現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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母ちゃんの疑念

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 「母ちゃん車を出してくれ、霧夜とエリク達のところへ行きたい!」
 「早かったわね……ってスプラッタ!?」
 「ふにゃー!?」

 俺は車で待っていた母ちゃんの下へと急ぎ、窓越しに話しかけると母ちゃんとスリートが俺を見て飛び上がって驚いていた。すぐに助手席に回り込むとウルフを膝に置いて事情を話す。

 「俺はかすり傷だけど、こいつは手当てしたい」
 「また拾ってきたの? ズタボロじゃない」
 「にゃーん……」

 スリートがなにかを察したのか心配そうにウルフの毛づくろいと傷を舐め始めていた。その様子を見ながらシートベルトを締めて母ちゃんに言う。

 「こいつは殺されたあの親子が飼っていた猫なんだ。このままだと野良だから連れて帰りたい」
 「……仕方ないわねえ。で、霧夜君の家はどっち?」
 「ああ――」

 母ちゃんに家の場所を伝え、その間に霧夜に電話する。
 まだ寝ていたが無事だったことに安堵し、親子の件とそれに付随する推測を話すと一気に目が覚めたのか動揺した声色で『わかった』と言い切電。
 
 ◆ ◇ ◆

 「次はエリクとフィオだ、商店街方面に頼むよ」
 「ええ」
 「テレビで見た……マジでどうなってんだ? 俺達と一緒に居たから、か?」

 間もなく霧夜を回収し、エリク達のシェアハウスへ向かう途中で霧夜が冷や汗をかきながら後部座席で呟いたので、俺はバックミラーを見ながら返答をする。

 「恐らくな。手口が人間のものじゃなく、魔法か魔族かって感じの死に方だった……。気づかれていると考えた方が対処しやすいと思う。とりあえず一旦警察署へ匿ってもらった方がいい」
 「両親は大丈夫かな……?」
 「そこは悪いが分からない。後をつけられたなら可能性はあるけど、顔を見られている訳じゃないからお前だけでもと考えたんだ」
 「後で父さんに連絡してみる」

 霧夜の言葉に頷いてしばらく車内は静寂に包まれる。
 特に妨害なども無く、エリクとフィオのシェアハウスへと辿り着くと母ちゃんと霧夜を残して部屋へとダッシュし、二人も無事回収できた。

 「向こうから敵が来たのね……」
 「恐らくな。とりあえず一か所に集まっていた方が安全だ、エリク、フィオいざという時は頼むぞ」
 「う、うん!」
 「もちろんだぜ! あんな小さい子を……絶対許さねえ……!」

 正直な話こちらへ来たのが王国側の人間であれば、まだエリクとフィオは仲間だと認識されている可能性はある。が、容赦なく殺しをする人間はそうは居ないので、ここは匿っておくのが正解だろう。

 「これで全員? 怜ちゃんは大丈夫?」
 「八塚や真理愛は昨日一緒に行動していないから大丈夫だと思う。もし知られているなら聖女で生贄予定だった八塚が最初に狙われないとおかしいしな」
 「なるほどね。親子を狙ったのは見せしめか、あんた達全員を相手にして勝てる算段があるから、一か所に集めて一気に叩くとかかしら?」
 
 母ちゃんの言う理由で合っていると俺も思う。そうなるとよほどの大物が来ていると思うので、聖剣は必要か……。スメラギをどうにかして連れ出せないかと考えたところで警察署へと到着し、車を降りる。

 「母ちゃんは家に帰ってくれ」
 「また後で来るわ、色々と必要なものがあるでしょうし、保護者がいないとね。……今のうちに寝て、夜に備えなさい。昨日の親子も深夜に襲われたみたいだし?」
 「ごめん、助かるよ。だな、交代で仮眠をとるよ」

 母ちゃんがそんなことを言いこの場を去り、車は警察署を出ていく。俺達はそれを見送った後、警察署へ入るべく歩き出すが――

 「さて、宇田川さんか若杉さんが居るといいけど……」
 「おい、修! あの救急車!」

 霧夜に肩を叩かれて指さす方を見ると、ブランダが降ろされているところに出くわし、タイミングがいいと即座に駆け付け、救急隊員に話しかけた。

 「すみません、若杉さんからの依頼ですか!」
 「うん? 君は……ああ、例の勇者ってやつかい? その通りだ、君たちを見かけたら保護するように言われている。こっちへ」
 「はい!」

 ブランダはまだ目を覚ましていないか、と横目で見ながら後についていく俺達が案内されたのは警察署内……ではなく、体育館のような場所だった。

 「ふえーでけぇな」
 「俺の部屋の何倍あるんだ?」
 「武道場なら広いし、万が一なにかあっても動きやすいだろう、人は事務所にも居るから困ったことがあれば呼んでいいよ。しばらくしたら若杉警部と宇田川警部補が来るはずだ」
 
 あの二人が来てくれれば心強いと考えていたその時、フィオが声をあげる。

 「あ、すみません! この子を治療したいんですけど……」
 「猫か……今の僕達にはどうしようもないね。獣医さんを呼んであげるからもう少し待っててくれ、見た感じ傷は多いけど致命傷は無いみたいだし」
 「わかりました……」
 「ウルフ、死ぬなよ?」
 「ふしゃー……」

 ズタボロのサバトラ猫は復讐に燃えた目を俺に向けながら一声鳴くのだった――
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