最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第二章:勇者

その23:キレる冥王

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 「な、何者だ!? お、おい、誰か居ないのか!?」
 「きゃああ!? だ、誰かー!!」
 
 部屋には俺が殴った兵士と、髪が少し心もとない年配の男、そして奥で言葉を発した男の三人がおり、メイドは悲鳴を上げながら俺の脇をすり抜けて部屋から出て行った。
 着ているものが一人だけ違う奥にいる男が恐らく国王で間違いないだろう。

 「エントランスに集まった兵士は全員黙らせたからここへすぐ来れる者はいない」
 「な、なんだと……!? な、何者だ貴様は! 陛下、お下がりください!」
 「俺はEランク冒険者だ」
 「なんかそのフレーズ気に入ってません……?」
 
 俺の後ろからひょっこりと顔を出してファムがそんなことを言う。

 「そんなことは無い。事実を述べているまでだ」
 「あ!? お前は勇者ファム!?」
 「お、お久しぶりです……」

 ファムが丁寧に頭を下げると、国王が声を荒げて怒鳴りつけてきた。

 「なんの用だ! 貴様はここへ顔を出してはならぬと申し伝えただろう!」
 「それだ」
 「な……!?」

 俺は一瞬で間合いを詰め、国王の前に立つと指を突き付けてから質問を投げかける。

 「ファムは確かに弱い。それは間違いない」
 「うう……」
 「そ、そうだ、折角この国に勇者が現れたと思ったら小娘で、しかも歴代から考えても最弱クラスときた、だから放逐したんのだ」
 「ほう、では貴様はいい歳をしてその小娘に身体の関係を迫り、妾になれと言ったのか?」
 「ふん、それくらいしか役に立たんのだ。それを拒否するなら勇者など死……ぐむ!?」
 「ザガムさん!?」

 俺はくだらないことをベラベラと喋る国王の首を掴んで持ち上げると、息を吸ってから詰め寄る。

 「ふざけるな、貴様は国王だろうが。【王】たる者が部下を蔑ろにしてどうする。勇者が出現し、浮かれて呼びつけるまではまだいい。だが、自分の役に立たないと分かるや否や、棒切れと変わらん銅の剣と50ルピというはした金を渡して放逐するなど、性格の悪い魔族でもせんぞ……! 始めから強い者など稀だ、【王】なら弱い勇者の援助をして成長を見守るのが筋ではないのか!」
 「ザガムさん……」

 「う、ぐ……き、貴様……無礼である、ぞ……」
 「無礼で結構、部下を大切にできん【王】に生きる価値はない」

 俺が首を掴んでいる手の力を強めると国王は手首を掴んで暴れ出すが、そんな力で外せるわけもない。

 「ぐ、ぐお……き、貴様の望みは……な、なんだ……!?」
 「まずはファムに謝罪だな。そして相応の資金と武具を渡すんだ。まあ、この騒動を起こした以上、この国からは出させてもらうが」
 「そんなことが出来るものか……! 指名手配して必ず捕えて極刑にしてやる」
 「全員ではないだろうが、表で突っかかって来た兵士はEランク冒険者の俺が全滅させたぞ。呼んでみるか?」

 俺が手を離すと国王は尻から着地し、悶絶しながら大声で叫ぶ。

 「誰か! 誰かおらんか! ……ザップ、騎士団長を呼んでくるのだ!」
 「し、しかし、陛下を一人にしたままでは……」
 「構わん、行け!」

 国王の言葉を受けて髪の寂しい男は扉から出て行き、残された国王は尻もちをついたまま俺とファムを交互に睨みつけて歯噛みする。

 「こんなことをしてタダで済むと思うなよ……!」
 「もちろん思ってはいない。が、貴様は【王】に相応しくない……。身体も鍛えていないとは愚かな。誰かに頼りっぱなしだからこういう事態で慌てるのだ」
 「何を世迷言を! 私は王だぞ、民は私の為に生きて死ぬ、それが王族に生まれた人間の特権だろうが!」

 尻もちをついたまま床を殴りつけて激昂するが、威圧感なども無いので俺は腕を組んで返答する。

 「基本はそれでいいと俺も思うぞ」
 「な、なら――」
 「だが、貴様は欲にだけ溺れて、勇者という民を切った。弱いからという理由でな。【王】というのは民に暮らさせてもらう代わりにいざという時に部下や民を守らねばならない。それが等価というものだ」
 「……」
 
 メギストスの受け売りだが、これには賛同している。
 戦争があったとした場合、ちゃらんぽらんなあの男でも恐らく前線に立って戦うだろう。
 俺も領地で贅沢な暮らしができているが、仮にそれで貧しい暮らしをする者が出てくるなら贅沢な暮らしを捨てて一人で生きる。
 
 「綺麗ごとだ……! 民はそんなことまで考えているわけがない」
 「……なら、人間は魔族以下ということだな」
 「なんだと……?」
 
 「陛下、ご無事ですか!」
 「連れてきましたぞ!!」
 
 国王が俺に対して訝しんだ瞬間、金髪の全身鎧を着た男と、部屋から出て行っていたザップという男が踏み込んできた。

 「ザガムさん、騎士団長さんです! ……つ、強いですよ……私、あの人と戦って負けました」
 「ファムさん!? どうしてここに……貴様が賊か、なんでこんな真似を……いや、尋ねる必要もないな!」
 「捕えろ、エイター!」
 「はあああああ……!」

 騎士団長というだけあっていい気迫だ。
 しかし、俺と戦うには力不足。国王だけ詰めれば良かったが、この信頼している人間を打ちのめせば少しは目が覚めるか?

 「悪いな、お前に恨みはないが倒させてもらう」
 「……あの数を倒した貴様ならその言葉も驕りではないと思う。が、僕とて騎士団長を任されている身、兵士の恨みを晴らせてもらうぞ!」
 「お前にはできない」

 相手の武器は大剣。
 斬るというより叩き潰すといった感じで威力はあるが室内で扱うには少々取り回しが悪い。慌てて来たので仕方ないと思うが、そのあたりも考えねば命取りになるものだ。

 「フッ! ハァ!」
 「な、なんだって……!? 大剣を拳でへし折っただと!?」
 「俺を甘く見ず、一撃でケリをつけようとしたことはいい判断だった。だが、意外な相手が意外な形で反撃してくることもあるのだ」
 「速い、一瞬で懐に!?」
 「それもいい判断だ。もっと精進すれば……そうだな、自慢の武器を折られた後のことまで考えることができるようになればいい戦士になれる」
 「う、嘘……」
 「うが……!? ば、かな……」

 ファムが驚き、俺の拳が騎士団長の胸板にヒットすると、廊下まで吹き飛び、壁にぶつかって停止して気絶した。

 「……さて、国王。お前はどうする?」

 大きく目を見開いていた国王に向きなおると、騎士団長を一撃で倒した俺に視線を変えるとゆっくり立ち上がり、

 「う、うおおおお!!」

 俺に殴り掛かって来た――
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