現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

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八塚家に忍び寄る影

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 「……」
 
 八塚邸に忍び寄る人影。
 性別も分からない二人組は顔を見合わせて頷くと、家の玄関付近に移動し、様子を伺う。フードを目深に被り表情は見えないが計画が上手くいったという感じで口元に笑みが浮かぶ。
 そこでリビングから話し声が聞こえてきたので、人影は耳を澄ませて庭へ侵入する――

 「今日は遅いんですか?」
 「はい! 今日は急な仕事が入ったので。それでももうすぐ帰ってくると思いますよ」
 「あー、なんだ……話を聞いている限りお前も危ないのに一人ってマズくないか?」
 「警察の方が巡回していますし、防犯対策もあります。魔法に対してはどうかわかりませんけどね。電話もあるし、この子もいますから」
 
 怜はそう言ってスメラギを抱え上げると相変わらず不細工な鳴き声を上げる。

 「ぶにゃーん」
 「可愛いですねスメラギさん! あなた、ウチもやっぱり猫か犬を飼いましょうよ」
 「俺達はなんだかんだで忙しいから世話できねえだろ? とりあえず頼りになる人を呼んだから来るまでお邪魔させてもらうぜ」
 「ありがとうございます! そうそう、今は部活で事件調査を――」

 そんな会話が聞こえ、外の二人はほくそ笑む。

 「聖女に女、それと男一人だけのようだな」
 「こっちの人間に後れを取るようなことは無いと思うが、楽できることに越したことは無いな」
 「行くか」
 「んー、臭うな」

 二人組が窓を割って押し入ろうとした瞬間、背後で声が聞こえ、二人がそちらへ振り返ると缶を手にした男が立っていた。

 「こんな時間に他人の家に訪問か? 趣味が悪いな」
 「……何者だ? 今なら見逃してやる立ち去れ。まだ死にたくはないだろう」

 声の調子は楽しげだと感じ、酔っ払いだろうと追い払うためダガーを見せつける。だが、缶を持った男はそれを見たにも関わらず、男は庭へと近づいて――……

 「まあ、死ぬわけにはいかねえな。母ちゃんと子供たちを悲しませることになっちまうからな……」
 「……!? き、貴様、それは一体!?」
 「馬鹿な、この世界で武器を持つことはできないと聞いているぞ!」
 「『この世界』ね、やっぱお前達は向こう側の奴等か」

 缶を捨てた瞬間、男の手には常人では両手ですら扱うのが難しいであろう大剣が握られていた。すぐに危険を察知した二人組は男へと躍りかかっていく!

 「何者かわからんが、我らの素性を知っているなら生かしてはおけんな……!」
 「まずは痛めつけて、殺すのは山の中でだ。ヤツが先走ってやらかしたせいで色々と面倒だからな」
 
 ダガーを逆手に持ち、身を低くして大剣の男へ突撃する二人組。
 大剣の重さを考えると、姿勢が低ければ構えて振り下ろすまでの動作をするまでに接近できると瞬時に判断した。
 その思考は正しかったが、惜しむらくは相手がそれを上回る能力を持っていた場合を想定していなかったことだろう。

 「がっ……!?」
 「ドリュン!? 馬鹿な、動作が見えな――」
 「そんなしょぼい腕で剣士なんてえのはやれねえよ。まして勇者と肩を並べるならな……ってもう聞こえちゃいねぇか」

 大剣に月の光が反射し、二人を一撃で叩きのめした男の顔が明るみになる。『向こう側』の住人を倒したのは修の父親である『神緒刃鋼はがね』だった。

 「おい、そこで何をしている!」
 「ん? ああ、俺は――」
 「美月おねーちゃんが言っていたやつかな! 足を止めるよ<フリージングスピア>!」
 「あ、待つんだ優麻ゆうま!」

 突如現れた親子連れに返事をしようとしたところ、女の子が手のひらから氷の矢を刃鋼へ向けて発射され、慌てて大剣を振って魔法を打ち消した。

 「魔法かよ! お前達も向こう側の奴等か!」
 「防いだ!? 優ちゃんびっくり! 次は大技で――痛い!?」
 「待てと言っているだろうが。敵意は感じないのと、足元の二人……あなたは一体?」
 
 娘を拳骨で止めた男が目を細めて尋ねてくると、玄関が開いて中に居た怜達が現れ、倒れた人物と大剣を持った男と親子連れを見て目を白黒させる。

 一番最初に口を開いたのは――

 「神緒君のお父さん!?」
 「仁さん!」
 「優麻ちゃんだ♪」

 ――三人同時だった。
 刃鋼は頭を掻きながら大剣を地面に置き、男二人を縛り上げ始め、怜達に目を向けて告げる。

 「怜ちゃん、いつも修が世話になっている」
 「あ、はい」
 「知り合いですか?」
 「美月さんこの方はさっき話した、異世界の勇者が転生した修君のお父さんなんです。でもその剣……」
 「話は後だ怜ちゃん。スメラギを貸してもらえるか? それと仁、だったか? あんたは腕が立ちそうだ、俺と一緒にこいつらを警察署まで運んでくれると助かる」
 
 刃鋼の言葉に仁と呼ばれた男が頷き、一人を抱えてから口を開く。

 「……わかった。とりあえずミツキ達も同行させたいがいいか?」
 「だな、怜ちゃんもスメラギと一緒について来てくれ、他に刺客が居ないとも限らない」
 「分かりました、そこに修君も?」
 「ああ、今戦っているはずだ。だけど、決着をつけるためにはスメラギの力が必要でね」
 「ぶにゃ!」
 「スメラギの? 普通の猫だと思うんだけど……」

 怜はスメラギを正面に見据えて怪訝な顔をするが、刃鋼は笑いながら男を抱えて言う。

 「ま、それは到着してからのお楽しみだな! 車を用意してある、行こう」
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