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村田の証言を
しおりを挟む「寝起きで悪いが、八塚が居なくなった日に覚えていることを話してくれないか?」
「どうだったかな……」
俺が少し強引に脅かしたので腕を組んで考え出す村田の言葉を待つ。正直こいつが何も覚えていなかったら手詰まり感が強い。とはいえ、魔法で操られていたらその限りではないので五分……焦りを抑えていると、村田が口を開いた。
「……そういえば前の日、パーカーを来た変なヤツが俺をじっと見ていたんだ。男か女か分からないな、と思っていると不意に右手をかざしてきたんだ。そしたら頭ん中がふわっと軽くなった気がして――」
村田が言うにはそのあとの記憶は曖昧で、気づけばその人影は居なくなっており、そのまま休日の洗車を終えたのだそう。
「そうだ……で、次の日の朝、あくびをしながら車に乗っていて、お嬢様が乗ってきた時に頭の中で『彼女を連れてきなさい』って声が頭で響いたんだ! そしたら頭がぼーっとして勝手に車を走らせていた。自分が自分じゃないみたいだったな」
「!? なら、記憶はあるのか! おい、八塚をどこへ連れて行った!」
「ガキ、口の利き方に気を……」
<いいから話せ! 貴様、目を抉られたいか!>
「な、な!? ね、猫が病室に!?」
「そっちかよ!? いいから言え、もうかなり時間が経ってんだぞ!」
俺は村田の襟首を掴んでガクガク揺らすと、目を白黒させて村田が口を開く。
「わ、分かったから離せ!」
「よし、嘘だったり適当なことを言ったらすぐわかるからな。その時はこうだ」
俺は近くにあったパイプ椅子を掴むと、そのまま力任せに折り畳みんでベッドの上へ放り投げてやる。すると村田は青い顔で話し始めた。
「……くそ……確か……なんだったか……工場のような場所だったような……気がする。意識はあったが体は勝手に動いていたし、ぼんやりしていたから確実じゃないが……」
「工場……」
<心当たりがあるのか?>
スメラギの言葉には答えず俺は町の地図を頭に広げる。朝に車を使い八塚を連れて、数時間後にどこぞの駐車場で発見される距離の場所……
「候補が多すぎる……! 他に何か無かったか!?」
「うおおお!? た、確か人は居なかった……朝だったが、それでも静かすぎた、ような……」
<シュウ、また廃墟かもしれんぞ>
「……だな、それならいくつか絞れるかもしれない。工場が廃業してるのは多くない。……行くか」
スメラギが頷き、俺達は踵を返して病室を後にしようと扉に手をかける。すると、背後から村田の声がかかった。
「お、おい、マジで行くのかよ! アレがフードの野郎がやったことならかなりやべえぞ!」
「なんだ、心配してくれるのか?」
俺が首だけ曲げて目を細めて笑うと、村田はぐっと口を噤む。しかし、悪態をつきながら俺に言う。
「……携帯番号でもSNSでもいいから教えろ、俺もお嬢が居なくなったら仕事がなくなるからな」
「はっはっは、確かにそうだな。こいつと同じか」
<こいつと一緒にするな。急ぐぞ>
「ああ……!」
俺は村田に番号とREMEというメッセージアプリのアカウントを教えてから気配を消しつつ病室を出た。
<どっちだ?>
「こっちだ、一回で当たってくれたらご苦労さんってところだな!」
車で行ける距離で大きな工場のような場所があるのはここからだと港と山に近いところにしかない。さらに絞ると見つかったのはスーパーの駐車場なので、そこから比較的近いのは港の方だと思った。
「タクシー!」
病院から出ると乗り合いにいたタクシーを一台捕まえて後部座席に乗る。
「病人にしちゃ元気な坊主だな! 猫はシートに乗せなきゃ出してやる」
「すまない、話が分かる人で助かるよ。港まで頼めるかい?」
「港か、金さえ出せばどこにでも行くのが俺達の仕事だ。いいぜ」
タクシーのおっちゃんはなぜかニヒルに笑い、車は出発した。さて、予測が当たればいいけど……
◆ ◇ ◆
修がタクシーを拾う前、病院に向かっている人影があった。
「あれは……神緒 修君じゃないか。どうして病院に?」
「具合でも悪かったんじゃないですか?」
「だとしたらあのスピードで走れるわけないだろう? ……何かあるのか」
そう呟いたのは廃墟で修に話しかけていた刑事、若杉だった。彼は一度起きない村田の様子を見るため病院に足を運んでいたのだ。
「まあいい、とりあえず行くか」
そして村田の下へ行った若杉は、慌てて病院から出て車に乗り込んだ。
「修君は恐らく村田のところへ行っていた……! 彼はお嬢さんを探す手がかりを聞きに来たのだろう。彼を追うぞ!」
「わ、分かりますかねえ」
「無線で呼びかけろ! タクシー会社とナンバープレートを照会してもらえばタクシーも無線でわかるだろうが! あの廃墟ではやはり何かあったな……? 無茶するなよ、修君――」
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