最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第一章:旅立ち

その11:冥王は労働で金を得る

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 「いやぁ!」
 「くっ……に、逃げろ……どうしてこんな森の浅いところにレッドアイが居るんだ……」

 声が近くなってきたところでレッドアイという名前が聞こえてきて、俺は足を速める。
 レッドアイというのは赤い目をした白に近い灰色をした狼の魔物で、ジャイアントアントと同じく群れて行動するタイプだが、知能が圧倒的に違いとても賢くチームワークが抜群にいいのでゴブリンやオークが一匹で襲われたら確実に骨しか残らないくらいには強いのだ。

 うめき声に近い声で『こんなところに』とは言うが、魔族領ではレッドアイは意外とどこにでも居るので特段珍しい魔物では無いんだがな。

 俺も小さいころ一匹ペットに欲しいとイザールにねだっていた時期があるのは懐かしい思い出だ。
 そういえばイザールの正体がフェンリアーという狼魔族のトップクラス種族だと知ったのはあれが初めてだったっけか。

 「この! ……くっ、素早いわね!」
 「おっと、思い出にふけっている場合じゃなさそうだな」
 「え!?」
 「ぎゃわん!?」

 俺は現場に躍り出て、女性を襲おうとしたレッドアイ二頭を殴りつけて、その前に立ちはだかる。

 「大丈夫か?」
 「あ、貴方は……?」
 「悲鳴が聞こえたから手助けに来た、必要ないか?」
 
 俺が目を向けると女性は勢いよく首を何度も縦に振り、

 「お願いします! 助けてくれたらなんでもするわ!」
 「わかった」

 俺は答えると即座にレッドアイに向きなおりどうするかを考える。数は5匹、人間でもなんとかなると思うが、ケガをしたところを見ると不意打ちを食らったのかもしれない。
 
 さて、魔法で蹴散らすのは簡単だが人が居るので派手なことはあまりしたくないので考えを巡らせた結果、

 「これで行くか。……ハッ!」
 「グルゥゥ……?」
 
 俺は少しだけ力を解放してレッドアイに圧をかける方法を選び、徐々に威圧を強くしていく。

 「ひゅーん……」
 「きゅうん……」
 「きゃいん!?」
 「俺と戦えば死ぬことになるぞ……去れ!」
 「わおおおおん!?」

 俺が睨みながら叫ぶと、レッドアイ達は失禁し、全身の毛がボソッと抜け落ちて無残な姿になると森の奥へと逃げて行った。

 「悪いな、狩る以外ではこれしか方法を思いつかなかった。大丈夫か?」
 
 振り返って無事を確認するため声をかけてみるが返事はなく、おかしいと思って近づくと二人とも気絶していた。

 「……後ろには放っていなかったんだが……」

 やっぱり人間は脆いなと俺はため息を吐いた。

 

 ◆ ◇ ◆



 「……ハッ!?」
 「目が覚めたか、レッドアイは逃げたからもう安心だ」
 「あ、ありがとう……? なんかよく覚えていないんだけど……」
 「気にするな」

 失禁していたことは黙っておき、俺はもう一人の男について話しをする。

 「男の方も治療したらすぐに目が覚めたぞ」
 
 俺が指差した先に血だらけだった男がレッドアイの毛を集めて袋に詰めているのが見え、女性が慌てて駆けて行った。
 
 「だ、大丈夫!?」
 「おお、リア、お前も目が覚めたか! 彼にお礼は言ったか?」
 「うん。って、あれだけの怪我を治療……できたの!?」
 「俺にもよくわからないが見ての通りだ。鎧は流石にボロボロだけどな」
 「本当だ……なにを拾って……あれ? これ、全部レッドアイの毛!?」
 「……だな、皮はついていないけど量が凄い。相当な金になるぞ」

 近づいていくと男の言葉が耳に入り、相当な金になると言う。これは俺も乗っかっておくべきだと思い男に声をかけることにした。

 「おい、さっき助けたらなんでもすると言ったな?」
 「ひゃぁん!? そ、そういえばそんなことを言ったような……し、仕方ないか……わ、私は初めてだから……その、優しくしてよ?」
 「なにを言っているんだ? そのレッドアイの毛は売れるのだろう? これは俺が追い払ったのだから権利も俺にあるはずだ」
 「ああ、そりゃもちろんそうだ。助けてもらってさよならは言わないぜ? こいつは金になる、だが見たところあんたの袋はもう一杯だから俺が回収したって訳だ……でも、ちょっと分けてくれねえ? 依頼の納品で使うんだ」
 「まあ、それの価値を教えてくれた分はやるぞ」

 俺の言葉に男は親指を立てて笑い、作業に戻り、傍にいた女性が頬を膨らませて近づいてくるとよくわからないことを言い出した。

 「もう、なんでもするって言った後だから恥かいたじゃない」
 「なんのことだ? それよりどういう状況だったんだ。レッドアイは人間には……いや、やつらは強いと思うんだが二人は厳しいだろうに」
 「あー……本当はもう一人メンバーが居るのよ、その子は魔法使いで、足止めしてもらってから私達で遊撃ってパターンがお決まりだけど、体調不良でお休みしちゃってるの」
 「なら別の日にやれば……」

 俺が眉を潜めて反論しようとしたところで男が袋を担いでこちらにやって来て満面の笑みで俺に言う。

 「これがまた、体調不良ってのが三日くらい続いていて、納期限が今日だったんだよ。だから強行したんだが、まさか五匹に囲まれるとは思わなかった! 奇襲されなければトントンだったんだが……それはともかく本当に助かったよ。ああ、そういえば名乗ってなかったか。俺はバリー」
 「私はユニカよ。あなたは? さっきのを見る限りランクが高そうだけど」
 「ザガムだ、今日からEランク冒険者としてやらせてもらっている」
 「……はあ?」
 「いやいや、Dランクの私達二人でも手を焼くのを一人で退治したんでしょ!?」
 「いや、あいつらは勝手に逃げて行ったんだ、ほらカードを見てくれ」

 俺がかざしたギルドカードに顔を近づけて確認し、首を振りながらため息を吐いてユニカが誰にともなく呟く。

 「マジね……」
 「だろう? さ、俺も依頼は終わっている、町へ帰るぞ」
 「うーむ、腑に落ちん」

 バリーの呟きは無視して俺がさっさと歩き始めると、二人が慌てて追いかけてくる足音が背後から聞こえてきた。
 そのまま町まで戻り、ギルドに入りアレイヤの下へと向かう。

 「戻ったぞ」
 「おかえりなさーい! どう、初依頼は上手くいった?」
 「これで問題ないか?」

 受付カウンターにジャイアントアントの頭を入れた袋を出してアレイヤへ渡すと、彼女は嬉々として中身を確認するため口を開く。

 「おおー……結構倒したわね……やりそうな気はしたけど……」
 「なんだ?」
 「こっちの話よ! あれ? これグリーンマッシュルームじゃない、採ってきたの?」
 「ああ、これも掲示板に依頼が出ていたら納品できると思ってな」
 「抜け目ないイケメンねえ。このまま一緒に買い取ってあげるわよ」
 「助かる」
 「うん、いいわね! それじゃジャイアントアント三十匹とグリーンマッシュルーム二十本で、六千五百ルピね」
 
 キノコが一本あたり百ルピかと思いながらアレイヤから金を受け取る。どうやら一定の金額を越えると紙の金になるらしい、六枚の紙を見ながら思う。
 魔族領は金貨と銀貨だから大金になるとかさばるからこれはありがたい。

 「初依頼はどうだった? ソロでやる人って無理をする人が多いから、そのうち気の合う人が居たらパーティを組むといいわ。そっちの方がランクが低くても大きい依頼を受けられたりできるから」
 「考えておこう」

 ……勇者以外に興味はないがな。そう思っていると、別の受付で依頼完了を報告したバリーとユニカがこちらへ近づいてくるのが見えた。
 さて、あっちはどれくらいの金額になったか、珍しく少し気分が高揚している俺がいた。
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