最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第二章:勇者

その24:王として

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 「うわあああああ!!」
 「ふん」
 「ぐへ……」
 「陛下ぁぁぁぁ!」
 「ああ、容赦ない一撃……!」
 
 どういう心境か分からないが俺に攻撃を仕掛けてきたので軽く頭をはたいてやると、顔から床に突っ伏した。命がけで行けばなんとかなる思ったのだろうが、世の中そうそう奇跡など起きはしない。

 「ぐ、ぐぬう……エイターがあれほど簡単にやられるとは……殺せ、あれが負けた以上こちらに手駒は無い……」
 「ふん、少しは兵士の気持ちが分かったか? なにかあればお前の代わりにその痛みを背負っているのだ」
 「……ふん」

 大の字で倒れた国王は鼻血流しながら悪態をついているが、最初に見た時よりは少しマシな顔になった。

 「起きろ、脅しはしたが別に殺しに来たわけではない。<ヒーリング>」
 「傷が……き、貴様は本当になんなんだ……」
 「最初に言った通り、ファムに謝れ。そして今までの分の慰謝料として、それなりの武具、それと金を渡してやれ」
 「い、いや、いいですよ!? こんなことをしでかしたからこの国の為に戦えないです。村に戻って他の国にでも行きますから」

 ファムが両手を振りながらそんなことを言うと、国王は上半身を起こして目を瞬かせて口を開く。

 「どういうことだ? 勇者が私の処遇が気に入らんからお前を使って復讐をしに来たんじゃなかったのか?」
 「違いますよ! 私そんな恐れ多いことできません!?」
 「全て俺の独断だ。【王】としての態度がどうしても許せなかったからな、分からせてやろうと思ったのだ」
 「たったそれだけのことで……勇者が不憫だからという理由だけでこんな馬鹿なことを仕出かしたのか……? いくら強いとはいえ国を敵に回すことになるというのに」
 「やるだけやって謝罪させたらこいつを連れて国を出るつもりだったからな。両親のことは失念していたが」

 俺がそう言うと国王は一瞬きょとんとした顔の後――

 「くっくっく……フハハハハハハ、アホだ! こいつはとんでもないアホだぞ、ザップ!」
 「へ、陛下……?」
 「聞いたか、私に謝罪させるために城に侵入し、兵士を倒し、騎士団長まで倒したのだぞ。こんなアホは見たことが無い! はははははは!」

 しばらく胡坐をかいたまま笑っていたが、やがて笑い終えると正座に姿勢を変ええからファムへ向きなおると、深く頭を下げた。

 「勇者ファムよ、すまなかった。思っていた勇者と違い、怒りのまま酷いことをしてしまったようだ」
 「あ、頭を上げてください王様!? 私が弱いのは事実ですし……」
 「そうだな」
 「ううう……」
 
 自分で言った事実を肯定したやったのに涙目になるとはおかしな奴だな。これで心変わりしてくれればいいのだが。

 「さて、それでは目的も果たしたし行くか」
 「そうですね。って、満足したのはザガムさんだけじゃないですか! もう!」
 「ザガム……どこかで聞いたような……。い、いや、それより待つのだ、まだ話は終わっておらん」
 
 立ち去ろうとした俺の足に国王がしがみついてきたので、躓きそうになった。

 「なんだ? 国王は勇者に謝った、俺は満足した。終わったぞ」
 「本当にわけがわからん男だな貴様は……。この国を出て行くと言っていたが、その必要は無い。罪も問わん」
 「いいのか? 自分で言うのもなんだが恥をかかせてしまったのだが……」
 「あはは、自覚はあるんですね……」

 困った顔で笑うファムがそんなことを口にし、続けて国王が咳ばらいをして続ける。

 「恥をかかされたが、貴様の言うことも分からんではない。確かに民は私のために、私は民のために行動を起こすのが筋というもの。……平和な世で危機感や感謝というのを忘れていた気がする」
 「それが思い出せれば十分だろう」
 「うむ。貴様の態度は気に入らんが、目が覚めた思いだ。そこで貴様の言う通り、勇者に装備と金を用意しよう」

 立ち上がって俺達に笑いかけてくる国王に、俺は頷いてから言う。

 「それはこいつも助かるはずだ。ギルドにも無茶をさせないよう通達してくれるか
?」
 「すぐにでもしよう。……謁見の間で格好よくやりたいところだが兵士は全員倒したのか?」
 「分からん。向かってくる奴を倒していただけだからな。とりあえず回復させて回るとしよう。加減はしたが打撃のダメージは軽くない」
 「あれは凄かったですもん」
 「まあ、エイターがあっさり倒されるくらいだからな……」

 ファムの言葉に大臣らしき男、ザップが騎士団長を見て身震いしていた。俺は騎士団長に近づいて回復魔法をかけてから気つけで背中を軽く叩く。

 「う……ごほっ……ぼ、僕は……? あ、き、貴様!」
 「すまない、やりすぎたな。俺はもう攻撃する意思はない」
 「陛下の命を狙った賊ではないのか……?」
 「私は大丈夫だ」
 「陛下、ご無事で! ……申し訳ございません、僕がふがいないばかりに危険な目に合わせてしまいました……」
 「良い。それより勇者に歓待の義を行う。みなを起こす手伝いをしてくれ」
 「は、はい、かしこまりました」

 国王が言ったことに困惑する騎士団長をよそに、国王と大臣が先に部屋を出て行くと、騎士団長が俺に顔を近づけて小声で聞いてくる。

 「……お前、一体なにをしたんだ? 陛下がまるで別人みたいになっているじゃないか……」
 「【王】としての矜持を伝えたまでだ」
 「なんだいそれは? それより君、相当強いな。僕が一対一で負けたのは久しぶりだよ。どうやって――」
 「待て、話は後だ先に兵士を起こすぞ」
 「ええー……」
 「ザガムさん、マイペースだから気にしない方がいいですよ……」

 そして俺は回復魔法を使い兵士達のケガを治療し、謁見の間へと向かった。
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