だな!>
 
 そのぶさ猫は成果が上がらないことに不満を漏らしながらも、尻尾を大きく振って母さんが用意した焼いたブリをガツガツと頬張っていた。

 「あら、いい食べっぷりね。こっちのかつ丼も食べる?」
 「母さん、猫に玉ねぎはダメだからさ……」

 八塚家ではキャットフードばかりだったらしく、野良猫時代もまともな食事はとれていなかったので、ウチの食事は天国のようだとご機嫌だ。

 「ごちそうさま!」
 「早かったわね、あら、ロクサブローを連れて行くの?」
 「お母さん、スメラギちゃんだよ」
 「そうだったわね」

 まだ諦めていないのか……そんなことを思いながら俺は夕食を終えると、スメラギを抱えて

 <ふう……今日もごちそうになってしまった……母君には何か土産をもってこねばならんな……>
 「ネズミとかやめろよ? ああ見えて虫とか嫌いだからな。というか八塚をこの家にまた連れてくることが一番の土産になると思うぞ」
 <うむ、そうだな……お嬢、一体どこへ……>
 「さっきまでの元気が嘘みたいだな……とりあえず明日から探索できる範囲が広げられる。髭の振動は目安程度だけど、あてにしているからな」
 <うむ、後はあの運転手とやらが何か知っているはず。やつに話が聞ければいいのだが>
 「あいつか……」

 俺はあの嫌な雰囲気を持っていた村田という男の顔を思い出す。
 最後の日、あいつが送っていったのだから何かを知っているのは然るべきだが、いまだに意識が戻らないらしいのでそれは叶わ――

 「……!」
 <どうした、急に立ち上がって?>
 「そうか! だから髭が反応していたのか……なら、もしかすると……」
 <シュウよ、なんだ? なにを言っている>

 スメラギがぶつぶつと呟く俺に訝し気な目を向ける。だが、俺はひとつ今の話でピンとくるものがあり、スメラギを抱えて言う。

 「病院だ! あそこに村田は入院しているんじゃないか? で、あいつはもしかしたら向こうの世界の人間に何かされた。だから髭が反応したんだよ!」
 <おお、確かに……あれだけ人が多いところで誘拐とはおかしいとは思ったが……そういう考え方もあるか>

 スメラギは前足を顎に当てて考えるしぐさをする。見た目は可愛い。
 それはともかく明日の指針は出来たと少し気力が戻ってくる。恐らくだが魔法か何かで眠らされている可能性が高い。それなら俺の魔法<解除ディスペル>で何か起こるはず……

 「よし、明日は病院だ。ひとつずつ打ち消していこうぜ」
 <うむ>

 と、俺達が意気込んでいると――

 「修ちゃーん、スメラギさんー! 来たよー!」
 「なにぃぃぃ!?」

 ノックも無しに入って来たのは傍若魔人の真理愛だった。パジャマを着ているのでお泊りスタイルというやつだ。案の定、後ろから結愛も顔を覗かせる。

 「兄ちゃん、真理愛ちゃんが来たよ。スメラギさん、もふもふさせてー」
 <いいぞ>
 「え?」
 「あ、ああ、いいぞ!」
 「ふぎゃ!?」

 俺は慌ててスメラギを小突きながら結愛に差し出すと、ふたりに告げる。

 「それじゃそいつを連れて行ってくれ。俺は疲れたからもう寝るんだ」
 「え? 明日から休みなのに! じゃーん、これなーんだ!」
 「おやすみ」
 「ちょっとは見てよー! ほら、トランプ、三人でやろう? 楽しいよ」

 家から出られないと聞いて、こいつは夜更かしをする方向に決めたらしい。だが、明日から探索をしなければならない俺は布団をかぶる。

 「……」
 「あ! ダメ―!」
 「うわ、ちょ!? 真理愛!?」

 急に布団に潜り込んできて俺の体を揺さぶる。柔らかいものが背中に当たり、俺は布団を剥いで起き上がる。

 「やめろ!? ……ったく、仕方ないな、一回だけだぞ?」
 「うん!」

 放っておくと何をされるかわからん……俺は仕方なく付き合うことに。
 だが、それがいけなかった――
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