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空虚な次のステップへ
しおりを挟む親父が床に転がした二人組はパーカーを着ており、こちら側の人間を思わせるが――
「こいつら、向こう側の人間か?」
「そうだ。エリクとフィオは見覚えがあるはずだが……」
「……ああ、王宮魔法使いのドウドゥと二級騎士のワクティンだ。ワクティンはフィオの同僚だぜ」
「うん。魔法使いとセットでこっちに来るように指示されていたから私はエリクを選んだの」
そういやイルギット達もツーマンセルだったか? フィオの言葉に廃ビルでの戦いを思い出していると、母ちゃんが話を進める。
「前は四人……いや、モーリジェンゴが居たから五人来ていたわ。でも今回はこの二人と消滅した魔族だけみたいなの。向こうも焦ってきたのかしら?」
「ちょっと待ってくれ母ちゃん。その言い方だと王が魔族と繋がっているように聞こえるぞ」
「そうだと思うからね。『たまたま』同時期に向こう側の人間と魔族が一緒に来る確率って低いわよ? 魔王がずっと見張っているならまだしも、国王だって馬鹿じゃないわ。前回、モーリジェンゴに魔族が憑依していた時点で考えていたし」
……確かに、魔族が知っているならこの二人を殺して魔族だけでこっちへ来ることもできるな、実際強敵だし。あ、もうすぐどうのうこうの言ってたのってこいつらまさか――
「まさか八塚を狙っていたのか!?」
「気づくのが遅いぞ修……」
「いや、だって親父が連れてきているのもよくわからなかったし、仁さんとか居てごちゃごちゃしてたから頭から抜けたんだよ」
俺はバツが悪いと言った感じで顔を顰めていると、ジト目の八塚が俺に向かって言う。
「ふーん、修君の中で私ってその程度なんだ? 真理愛や結愛ちゃんの時みたいに心配してくれないのね」
「ひゃひゃひゃ、甲斐性がありませんねえ!」
「そんなことはないって! 後、うるさいぞ羽須お前の勝手な行動のせいでここに来ざるを得なくなったの忘れるなよ? つーか女の笑い方じゃねぇだろ!?」
足の裏を拍手のように叩き、しまパンを露わにしながらゲラゲラと笑う羽須に怒鳴りつける。霧夜はゴクリって顔をするな。羽須だぞ?
「まあ、怜ちゃんは旦那が見に行っていたから勘弁してね。ま、結論だけど必ずどこかに固定された『扉』が開く場所があるはずなのよ。それをこいつらから聞く。で、その間、事件調査部にはやって欲しいことがあるの」
「なんですか?」
「……ここにはカイザードラゴン、アイスドラゴン、そしてサンダーバード……もといサンダードラゴンが集まっている。恐らく残りのドラゴンもこの町のどこかに居るはずだからそれを探してほしいわ」
「あー……」
<ふふ、カッコイイだろうお嬢>
八塚がスメラギを見上げると、不敵に笑いながらそんなことを口にする。だが、八塚はお気に召さないようで、
「ふかふかしていないし、大きすぎるからちょっと……」
<はうあ!?>
あえなく撃沈していた。
それはともかく、ドラゴン探しは確かにアリだと思う。なんだかんだで髭探知機になるし魔力も多いから『扉』を開くための鍵にもなりうるからだ。
「じゃあスリートもこっちのスメラギにちょっと似ている猫さんもドラゴンなのかしら?」
<ええ、そうですぜ>
<仇が取れたから、俺はなんでもいい……カハッ!?>
「ああ、無理しないで!? 全員喋ったら疑いようもないわね」
血を吐いてぐったりとなったウルフは、羽須の膝から背中を優しく撫でてくれる八塚の膝に移動して口を開く。
<しかし見つけるのは至難の業かもしれんぞ? 俺はあの親子が殺されたときに覚醒したが、もし他のドラゴンが転生していたとしても猫とは限らないし、覚醒しているかもわからない>
「ま、そこは考えてあるから大丈夫よ。あんたは動物病院でしばらく大人しくしていなさい。宇田川さん、この子ウチで飼うけどいいですよね?」
「へ!? あ、ああ、構いませんよ。若杉には俺から言っておきますので」
呆然と聞いていた宇田川さんが急に声をかけられて飛び上がって答え、襟を直しながら言う。
「……とりあえず長谷川を捕えたのは大きかった。犠牲はあったが、短い期間で逮捕できたのは僥倖と思うべきだろうな。……よし、こっちは大丈夫みたいだし俺は署に戻って報告をするぜ、若杉さんもそろそろ戻ってくるらしいしな」
そう言って武道場を出て行く。
キャバ嬢殺人犯と同じかどうかを調査しなければならないのでここから若杉さんと宇田川さんの本領発揮となるので頑張ってもらいたい。
「……さて、それじゃそろそろ撤収しましょうか。そっちの眼鏡の子は私が家に送っていくわ」
「頼む」
「これで解決、ですかね。いやあ、恐ろしいことがあるもんですねえ! これは新聞部の血が騒ぐ……! 記事にはできませんが、濁した感じで――」
「やめろ。親子が死んでいるんだ、そっとしておこうぜ」
「……そうですねえ」
霧夜が羽須の頭をはたいて注意すると、元気に捲し立てていた羽須が困った顔で泣きそうになりながら一言、呟いた。
一歩間違えば自分がそうなっていたということは頭で分かっているのだろう、だからこそ空元気と虚勢で耐えていたのかもしれない。
そこでふと八塚がスメラギの足元で俺に声をかけてきた。
「ところでスメラギは戻るのかしら?」
<我はこのま――>
「聖剣を戻せばこの通りだ、安心してくれ」
<あああああああああああ>
聖剣を消すと、スメラギはあっというまにただの猫に戻り、二本足で立って前足を見て絶叫する。
<また……>
「良かったあ♪ お話しできるようになったのは嬉しいかも? それじゃ帰りましょうか!」
<スメラギの旦那……>
――そして俺達は武道場を後にし、この事件は幕を閉じた。
異世界の二人組は一旦警察で預かってもらうことになり、明日以降、両親が問い詰めるのだそうだ。
仁さんという異世界の勇者、八塚家と交流のある企業の美月さん、敦司さん達という新しい知り合いを得て『向こう側』へのカウンターアタックの準備に入っていく。
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