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魔王と国王と妹
しおりを挟む<国王の自室>
「勇者が向こうの世界で転生していたとはどういうことだ!」
【言葉通りだ、人間の王よ。勇者シュウとやらにこちらの手駒がやられた】
「馬鹿な……だましていたことを悟られぬようにドラゴンと相打ちに持って行かせたというのに……」
【ふん、狡猾だな。魔族よりも魔族らしい】
フィオやエリク、そして転生前のシュウの故郷“ウルグファイン国”の国王ゴーデンは魔王と魔法水晶を通じて話をしていた。
「うるさいぞ!」
【そんな口を聞いていいのか? 俺が攻めればお前の国などすぐに消え去るぞ?】
「その代わり向こうの世界へ行くことはできんがな……」
【チッ、聞かなかったことにしてやる。だが、扉は閉じてしまったようだが手はあるのか?】
魔王が苛立たし気に尋ねると、ゴーデンは鼻を鳴らし、目を細めてから答える。
「……手は、ある。向こうからこちらの兵士が三人、帰ってきていない。その魔力を辿って扉を開けるはずだ。扉は一度開いて人という『点』と魔力という『線』があれば膨大な魔力で数分開ける」
【膨大、ね。どれくらい必要なのだ?】
「三人は犠牲にせねばなるまい」
【……仕方あるまい、擬態した魔族をそっちに向かわせるからそれで開け。魔族の魔力量は人間より多い。簡単には死なんからな】
「それは助かる。あまり兵を減らすわけにはいかんからな」
【そのまま魔族と人間を送れ。聖女を探すためにな】
「分かっている」
魔王との通信を終えると、ゴーデンは水晶を叩き、繋がっていないことを確認してからワインを片手に独り呟く。
「……向こうの世界……聖女が見つかったらしいが、勇者が邪魔をしたのか……もう少しすんなりいくと思ったが、上手くいかんものだ。向こうで魔法は使える、政治や国のことも概ね戻ったものから聞いた。ニホンという国だけでも行き来できればこっちの世界を征服することも可能か?」
◆ ◇ ◆
「どう思う?」
「んー、わたし達が小さいころ遊んでいた公園でしょ? 今までそんな噂は無かったし、見たこともないから怪しいよね」
「ま、確かにな」
霧夜達と別れて真理愛と家路についている途中、俺が尋ねると、真理愛は指を唇に当てて先ほどの返事を返してきた。
フィオ達の話を聞いてみると、シェアハウスに住む女の子が言うには街灯が点灯し始めるころに公園を歩いていると、どこからか『置いてけ……置いてけ……』という声が聞こえてくるらしい。
ちなみに公園とは言っても結構広く、昔は城があったとかでお堀があり、そのお堀の近くで声がするのだそうだ。
「うーん、お堀で『置いてけ』かあ。おいてけぼ――」
「それ以上はダメだ真理愛。っと、噂の公園だな……」
「にゃーん」
「どうしたのスリート?」
公園の入り口で立ち尽くしていると、ざわついた風が吹き、真理愛に抱っこされているアイスドラゴン猫のスリートが入り口奥を見て一声鳴いた。
「……なにかあるのか?」
「にゃー……」
「みんなが居ないけど行ってみる?」
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「スメラギさんが必要なの? でも、そうだね。わたしだけじゃ何かあった時になにもできないから帰ろうか」
真理愛がそう言って笑った瞬間――
「ひゃぁいぁあぁあん!?」
「修ちゃん今の声!」
「ああ、あの情けない悲鳴は結愛だ……! くそ、なんでこんなところを……って、そういや中学からだと帰りはここを通った方が近いのか!」
「にゃ!」
「あ、スリート!」
「いい、先行してもらう! 真理愛は若杉さんに電話を頼む、行くぞ」
「う、うん……!」
せめて一緒に居たのが霧夜ならと思うが、仕方ない。俺と真理愛はスリートの後を追って公園の奥へと向かった――
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