現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く

八神 凪

文字の大きさ
86 / 115

保健所へ行こう!

しおりを挟む
 「それじゃあ行ってきまーす! 最近出かけていなかったからお小遣い貯まっているのよね♪」
 「気を付けてね。一応解決したとはいえ、模倣犯とか変態とか変質者とか変態が居るからね」
 「変態が多いよ!? 夕方には帰るから! それじゃ行ってくるわねスリート、ウルフ」
 
 午前九時。
 結愛は友達との約束とやらのため出かけていく。出がけに二匹の猫にしか声をかけていないのはファイヤードラ猫は俺の部屋に隠しているからだ。
 まあ、別に見せてもいいんだけどビジュアル的にキツイものがあるので一旦隠そうということになった。

 「ふあ……元気だな」
 <昨日はブラッシングをしてくれていた、良い娘だ>
 <俺は風呂でしたぜ>
 「お前ら結愛と真理愛に可愛がられまくってんな。おい、ファイヤードラ猫、出てきていいぞ」

 廊下に声をかけると、尻尾以外の毛がすっかり刈り取られた猫が入って来て餌と水を口にする。

 <なんで俺は後からなんだ……>
 「お前のビジュアルは女子中学生には刺激が強すぎるんだよ。親父、とりあえず保健所にはスリートを連れて行くけどいいか?」
 「おお、そうだな。猫を飼っているアピールをすれば引き取りやすくなるはずだ」
 <出かけるのか? 俺もそろそろリハビリをしたいところだが……>
 
 まだ片足を引きずっているウルフが伸びをすると、母ちゃんが抱き上げてしかりつける。

 「あんまり無理しちゃダメよ。あの親子もあんたを大事にしていたんでしょ?」
 <まあな……>
 「ま、時間が出来たら散歩くらいには行こうぜ。俺達もそろそろ出るかい?」
 「そうだな、十時になったら出よう」
 <俺もこの姿じゃびびられるか>
 「虐待を疑われたら嫌だし頼む」

 というわけで、今日は母ちゃんとウルフが留守番となり俺と父ちゃん、それとスリートで保健所へと向かう。ダメ元だけど、母ちゃんの言う通り、野良猫なら居てもおかしくはない。
 車に乗り込んだところで、ちょうど真理愛が家を訪ねてきた。

 「あれ? 修ちゃん今日はどこか行くの?」
 「おはよう、真理愛。ちょっとドラ猫を探しに行くんだ、スリートは連れて行くけど、ウルフとファイヤードラ猫は家に居るから母ちゃんと遊んでていいぞ」
 「えー、それならわたしも一緒に行っていい?」
 「そりゃいいけど、あんまり面白くないかもしれないぞ」

 特にこいつは猫が好きだから全部引き取るとか言いそうだし。

 「だいじょうぶ! おじさん、いいよね?」
 「もちろんだ。昼は好きなもの食べようか」
 「やったー!」
 「真理愛には甘いなあ、親父も母ちゃんも……」

 ま、危険はないし問題ないかと俺は後部座席に座る真理愛をバックミラーで見ながら肩を竦める。
 
 「お前、友達と遊んだりしないのか?」
 「え? 今日はみんな忙しいって言ってたかなー。怜ちゃんも家族でお出かけだって」
 「ああ……昨日言ってたなあ」

 真理愛は俺達にべったりだからたまに心配になるんだよな、高校卒業したらどうするんだろう。……いや、それは俺もか。
 ま、とりあえず『向こう側』のケリをつけた後のことなのでまだいいかと俺はスリートとはしゃぐ真理愛を見ながら考える。

 やがて来るまで30分ほどの場所に位置する保健所に到着すると俺達は早速中へ入り、受付で親父が声をかける。

 「すみません、猫の引き取りを相談しに来たんですけど」
 「あ、はーい。……その猫ちゃんを手放すんですか?」
 
 女性職員さんだったが、真理愛連れているスリートを見て不機嫌な顔になり、俺達が捨てに来たのだと思っているのだろう。
 段々預ける人間が増えていると聞いたことがあるし、その気持ちはわかる。しかし、そこで真理愛が口を開いた。

 「違います! 猫さんを探しに来たんです! この子と同じ猫が居るかもと思って」
 「え? あら、そうなの? 野良猫だったのかしら?」
 「はい。兄弟猫が居たと思うんですが、もしかしたらと思って。まあ、分からないんですけど……」
 「そういうことなら大歓迎よ! ……と言いたいところだけど、ちょうど今、犬猫を引き取りたい人が居てトラックに乗せたところなのよ。ウチにはもう殺処分待ちの動物は居ないから、ごめんなさいね」
 「マジでか!?」

 え? 結構な数が収容されているはずだけど……? それを全部? 身元がはっきりしていないとそういうのって難しくないか……?

 「あ、引き取ってくれたご夫婦があちらよ」
 
 そういって職員さんが目を向けた先には、若い夫婦が笑顔で歩いていた。

 「いやあ、隣町まで来たかいがありましたね住考さん!」
 「だな、これでまた賑やかになるぞ」
 「コテツ達が先輩風を吹かすのが楽しみですよ」

 夫婦、なのか……? 女性は真理愛より小さいんだけど……あ、いやそれどころじゃない!

 「すみません、ちょっといいですか!?」

 俺は慌てて夫婦に駆け寄った――
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...