現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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過去の記憶

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 「シュウ兄ちゃん、行っちゃうの……?」
 「泣くなフィオ、必ず帰ってくるから。エリク、フィオを守ってくれよ?」
 「う、うん……! 絶対帰って来てよ! 僕、まだシュウから一本取ってないんだから!」
 「おう! それじゃ行ってくるぜ!」

 ――俺は向こうの世界で、特別なことなど何も無く、十六歳まで普通の町で普通の生活をしていた。そんなある日、何かの天啓だかお告げにより、俺が勇者に選ばれたと国からの使いが来た。
 なにかの間違いだと思ったものの、どうしてもというので付いていき、謁見の間で国王様と初めて出会った。

 「ネティラの町のシュウ」
 「はっ」
 「先日、我が国の聡明な賢者が神の声を聞いた。それによると、お前はこの世界を救う勇者だとのこと」
 「勿体ないお言葉です。……しかし、私にそんな力があるとは思えないのですが……」

 一応、そう言っておく。
 実際、町では実家の雑貨屋でのらりくらりとしていたので剣を握ったことも無ければ魔物との戦いなど恐ろしくてやったことは無い。なので、勇者と言われても戦えるとは思えない。

 しかし俺の言葉を聞いた陛下は顎で横に立っていた男に指示を出すと、やがて俺の前に一振りの剣が差し出された。
 
 「それは聖剣‟セイクリッドギルティ”というらしい。天の声が示した場所を探したところ、これが発見された。故に、あの言葉は真実だと思ったのだ」
 「聖剣にしては随分傷んでいますね……」

 差し出された剣を見て頬を掻く俺。
 さび付いていて、切れ味が悪いどころか石でも叩いたらぽっきりいってしまいそうだと思う。

 「持ってみよ」
 「え? あ、はい……」
 
 陛下に促され剣を掴み、掲げてみる。重すぎず、軽すぎず……不思議と手にしっくりくる。柄の部分はしっかりしていて、よく見れば錆が酷いのは刃の部分だけだと気づく。
 そんなボロボロの剣を見つめていると、不意にカタカタと震えだす。

 「な、なんだ……!?」
 「おお……!」

 陛下が声を上げた直後、パキパキと音を立てて錆びた表面が崩れ始め、その下から光り輝く刃が姿を現した!

 「こ、これは……!? うっ……!?」

 その直後、俺の頭が割れるような痛みを発し、思わず目を瞑る。そして浮かんでくるイメージ……。
 どうやらこの剣はかなり前から存在しており、歴代の所持者の力をそのまま吸収し、次代に受け継がせるらしい。

 「う……ぐ……」
 「だ、大丈夫かシュウ!?」
 「シュウ殿!」
 「だ、大丈……夫……剣技……魔法……お、俺の知らないことがあ、頭に……!」


 ◆ ◇ ◆


 「――そうして俺は歴代勇者の力を得て、ドラゴン退治へと旅立ったってわけだな」
 「ほ、本当にシュウ兄ちゃん、なの……!?」
 「マジか……死んだって聞かされていたのに……」

 カラン、とレイピアを落としたフィオと、涙ぐんだエリクが俺に駆け寄って来たので、肩を抱いてやる。

 「それにしても大きくなったなあ」
 「そりゃ十五年も経ってるもん! シュウ兄ちゃんはなんでこの世界に?」
 「俺にも分からない。つい最近まで向こうの世界の記憶は無かったからな……でも、こいつのおかげで思い出せたんだ」
 「あ、にゃんこ!」
 <勇者シュウの知り合いか。我はカイザードラゴンのスメラギという>
 「喋った!? てか、カイザードラゴンってシュウ兄ちゃんと相打ちになったっていうやつじゃん!」
 
 フィオがスメラギの前足を取って握手をする中、エリクはズザっと後ずさる。

 「今は喋れるけどただの猫だからな。まあ相打ちだったし、お互い様さ。んで、ここからは質問タイムだ。……イルギットとジグ、俺はあの二人と出会って完全に記憶を取り戻した。その時、こっちの世界の人間を誘拐していた。そして次はお前達だ。一体何が起こっている?」
 「……それは」
 「シュウ兄ちゃんでも……それは言えない……」

 俺が目を細めて聞くと、ふたりは顔を下げて表情を暗くしていた。何か弱みでも握られているのだろうか? そう思った瞬間、フィオが口を開く。

 「あ! いけない、シュウ兄ちゃん、ここからすぐに立ち去って」
 「どうした急に?」
 「実は俺達、ここの監視をしているだけで、責任者じゃないんだ。あいつが戻ってきたら――」
 <……!? まずい、避けろシュウ!>
 「んな!?」

 スメラギが叫んだ瞬間、俺は地面を蹴って大きく後ろに交代する。直後、俺の居た場所に酸のような液体が降って来て地面を溶かす。

 「誰だ!」
 「くく……威勢のいいガキだな。フィオ、エリク、何を談笑していた? お前達の任務を忘れたのか? お前達を溶かしてもいいんだぞ」
 
 空に浮かんでいる人物がそんなことを言う。俺の記憶には無いその男が、蔑むように俺を見ていた――
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