現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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絶望と希望

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 「シュウ兄ちゃん!?」
 【くくく、<古の業火ヘル・ファイア>は骨まで溶かすぜ? まあまあ頑張った方だが、魔族相手には足りなかったな。さて……】
 「く、来るか……!?」
 「こ、この人たちは守らないと」

 【それは無理ってなものだ。エリクはほかの奴らと一緒に生贄……フィオ、お前は俺が飽きるまで苗床として遊ばせてもらうぜ】
 「い、いやよ気持ち悪い!」
 【すぐに考えが変わる、安心し――】

 「だりゃぁぁぁぁぁ!!」
 <おおおおおお!>
 【なんだと!? ぐあ!?】
 「シュウの兄貴!? ぶ、無事だったのか!」
 「ああ! ちょっと危なかったがな……」

 エリクの叫びに大声で応えるが、全身からブスブスと焦げた匂いと煙が立ちのぼる。投げつけたスメラギも、毛がところどころ焦げてしまっていた。
 咄嗟に防御魔法の<光の壁ライトウォール>を使ったけど、この魔法はかなり高位の魔法で、使い手の技量に左右される。完全に防げなかったところを見ると、俺の力はやはり完全ではないようだ。

 【離れろクソ猫が……! なんなんだこいつは……俺の皮膚を切り裂くだと?】
 <ぐぅ……!?>
 「ナイスキャッチ俺! やるじゃないかスメラギ」
 <し、しかし、ほんの少しだけだ。次にあの魔法を使われたら終わるぞ……!>
 「シュウ兄ちゃん!」
 「こっちはいい! お前たちは早く離れろ!」

 青い顔をしたフィオに叫ぶと、こくこくと頷きエリクと共に奥へと消える。すぐに魔族へ眼を向けると、先ほどまでにやついていた表情が、どきりとするような冷たい真顔に変わっていた。

 【まさか古の業火ヘル・ファイアを防ぐとは思わなかった。それにその猫もただの猫ではないな。勇者、か。大したことがないと思っていたが、これから成長されると厄介だ、さっさともう一度死んでもらおうか】
 「……やれるもんならやってみな!」
 【ふん!】
 <来るぞ!>

 挑発をした瞬間、やつは俺めがけて勢いよく降下してきた!
 
 【死ね!】
 「うおっと!? おらぁ!」
 【くくく、なんだその貧弱な攻撃は! シャァァ!】

 ぐ……!? 魔族の顔を殴ったものの、ゴムタイヤを殴ったような感触がしただけで、怯みもしなかった。逆に爪でズタズタにされ、俺はたたらを踏んで後ろに下がる。

 【あの二人を逃がすために挑発したつもりだろうが、そうはいかねえ。魔法が防がれるとなれば、この爪で切り刻むのみ】
 「く、くそ……! だああああああ!」
 <だ、ダメか……!? ぐは!?>
 【はっはっは! 勇者がいいざまだなぁ!】
 
 爪を受けながら殴り、折れたレイピアを拾って突いてみるも文字通り歯が立たない。スメラギも飛び掛かってくれているが、皮膚を強化したのかスメラギの爪は通らなくなっていた。
 そのうち、一方的に攻撃され意識が遠のいていく。 

 「まだ、まだあ……」
 【頑張るなあ、おい。さっさと死んで、楽になろうぜ!】
 <倒れるなシュウ! お前が倒れたらお嬢は……あの二人はどうなる……!>
 【しつこいってんだ!】
 <がふっ!?>
 「ス、スメラギ……!?」

 尻もちをついた俺の目の前で、スメラギの体を長い爪が貫通し、血を吐いた。
 魔族はそれを俺の方へ投げ捨てると、スローモーション映像を見ているかのように、ゆっくりと飛んでくる。

 【満身創痍でこの距離なら確実に死ぬだろ? じゃあな<古の業火ヘル・ファイア>!】

 スメラギをキャッチしようと手を伸ばした瞬間、魔族が手をかざして炎の渦を吐き出した。これは……死ぬか……
 親父、母ちゃん……結愛……真理愛……霧夜……近しい人間たちの顔が思い浮かぶ。
 俺が死んだら止めるやつはいない……こいつらはこの世界に侵攻するだろう。もしかしたら銃火器であれば倒せるかもしれないが、人知れず誘拐できるため犠牲はもっと増える。
 
 それが結愛か真理愛か……
 
 そんなことを考えていると、手の中にスメラギがおさまり、その瞬間、俺の体は炎の渦に飲み込まれた。

 ◆ ◇ ◆

 【ハハハハハハハ! あばよ、自称勇者!】

 燃え盛る炎を前に、魔族が高笑いをしてシュウとスメラギが居なくなったことに歓喜する。そしてすぐにフィオとエリクが逃げた先に目を向けた。

 【さて……つまらない時間を使ったな。いい加減成し遂げるかねえ! これで俺は上級に昇格できるぜ。笑いが止まらないとはこのことだ! ハハハハハハ!! ……は?】

 炎の渦に背を向けた瞬間、ゴトリ、という音ともに魔族の左腕が地面に落ちた。何が起こった理解できず、青い血を流している腕を見た後悲鳴を上げた。

 【うおわあああああ!? う、腕が!? い、いてぇ……! い、いったい何が――】

 そういって振り返った魔族の目に、炎の渦が吹き飛ぶ瞬間が映る。

 そして、巨大なドラゴンと剣を携えたシュウが立っていた――
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