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第二章:勇者
その15:王都のギルドにて
しおりを挟む「わははは、それでよう」
「マジか、俺はこの前――」
「こっち、ビール頼むわ」
「あ、つまみもねー」
「あれ、随分羽振りがいいね」
「いやあ、今日は勝っちゃってさー! うふふ、もう一杯飲んどこうか!!」
「勝ち筋を聞きたいね、あ、俺もいっぱい――」
――扉を潜り周囲を観察すると、ギルド内はかなり賑わっており、建物の大きさからも判断できるが先の町よりも規模が違い人も受付も多い。
飲み屋みたいになっている一角を見ると下品な笑みを浮かべた女が派手に酒瓶を空けているのを見て顔を顰める俺。
ああいう手合いは魔族にも居るが、女であれは豪快を通りこして下品だと思いつつ受付へと向かった。
「いらっしゃいませ♪ こちら空いていますよ! (おお、ラッキー、イケメン!!)」
「……」
「いらっしゃいま――」
俺は明るい髪をした女性に声をかけられて目が合ったが、隣に男性の受付がいたのでそちらへ移動した。
女性は苦手なのはあるが、この娘はアレイヤと違ってうるさそうだと思ったからで、決して小声で『イケメン』だと言っていたのが聞こえたわけではない。だが、その予想は的中することになる。
「はい、どっこいしょぉぉ!」
「――せ……ぐあ!?」
「……」
「本日のご用件はなんでしょう♪」
俺と目が合った女性が男を押しのけて目の前に立ち、にこやかに用件を尋ねてくるが、とりあえず無視して倒れた男性に
「大丈夫か?」
「え、ええ……こら、クーリいきなり何をするんだ! お前は向こうだろうが」
「すみません、ちょっと眩暈がして倒れちゃいました」
真顔でそう言い放つクーリと呼ばれた女性に魔族じみたものを感じるなと思いながら、女性へ言う。
「ここの持ち場は彼なのだろう? 俺はルールから外れるやつは好きじゃない、悪いが遠慮してもらえるか?」
「えー!? 体を使って手に入れたポジションなのに……」
「使い方が間違って……も、いないのか……? わ、分からんが持ち場に戻れ。ほら、来てるぞ」
「あ、本当だ! お兄さん、またね♪」
「……」
意外とあっさり引いたなと思いつつ、目で追うと立派な装備に身を包んだ優男と、女性のパーティが受付に来ていた。
「……全体的にランクが高そうだな、あの男、装備だけじゃなく腕が立ちそうだ」
「ん? 彼らを知らないのかい、このギルドで一番実力があるパーティなんだけど」
「昨日この町に来たばかりだから知らないんだ、Cランクってとこか?」
俺がそう呟くと、受付の男は慌ててカウンター越しに俺の口を塞ぎ、小声で焦りながら言う。
「知らないかもしれないけど彼らはBランクだよ、リーダーのウェイズはプライドが高いからそういうのは止めた方がいい。……今の、聞かれてないといいけど」
「なるほど、肝に銘じておこう」
受付と仲良く談笑する姿を見ながらプライドが高いというあたりで【炎王】を思い出し、絡まれると面倒だと思い自身の用件を済ませるため話を進めることにする。
「先ほども言ったが、俺は昨日ここに来たばかりでこの町のことは分からない。ルールがあれば教えて欲しいのと、手持ちの金が少ないので依頼を受けたい」
「ええ、もちろんいいですよ。ランクは……Eですか」
男は俺のカードを見ながら微笑み、資料を探し出したのでその間にもう一つの目的について確認すべく声をかけた。
「なるべく金になる依頼だと助かる。それと一つ尋ねたいんだが、勇者がこの町に居ると聞いてここまで来た、どこに居るか知っているか?」
「え?」
周囲の人間にも聞こえるように勇者のことを尋ねた瞬間、先ほどまでざわついていた空気が静かになり、視線が俺へ集中していることが気配で分かる。
目線だけ動かしてみると興味津々と言った感じで俺を見ているようだ。勇者の一言でこの警戒……やはり国を挙げて守っている、という感じだろうか……?
「……その、勇者のことを聞いてどうするんですか?」
「話があるんだ、大魔王メギストスの討伐が出来るかどうかを――」
「く……くく……わははは!」
「ん?」
話をしている途中でビールジョッキを持ったおっさんが笑いだし、ニヤニヤしながら俺に話しかけてきた。
「勇者かあ、兄ちゃんどこの田舎から出て来たんだ? 大魔王を討伐……はは、いや、悪い悪い、まあ会ってみてもいいかもな」
「馬鹿、田舎もの相手に適当なことを言うな、俺達まで品位が落ちる。なんの用か知らんが会っても意味は無いと思うぞ」
「なんだ……?」
最初の男と対面に座っていた男が窘めながら俺に忠告のような言い方をしてビールを飲むと興味を失ったとばかりに視線を外され、意味が解らずやや不快な気分にさせられた。そこへ受付の男が恐る恐る口を開く。
「あ、あの、勇者は確かにこの町に居ますが、今はその、依頼に出ていて……」
「そうなのか、すぐに解決する依頼か?」
「……恐らく二日は戻らないかと」
「なんだと、勇者がそんなにかかるとは面倒な依頼なのか?」
「それは……」
と、俺が詰め寄ったところで隣の受付にいた優男とメンバーが近寄ってきた。
「……ふん、Eランク風情が僕をCランクだと思ったのか? 勇者ね、僕も依頼を見たけど帰ってこれるかどうかは分からないよ。それより大魔王を倒したいのかい君?」
「……ああ。仇を取るためにな」
挑発的でややタレがちな目を向けながらニヤニヤとした顔でそんなことを言う優男。あれが聞こえていたのか、耳の方はAランクのようだな。
「それはどうい――」
意味を問おうとしたところで、俺を睨みつけながら仲間の女が口を尖らせる。
「ねえ、ルガード。あたし達をCランク扱いしたこんなゴミ野郎なんて相手にしてないで早くいこうよ」
「そうですわ。まあ、顔はなかなか整っていらっしゃいますけど」
「あら、マイラ乗り換えるの? ライバルが減って助かるわー」
「うふふ、そんなわけあるはずないでしょうレティ? ルガード様、行きましょう」
「そうね、ルガードは私のだけど」
「「うるさいわよニコラ!!」」
「ははは、徹夜明けだからゆっくり休もうじゃないか。そういう訳で急ぐからEランク君、さっきの無礼は見逃してやる。勇者に会えることを祈っているよ」
俺が尋ねるよりも早く、言いたいだけ言ってこの場を去っていく優男の背を見ながら、
「なんだったんだあれは?」
不思議な人間も居るものだと首をひねって呟くと、受付の男が資料を俺に差し出しながら苦笑する。
「あー……はは、このギルドでも指折りの実力を誇るパーティで、リーダーのルガードはさっきも言ったけどプライドが高くてね、来たばかりなのに気を悪くさせたかな」
「気にしなくていい。ああいう手合いは相手にしないのが一番だ。それより勇者はどこに居る? 待つくらいなら追いかける」
「気持ちは分かるけどそれはできないんだ、それよりルールを聞いておきたいんだろう、これを読んでくれ」
……何故かはわからないが勇者の後を追うことは無理らしい。その理由はギルドのルールを把握した後に告げられられたのだが――
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